【18年度介護報酬改定答申・速報6】特養配置医が活躍し、看取りまで対応できる体制に



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 メディ・ウォッチでは、ついに明らかになった2018年度介護報酬改定案をサービス類型ごとに紹介しています。本稿では、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)を取り上げます。

【速報1】通所系サービス
【速報2】訪問系サービス
【速報3】介護医療院・介護療養病床・転換老健
【速報4】居宅介護支援
【速報5】介護老人保健施設

1月26日に開催された「第158回 社会保障審議会 介護給付費分科会」で、2018年度介護報酬改定案が了承された
1月26日に開催された「第158回 社会保障審議会 介護給付費分科会」で、2018年度介護報酬改定案が了承された

 特養については、主に次の4つの見直しが予定されています。1つずつお伝えします。

(a)配置医師による緊急時の診療や看取りのための体制整備を高く評価する
(b)【夜勤職員配置加算】を再編し、夜間に喀痰吸引を実施できる体制を高く評価する
(c)【障害者生活支援体制加算】を再編し、障害を持つ高齢者の受け入れを促す
(d)小規模特養の基本報酬を廃止する

「入所者急変時の配置医への連絡方法」を決めておくことが指定基準に

 (a)の配置医師については、「入所者に対して健康管理や療養上の指導を行うために必要な数」が求められており、入所者が急変を起こした際などには、外部の医療機関の医師が往診することもできます。常勤医師を1人以上配置することが【常勤医師配置加算】(25単位/日)で評価されていますが、実際に常勤医師を配置する特養は1.1%しかなく、ほとんどは非常勤として雇用しています。

常勤医師を配置する特養は少なく、1.1%しかない
常勤医師を配置する特養は少なく、1.1%しかない

 しかし、「原則として要介護3以上の重度者を入所させる」こととなった特養では、入所者が医療ニーズを併せ持っており、夜間や早朝に急変を起こすこともあります。また「特養で看取ってほしい」という入所者の希望には応えるべきであり、特養の8割近く(78.0%)が「希望があれば、施設内で看取る」方針を掲げていますが、常勤でない配置医師が、急変時や看取り前の診療に対応できるとは限りません。

「入所者が希望すれば施設内で看取る」方針の特養が8割近い。配置医師らによる診療体制が強化されると、特養での看取り件数が増えそうだ
「入所者が希望すれば施設内で看取る」方針の特養が8割近い。配置医師らによる診療体制が強化されると、特養での看取り件数が増えそうだ

 そこで2018年度介護報酬改定では、特養の指定基準が改められ、「入所者が急変を起こした場合などに備えて、配置医師との連絡方法などを予め定めておく」ことが新たに求められます。これに伴い、基本報酬は次のとおり引き上げられます。

【介護福祉施設サービス費】
▼要介護1
:557単位/日(現在と比べて10単位・1.8%増)
▼要介護2:625単位/日(同11単位・1.8%増)
▼要介護3:695単位/日(同13単位・1.9%増)
▼要介護4:763単位/日(同14単位・1.9%増)
▼要介護5:829単位/日(同15単位・1.8%増)

配置医の緊急時診療に新加算

 さらに、以下の3つの要件を満たすことを要件として、(1)配置医師による緊急時の診療を新たに評価する(2)特養で看取った場合の【看取り加算】の単位数を引き上げる高くする―との見直しが行われます。これによる「入所者が安心して看取りまで生活することができる体制づくり」を、特養に促します。

(ア)「入所者が急変を起こした際などの注意事項」「曜日・時間帯ごとの配置医師との連絡方法」などを予め取り決めておく
(イ)配置医師を複数人置く、あるいは配置医師が協力医療機関の医師と連携することにより、24時間診察等できる体制を確保する
(ウ)【看護体制加算(II)】(看護配置25対1以上などが要件)を算定している

 上記のうち(1)の配置医師による緊急時の診療は【配置医師緊急時対応加算】(新設)で評価され、具体的には診療した時間帯に応じて、▼早朝(午前6―8時)650単位▼夜間(午後6―10時)650単位▼深夜(午後10時―午前6時)1300単位―を、緊急時診療のたびに算定できます。

特養で看取った場合、【看取り加算】の新区分で高く評価

 また(2)の【看取り加算】には上位区分が設けられ、次のとおり2区分に細分化されます。

【看取り加算(I)】(現行並み)
▽死亡日30日前から4日前まで:144単位/日
▽死亡日前々日と前日:680単位/日
▽死亡日:1280単位/日

【看取り加算(II)】(新設)
▽死亡日30日前から4日前まで:144単位/日
▽死亡日前々日と前日:780単位/日
▽死亡日:1580単位/日

 現在の【看取り加算】の算定要件(「看取りに関する指針を定め、入所者本人・家族の同意を得ること」など)のみを満たす場合には【看取り加算(I)】を算定します。現在の【看取り加算】の算定要件に加えて上記の(ア)(イ)(ウ)の3要件を満たし、入所者を特養で看取った場合には【看取り加算(II)】を算定できます。「終の棲家である特養で最期を迎えたい」という入所者の希望に応えられる施設に、より「高い報酬」で応えるものです。

夜間に喀痰吸引など実施可能な体制整備を新加算で促進

 上述したとおり、特養では原則として要介護3以上の重度者を入所させることになっており、喀痰吸引が必要な入所者も少なくありません。しかし現状では、夜間には喀痰吸引を実施できない特養が半数近くを占めます。そこで、夜間でも喀痰吸引を実施できる特養を増やすため、2018年度改定で(b)の【夜勤職員配置加算】に上位区分が設けられ、次のように細分化されます。

▼既存の(I)と(II)は「夜勤職員の厚い配置」のみが要件であるのに対し、新設の(III)と(IV)は「喀痰吸引などができる職員の配置」も要件となる
▼特養が「ユニット型以外」であれば(I)か(III)、「ユニット型」であれば(II)か(IV)を算定する
▼入所定員が31―50人であれば「イ」、30人もしくは51人以上であれば「ロ」を算定する

夜間や休日に喀痰吸引を実施できる施設は全体の41.4%で、「必要があれば体制を整えることがある」施設を含めても過半数を下回る
夜間や休日に喀痰吸引を実施できる施設は全体の41.4%で、「必要があれば体制を整えることがある」施設を含めても過半数を下回る

 具体的には、以下の8区分となります。

【単位数・算定要件が維持される区分】
▼「夜勤職員配置加算(I)イ」22単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1以上上回る▽ユニット型以外▽定員31―50人

▼「夜勤職員配置加算(I)ロ」13単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る▽ユニット型以外▽定員30人もしくは定員51人以上

▼「夜勤職員配置加算(II)イ」27単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る▽ユニット型▽定員31―50人

▼「夜勤職員配置加算(II)ロ」18単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る▽ユニット型▽定員30人もしくは定員51人以上

【新設される区分】
▼「夜勤職員配置加算(III)イ」
28単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る▽喀痰吸引などを実施できる介護職員か看護職員を、夜勤時間帯を通じて配置している▽ユニット型以外▽定員31―50人

▼「夜勤職員配置加算(III)ロ」16単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る▽喀痰吸引などを実施できる介護職員か看護職員を、夜勤時間帯を通じて配置している▽ユニット型以外▽定員30人もしくは定員51人以上

▼「夜勤職員配置加算(IV)イ」33単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る▽喀痰吸引などを実施できる介護職員か看護職員を、夜勤時間帯を通じて配置している▽ユニット型▽定員31―50人

▼「夜勤職員配置加算(IV)ロ」21単位:▽夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る▽喀痰吸引などを実施できる介護職員か看護職員を、夜勤時間帯を通じて配置している▽ユニット型▽定員30人もしくは定員51人以上

加算に必要な夜勤職員数をロボット配置で0.1人緩和

 なお、【夜勤職員配置加算】にはどの区分にも「夜勤を行う介護職員・看護職員が最低基準を1人以上上回る」要件が設けられていますが、夜間の安全性確保に力を入れている施設では「最低基準を0.9人以上上回る」に緩和されます。

▼入所者の動向を検知できる「見守り機器」を入所者数の15%以上に設置している
▼「見守り機器」を安全かつ有効に活用するための委員会を施設内に設置して必要な検討を行っている

 「見守り機器」は、入所者の動向を離れた場所で検知するための介護ロボットです。介護人材不足が深刻なことから、厚生労働省は、「介護職員の負担を軽減できるロボット」があれば活用し、少ない職員数でも安全な介護を提供できる体制を構築したい考えを示しています。2021年度以降の次期介護報酬改定に向けて、「見守り機器」以外の介護ロボットの効果検証が進められる見通しです。

厚労省の実証研究事業で、見守りセンサー活用による介護時間の短縮効果が、特養で確認されている
厚労省の実証研究事業で、見守りセンサー活用による介護時間の短縮効果が、特養で確認されている

障害持つ高齢者の受け入れを加算でさらに促進

 高齢化が進む中で、障害を持つ高齢者数も増加しています。例えば、65歳以上の身体障害者数は2001年には200.4万人でしたが、2011年には265.5万人まで増えています。特養には、障害を持つ高齢者を受け入れる役割も期待されており、現在、(c)の【障害者生活支援体制加算】で、「障害を持つ入所者が15人以上であること」が評価されています。

 2018年度改定では、【障害者生活支援体制加算】を次の2区分へと再編・細分化し、障害者の受け入れをさらに促進します。

▼【障害者生活施設体制加算(I)】26単位/日:▽「視覚、聴覚もしくは言語機能に重度の障害がある者」「知的障害者」「精神害者」のいずれかに該当する入所者が計15人以上いるか、入所者の30%以上を占める▽常勤の障害者生活支援員を1人以上配置している

▼【障害者生活施設体制加算(II)】41単位/日:▽「視覚、聴覚もしくは言語機能に重度の障害がある者」「知的障害者」「精神害者」のいずれかに該当する入所者が50%以上を占める▽常勤の障害者生活支援員を2人以上配置している

 なお、現行の【障害者生活支援体制加算】では、「障害を持つ入所者が15人以上いること」が要件となっています。このため「障害者は15人に満たないが、入所者の30%以上を占めている」ような小規模施設では、現在はこの加算を算定できませんが、今回の見直しによって加算を算定しやすくなります。

既存の小規模特養の報酬は「厚労大臣が定める日」から通常の特養と同じに

 入所定員が30人の特養(小規模特養)では、どうしても高コストになりがちであり、現在は、通常の特養よりも基本報酬が高く設定されています。これについて2018年度改定では、冒頭(d)で示したとおり廃止され、通常の特養の基本報酬を算定することになります。

 ただし、今年度末(2018年3月)までに設置された小規模特養では一定期間、次の【経過的小規模介護福祉施設サービス費】を算定することができます(激変緩和措置)。

【経過的小規模介護福祉施設サービス費】
▼要介護1
:659単位/日(現在と比べて41単位・5.9%減)
▼要介護2:724単位/日(同39単位・5.1%減)
▼要介護3:794単位/日(同36単位・4.3%減)
▼要介護4:859単位/日(同34単位・3.8%減)
▼要介護5:923単位/日(同32単位・3.4%減)

 いずれも、現在の小規模特養の基本報酬を下回りますが、通常規模の特養の基本報酬と比べて高く、上述したとおり「小規模特養に配慮した激変緩和措置」となっています。この点、社会保障審議会・介護給付費分科会の瀬戸雅嗣委員(全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事)からは「小規模特養の報酬を通常規模と合わせれば、経営が成り立たなくなってしまう」といった懸念が示されています。【経過的小規模介護福祉施設サービス費】の算定をいつまで可能とするのか(厚生労働大臣が定めることになっている)は、厚労省内で今も検討中であり、介護給付費分科会で議論するかも含めて、今後の動きに注意が必要です。

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