回復期リハ病棟のリハ専門職を急性期病棟に派遣し、早期リハを目指せ―日慢協・武久会長



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 脳卒中患者などへは、発症直後からの状態に応じた手厚いリハビリテーション提供が求められるが、高度急性期病院にはリハビリスタッフが少ない。そこで、リハビリスタッフが潤沢な回復期リハビリ病院などからリハビリスタッフを派遣することなどを認めてはどうか―。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、1月11日に開催した2018年初の記者会見で、このような提言を行いました。

2018年度の次期診療報酬改定に向けた議論の中で「回復期リハビリ病棟のリハビリスタッフが、病棟を退棟した患者にも適切なリハビリを提供できるように、『専従』規定を見直す」案が浮上しており、これを一歩進める提案と言えます。

1月11日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長
1月11日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

2018年度改定では、回復期リハビリ病棟のリハ専門職の「専従」規定を見直し予定

運動器、脳血管疾患などの種類を問わず、「早期のリハビリ開始が、機能改善に効果的である」と指摘され、実際にデータも整えられています。武久会長も、かねてからこの点を強調。「早期にリハビリを開始する急性期病棟について、診療報酬を手厚く設定すべき」「リハビリ能力の低い急性期病院では、入院から20日までにリハビリ能力の高い後方病院に患者を送るべき」との提言を行っています。

厚生労働省もこの点を重視しており、2014年度診療報酬改定で【ADL維持向上等体制加算】(7対1・10対1病棟において、リハビリ専門職種によるADL維持・向上等を目的とした指導などを評価する)を創設し、2016年度の前回改定で点数の大幅引き上げを行っています(関連記事はこちら)。

しかし、高度急性期病院・急性期病院ではリハビリ専門職種(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の配置は少なく、厚生労働省の調査(2016年度改定の結果検証調査)では、7対1・10対1病棟を持つ病院の、わずか4.5%しかADL維持向上等体制加算を届け出ていません(厚労省のサイトはこちら)。

リハビリ専門職がいなければ、その病棟での早期リハビリ開始は難しく、一方、基礎傷病からの回復が遅ければリハビリ専門職のいる後方病床(回復期リハビリ病棟や療養病棟など)への転院・転床も難しくなります。そこで今般、武久会長は▼リハビリ専門職が十分にいる病院から、急性期病院への「派遣リハビリ」を認める▼当該急性期病院で「派遣リハビリ」点数(疾患別リハビリ料と同水準)の算定を可能とする▼リハビリ専門医が、急性期病院に「往診」を行うことを認める―ことを提言しました。

さらに武久会長は、「早期リハビリの開始で、離床・在宅復帰が進む。その分、医療・介護費は削減すると考えられ、その分の財源を手術などの高度急性期医療に回すことで、医療の質がより高まる」と見通します。

ところで、2018年度の次期診療報酬改定に向けて「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)では、「回復期リハビリ病棟の多くで、規定よりも手厚いリハビリ専門職配置を行っている。このリハビリ専門職に、病棟だけでなく、地域でのリハビリ提供も認めることができれば、ADL改善・維持などのリハビリ効果はさらに高まる」との共通認識が生まれました。回復期リハビリ病棟退棟後にも、専門職による十分なリハビリ提供がなされることで、ADLの維持・改善を期待するという考え方です。その後、中央社会保険医療協議会・総会で「回復期リハビリ病棟のリハビリ専門職が、病棟外でのリハビリ業務に従事できるよう、『専従』規定を見直す」方針が確認されています。

入院医療分科会の委員でもある池端幸彦副会長は、「入院医療分科会の議論をもとに、いわば『逆の発想』をしたもので、理事会でも満場一致で会長提案が了承された」とコメントしています。上述のとおり、回復期リハビリ病棟のリハビリ専門職の専従規定が見直され、後方(退棟後)への手厚いリハビリ提供が可能になりますが、将来的に「前方(入棟前)への手厚いリハビリ提供」も認められるかもしれません。

 
なお、武久会長は、2018年度の介護報酬改定に向けて検討されている「重度化予防、自律支援に資するサービスへの評価充実」案について、厚生労働省の舵取りを高く評価。「医療分野では、患者の状態改善・退院を喜ばない医療者はいないが、介護分野では、要介護度の改善を悲しむ人もおり、おかしい。この意識を変えなければいけない」「特別養護老人ホームでも、在宅復帰を進め、状態が悪化した場合には優先的に戻れるようにしておけばよい」との考えを改めて強調しています。

 

 

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