業務移管など「勤務医の労働時間短縮策」、実施に向けた検討に着手せよ―厚労省



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 医療機関では、勤務医の労働時間短縮に向けた対策が緊急に必要である。他職種への業務移管などの実施に向けて、検討に着手してほしい―。

 厚生労働省は2月2日、事務連絡「『医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組』(骨子案)について」を病院団体などに宛てて発出しました。

医療現場の実態踏まえ、緊急対策が提言される

 医師は他職種や他業種と比べて労働時間が長く、特に病院勤務医は、40.6%が週60時間以上働いています(関連記事はこちら)。

 政府は、労働時間の上限規制を守らない雇用主に対して罰則を科すなどして、長時間労働の是正を図る方針を示しており(働き方改革)、今後、勤務医を長時間労働させた雇用主(病院管理者ら)にも罰則を適用します。ただし、医師には応召義務(医師法第19条)が課されるなどの特殊性があることから、罰則の適用時期を5年間遅らせることになり、「医師に関する規制の具体的な在り方」や「そもそも労働時間を短縮させる方策」を検討するための場として、「医師の働き方改革に関する検討会」(以下、検討会)が立ち上げられました。

 検討会は、規制の在り方などを、次のスケジュールで議論しています。

▼2018年2月中に、(a)規制の在り方などの議論の中間整理(b)医療機関がすぐに実施すべき労働時間短縮策(以下、緊急対策)―を取りまとめる
▼2019年3月までに、規制の具体的な在り方などの結論を得る

 今般の事務連絡は、このうち(b)の緊急対策が取りまとまった後、医療機関がすぐ実行に移せるように、今のうちから院内で実施方法などを検討しておくよう促しています。

 緊急対策の内容については、厚労省が先月(2018年1月)に骨子案を示しています。法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える長時間労働を勤務医にさせているにもかかわらず、必要な協定(労働基準法36条に基づくため36協定と呼称される)を結んでいない病院などがあることから、骨子案には、(1)現行の労働法制で、病院管理者らが当然実施すべき長時間労働対策(2)勤務医の労働時間短縮に有効と考えられる施策―が盛り込まれています(関連記事はこちら)。
 

四病院団体協議会の調査で、一部の病院が36協定を締結していないといった実態が明らかになった
四病院団体協議会の調査で、一部の病院が36協定を締結していないといった実態が明らかになった
 
全国医学部長病院長会議が実施した大学病院の調査でも、36協定を締結していない病院などが見られた
全国医学部長病院長会議が実施した大学病院の調査でも、36協定を締結していない病院などが見られた
 

衛生委員会の活用や他職種への業務移管など、今から検討すべき

 緊急対策の骨子案を踏まえれば、(1)の「病院管理者らが当然実施すべき対策」として、次の3項目についての検討が求められます。

▼勤務医が院内にいる時間の把握:勤務医の労働時間を短縮するために、まず「院内に何時間いるか」を正確に把握する。本人に申告させている場合、労働時間があいまいになってしまう恐れもあることから、タイムカードなどで記録に残すことが望ましい。タイムカードなどの導入が難しければ、本人だけでなく上司も確認するなどして、正確に記録する

▼36協定の自己点検:36協定を結んでいるかや、労働基準監督署に届け出ているかを確認する。36協定を結んでいても、実態に見合った内容になっていない可能性もあるので、必要に応じて結び直す。なお、時間外労働時間は診療科別に設定することもできるため、例えば「診療科Aに限ると、時間外労働を短くしても業務に支障がない」ような場合には、「診療科Aの時間外労働時間だけ他科よりも短く設定する」といったことも検討する

▼衛生委員会や産業医の活用:労働者安全衛生法で義務付けられた「衛生委員会の設置」や「産業医の選任」を必ず行う。衛生委員会は設置するだけでなく、医師の労働時間を短くするための方策を検討する場などとして活用する

 さらに、(2)の施策として、次の3項目などについても検討が求められます。

▼他職種への業務シフト:例えば、▽初療時の予診▽検査手順の説明や入院の説明▽薬の説明や服薬の指導▽静脈採血▽静脈注射▽静脈ラインの確保▽尿道カテーテルの留置▽診断書の代行入力▽患者の移動―などは医師以外でも実施できる。これらの業務を医師が担当している医療機関では、看護師や薬剤師、事務職員らにシフトできないか検討する

▼特定行為研修修了者の積極的な活用:特定行為研修を受講した看護師には、一定の診療の補助(特定行為)を、医師の指示を省略して実施することが認められている(特定行為研修制度)。研修修了者がいる医療機関では、特定行為に関する業務シフトを検討する。研修修了者がいない医療機関では、看護師に研修を受講するよう促す

▼柔軟な働き方の導入:特に女性医師が出産した後などにも働き続けられるように、短時間勤務などの柔軟な働き方を取り入れる

 なお医師の勤務負担軽減は2018年度診療報酬改定でも後押しされます。例えば【医師事務作業補助体制加算】の施設基準に「勤務医の負担軽減・処遇改善に資する計画」を作成することなど追加され、その分、点数が1日50点引き上げられます(関連記事はこちら)。この計画には、例えば「静脈採血などを看護師に業務シフトさせる」といった内容を盛り込むことが求められます。医療機関では、これら「働き方改革」に関連深い改定項目を踏まえて勤務医の長時間労働の是正策を検討することで、増収を図ることができるでしょう。
 
 

 

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