医療を将来に引き継げるかの重要な岐路、自覚持って地域医療構想を実現させよ―厚労省



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 現在、医療制度や国民皆保険制度を将来に引き継げるか否かの重要な岐路に差し掛かっている。その自覚を持って地域医療構想の実現に向けて取り組んでほしい―。

 厚生労働省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、2月9日に開催した2017年度の「医療計画策定研修会」で、都道府県の担当者にこうに呼び掛けました。

2月9日に開催された、「平成29年度 医療計画策定研修会」
2月9日に開催された、「平成29年度 医療計画策定研修会」

佐々木課長「課題は地域ごとでも、岐路に立たされている点は全国共通」

 いわゆる団塊の世代が2025年に全員75歳以上の後期高齢者となることから、医療・介護ニーズが今後急速に増加していくと予想され、現在の医療提供体制では十分に対応できなくなってしまうと考えられています。そこで、各都道府県において「一般病床・療養病床という大きなくくりだけでなく、医療機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとの必要病床数」などを定めた地域医療構想が策定されています(すでに全都道府県で策定済)。

 一方、各病院・有床診療所には「自院の病棟がどの機能を持つと考えているのか、また将来持たせようと考えているのか」を毎年報告する義務が課せられています(病床機能報告)。

 両者(地域医療構想と病床機能報告結果)には、大きな隔たりがあり、これを地域の医療関係者等が集う「地域医療構想調整会議」における議論の中で埋めていくことが、地域医療構想の実現に向けて極めて重要となります。具体的には、調整会議での話し合いを通じて「自院は急性期機能を担っているが、将来、地域の急性期患者は減ってしまう。将来的には回復期や慢性期機能に転換していくべきである」と病院自身が考えることが求められます。

 都道府県には、地域医療構想調整会議を各地域で開催し、医療関係者同士の協議をまとめる役割が求められています。厚労省は、各都道府県に向けて「地域医療構想調整会議をどのように運営すればよいか」をさまざまな場面を通じて、周知していく考えです。

 1つ目が、まさに2月8日開催の「医療計画策定研修会」、もう1つが2月7日に発出した通知「地域医療構想の進め方について」です(通知の内容については後述します)。

 1つ目の医療計画策定研修会の冒頭で佐々木地域医療計画課長は、「地域医療構想の達成に向けた課題が地域ごとに異なることもあり、進捗状況にばらつきが出ている」と指摘。その上で、「日本の人口動態などを考えると、今の医療制度・国民皆保険制度を守り、地域医療を守り、将来世代にバトンを渡せるかどうかの岐路に立っているということは全国共通だ。そうした段階であると自覚して、厚労省と一緒に責任を持って進めてほしい」と都道府県に呼び掛けました。

公民の役割分担、診療実績を踏まえて地域ごとに検討せよ

 厚労省の2つめの通知「地域医療構想の進め方について」では、主に次のような取り組みを都道府県に求めています(関連記事はこちら)。

(1)各医療機関が「2025年時点でどのような役割を担い、そのためにどのような病床(医療機能ごとの病床数)を有する方針か」を、地域医療構想調整会議で議論してもらい、合意に至った分を毎年度取りまとめる
(2)過去1年間に一度も患者が入院していない病棟(非稼働病棟)がある場合、その病床削減について地域医療構想調整会議で議論してもらう
(3)病床新設が申請された場合、地域医療構想調整会議で議論してもらう

 (1)の各医療機関の方針をどう協議するかは、大きく▼公立病院▼公的医療機関等▼その他の民間医療機関―で異なります。地域の基幹病院として機能することが多い「公立病院」「公的医療機関等」に関しては、今年度中(2018年3月末まで)、その他の民間医療機関については遅くとも来年度末(2019年3月末)までに「今後、地域でどのような役割を担うのか」を協議してもらうことになります。この点、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、「協議の結果をまとめるまでには時間がかかるかもしれないが、期限までに必ず議論をスタートさせるようお願いしたい」と訴えました。

 また、公立病院や公的医療機関等は、補助金が交付されるなど財政補填が行われるほか、税制上の優遇措置が設けられていることから、「民間医療機関では担えない分野」に重点的に取り組むことが求められます。ただし、「救急医療などの提供体制が厚い民間医療機関が複数ある」地域もあれば、「民間医療機関がほとんどない」地域もあり、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、「各医療機関の診療実績などを共有しながら、その地域に合った役割分担の在り方を話し合ってほしい」と求めました。まさに「地域ごとに医療提供体制を再構築していく」ことが求められると言えるでしょう。

非稼働病床の削減など知事権限の行使も必要

 都道府県知事には、「稼働していない病床の削減を要請・勧告(対民間医療機関)および命令(対公的医療機関等)」する権限が与えられています。それを踏まえて(2)については「非稼働病棟を持つ医療機関に、地域医療構想調整会議に出席のうえ、▼病棟を稼動していない理由▼再稼働させる予定の有無―などを説明してもらい、再稼働させる必要性や、非稼働のまま維持する必要性が乏しい場合は、病床削減を要請・命令する」よう求めています。

 また(3)の病床新設を申請した医療機関について、都道府県には「病床新設を認める代わりに、将来不足する医療機能を提供する条件を付ける」権限などが与えられています。地域医療構想調整会議での協議では、病床新設を申請した医療機関に「新設する病床で担う医療機能」などを説明させ、▼医療機関が説明したとおりの医療機能を新設病床で担わせれば、その医療機能の病床数が、地域でますます過剰になってしまう▼他医療機関の今後の機能転換の方針を踏まえても、病床不足が見込まれる医療機能が別にある―ような場合、知事権限を行使することが求められるでしょう。

 

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