2018年度診療報酬改定、「病院に厳しい」―全自病



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 2018年度診療報酬改定で創設される7つの【急性期一般入院料】では、7対1と10対1の中間的評価に当たる入院料などの施設基準や点数設定が厳し過ぎる。本体改定率はプラスでも、病院の経営環境はいっそう厳しくなる―。

 全国自治体病院協議会の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)は、2月8日の定例記者会見でこのように述べました。

2月8日の記者会見に臨んだ全国自治体病院協議会の幹部。向かって左から原義人副会長(青梅市病院事業管理者兼青梅市立総合病院長)、中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長)、邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)、小熊豊副会長(砂川市病院事業管理者)、末永裕之参与(小牧市病院事業管理者)
2月8日の記者会見に臨んだ全国自治体病院協議会の幹部。向かって左から原義人副会長(青梅市病院事業管理者兼青梅市立総合病院長)、中島豊爾副会長(岡山県精神科医療センター理事長兼名誉院長)、邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)、小熊豊副会長(砂川市病院事業管理者)、末永裕之参与(小牧市病院事業管理者)

「病院に厳しく、診療所に手厚い」と指摘

 メディ・ウォッチでお伝えしているとおり、2018年度診療報酬改定では急性期から慢性期までの多くの入院料が再編・統合され、7対1・10対1入院基本料を再編・統合した7つの【急性期一般入院料】などが創設されます。

 このうち、現在の7対1入院基本料に相当する【急性期一般入院料1】(現行7対1と点数が同じ)では、重症患者割合の基準が25%から30%(重症患者の定義などが見直されることから、現行の重症患者割合で26.6%に相当)へと引き上げられます。基準に満たない病棟では、7対1と10対1との中間評価に当たる【急性期一般入院料2】(現行7対1より1日30点低い)や【急性期一般入院料3】(同100点低い)などへの移行を迫られます(関連記事はこちら)。

 邉見会長は、これら急性期一般入院料の点数や施設基準が「厳し過ぎる」と指摘。その一方で、「かかりつけ医機能」を担う診療所などで初診時に算定できる加算【機能強化加算】(80点)が創設される(関連記事はこちら)ことなどから、「病院に厳しく、診療所に手厚い感が否めない」との見解を示しました。

 その一方で、テレビ電話会議システムなどのICT技術を活用した診療を評価する【オンライン診療料】や【オンライン医学管理料】が創設される点について、「患者が無理をして通院する回数を減らすことができ、良かった」と述べています(関連記事はこちら)。

対策なしに医師の働き方を変えれば、偏在が強まる

 ところで邉見会長は、勤務医の長時間労働是正に向けた「緊急対策」が求められていることについて「医師の偏在解消が先だ」と改めて強調しました。

 医師の長時間労働の是正(働き方改革)に向けて現在、「時間外労働の罰則付き規制」の在り方や、労働時間短縮策が、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」で議論されています。この検討会では月内(2018年2月中)に、勤務医の労働時間を短縮するために「医療機関がすぐ実施すべき対策」(緊急対策)を取りまとめる予定ですが、厚労省は、対策の実施に向けた検討を今から進めておくよう、全自病などに宛てて事務連絡を発出しています(関連記事はこちら)。

 「緊急対策」としては例えば、【a】法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて時間外労働させる労働者(勤務医ら)との間で、雇用主(病院管理者ら)が結んでおかなければならない協定(労働基準法36条に基づくため36協定と呼称される)の締結状況を確認する【b】1人の患者の主治医を医師複数名が担当する「複数主治医制」を導入できるか検討する―ことなどが求められます。

 邉見会長は、【a】の36協定の確認などに取り組む必要性を認めた一方で、【b】の複数主治医制などは、雇用する医師数が多い病院でなければ実施できないことから、「このままでは、医師の多い病院に、さらに医師が集中する。医師不足に苦しむ病院の傷口に、塩を塗り込むようなものだ。まず偏在対策が必要だ」と訴えました。

脳外領域などで専攻医ゼロの自治体が現れる

 会見では末永裕之参与(小牧市病院事業管理者)から、2018年度に全面スタートする新専門医制度が、医師の地域偏在を悪化させる懸念が改めて表明されました。

 2018年度から全面スタートする新専門医制度では、医師の地域偏在の悪化を引き起こさないための対策の一つとして、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県で、研修を受ける「専攻医」の採用数に基本領域ごとの上限(過去5年間の後期研修医採用実績などの平均値以下)が設定されています(大都市での不足も懸念される外科・産婦人科・病理・臨床検査の4領域を除く)。

 4月から研修を受ける専攻医の採用は、▼昨年(2017年)11月15日までの「1次登録」▼1月15日までの「2次登録」▼2月15日からの「3次登録」(「2次登録」までに研修先が決まらなかった医師のみが対象)―を経て決まります。これまでに、「1次登録」で7791名の採用が決まり(うち18名が辞退)、現在は、「2次登録」に応募した569名の中から採用者の選考が進められています。

 全自病では、「1次登録」で7791名が採用された段階で、外科領域の専攻医が1名しかいない都道府県がある(群馬・山梨・高知の3県)ことなどから「今後、大学病院でも外科手術ができない都道府県が現れるかもしれない」との懸念を示していました(関連記事はこちら)。

 末永参与は、最新のデータ(「1次登録」の採用者数+「2次登録」の応募者数)でも、▼脳神経外科領域:10自治体▼皮膚科領域:8自治体▼小児科領域:2自治体―などで1名もいないことなどを問題視。「どうしても専攻医が大都市に集中してしまうのであれば、専門研修が終わった後に、適切に配置する仕組みも考えなければいけない」と危機感を示しています。

公精協、全自病・中島副会長が会長に

 また、中島豊爾副会長氏(岡山県精神科医療センター理事長)からは、「日本公的病院精神科協会」(公精協)の会長に、中島副会長が就任する旨が公表されました。

 公精協は、精神科病棟を持つ公立・公的病院で構成する病院団体として先月(2018年1月)設立されました(関連記事はこちら)。中島副会長は、「さまざまなデータを集めて公表し、日本の精神科医療のレベルを上げていきたい」と意気込みを語りました。4月に法人登録を行い、公精協会長に就任します。

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