地域医療支援病院、医師派遣機能などに応じて経済的インセンティブ付与―医師需給分科会



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 地域医療支援病院のうち、医師派遣機能やプライマリ・ケアの研修・指導体制などを有する病院に対して経済的インセンティブを与える。この病院の管理者(院長)が、幅広いマネジメント能力の一環として、「全国的に見て医師が足りない地域」(医師少数区域)での勤務経験を持っていれば、さらに評価する―。

 厚生労働省・医療従事者の需給に関する検討会の医師需給分科会は12月8日、このような医師偏在対策を大筋で取りまとめました。厚労省は、関連する医療法や医師法の改正案を、来年(2018年)の通常国会に提出したい考えです。医師偏在対策については、12月18日の医療従事者の需給に関する検討会(医師需給分科会との合同開催)でも話し合われます(関連記事はこちら)。

12月8日に開催された、「第16回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」
12月8日に開催された、「第16回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

医師派遣や派遣前研修の実施がポイント

 地域医療支援病院は、▼患者の紹介率・逆紹介率が一定以上である▼救急医療を提供できる▼建物や設備、機器を、地域の医師らが共同利用できる―といった要件を満たす病院で、都道府県知事が承認しています(2016年10月時点で543病院)。名称の通り、地域医療を提供する医療機関(診療所や中小病院)を支援する「基幹病院」の役割を果たすことが求められ、診療報酬でもA204【地域医療支援病院入院診療加算】(入院初日1000点)として評価されます。

 今後は、さらに医師偏在にも一定の役割を果たすことが期待され、その役割に応じてインセンティブが与えられることになります。インセンティブの内容は決まっていませんが、例えば、▼地域医療介護総合確保基金や補助金▼診療報酬▼税制優遇措置―が考えられ、分科会の構成員からは「診療報酬による評価」を求める声が多く上がっています。この点、中央社会保険医療協議会の会長を務めた森田朗構成員(津田塾大学総合政策学部教授)は「今の医療保険の財政では、プラスだけのインセンティブは無理だ」と指摘しており、「取り組みが不十分な医療機関の診療報酬(例えば【地域医療支援病院入院診療加算】)が引き下げられる」可能性もあります。

 インセンティブが与えられるポイントは2つあり、1つ目は、医師の地域偏在解消に向けた医師派遣機能を持つことです。単に医師を派遣するだけでなく、派遣された若手医師らが不安なくプライマリ・ケアを提供できるように、派遣前に研修を実施したり、派遣期間中に指導したりすることも求められます。

 2つ目のポイントは、医師派遣機能を持つ地域医療支援病院の管理者が、一定の基準を満たすことです。具体的には、「全国的に見て医師数が足りない医師少数区域で一定期間勤務したとして、厚生労働大臣から認定された医師(認定医師)」であり、「マネジメント能力を培う研修などで管理者に必要な力を身に付けている」場合に、さらに高く評価されます。

 つまり、地域医療支援病院に与えられる経済的インセンティブは今後、高い方から順に、(1)管理者が認定医師で、医師派遣機能などを持つ病院(2)管理者は認定医師でないが、医師派遣機能などを持つ病院(3)医師派遣機能などを持たない病院―と設定される見込みです。

 ただし、(1)の「認定医師であること」などへの評価は、「管理者が、この仕組みが施行された後に臨床研修を開始した医師であること」も要件です。認定医師になるために必要な「医師少数区域での勤務期間」は決まっていませんが、当面は、(2)と(3)の2区分で評価にメリハリが付けられると考えられます。

医療計画の中で、3か年の「医師確保計画」を策定

 そもそも、医師偏在への対策が改めて求められる背景には、医学部の定員(医師の養成数)を増やすだけでは地域や診療科ごとの偏りを解消できていない実態があります。

 例えば、昨年度(2017年度)の医学部定員は9420人で、2007年度の1.24倍です。しかし、2014年度の都道府県別の人口当たり医師数を見ると、最多の京都府と最低の埼玉県との間に、依然として2.02倍の格差があります。また同年の診療科ごとの医師数を1994年と比べると、医師数が1.34倍に増えているのに、外科は微減(0.64%減)しており、産婦人科は微増(3.97%増)にとどまっています。

 そこで厚労省はさらに実効性のある偏在対策を講じる必要があるとして、(a)都道府県による医師確保対策の実効性を確保する(b)医師不足の地域での勤務環境を整備する―方針で、前述の地域医療支援病院の評価見直しは、(b)の一部に当たります。ここからは、(a)と(b)それぞれのポイントを見ていきましょう。

 (a)では、都道府県が医療計画の一部として、3か年の「医師確保計画」を策定します。この計画は、「都道府県内における医師の確保方針」と「医師偏在の度合いに応じた医師確保の目標」「目標の達成に向けた施策内容」で構成されます。

 策定に当たっては、まず、都道府県内の現状を表すデータ(二次医療圏・診療科別医師数や医療施設・医師配置状況)と、人口や医療ニーズの変化などのデータを分析して、医師偏在の是正に向けた医師確保の方針を定めます。

 次に、この方針に基づいて、計画期間中に都道府県内で確保すべき医師数の目標を設定。さらに、この目標を達成するための対策として、「医師が少ない地域への医師派遣の在り方」などを決めます。計画期間終了後は、PDCAサイクルを回して計画の内容を順次見直していきます。

 都道府県知事は、全国的に見て医師が不足している「医師少数区域」や、過剰な「医師多数区域」も設定しておき、「医師少数区域への医師派遣を優先する」などして、実態に即した医師確保策を進めます。

知事の権限を強め、「地元出身者に定着促す施策」講じやすく

 出身地と大学の所在地が同じ「地元出身の医師」は、卒後長期にわたって地元に定着する割合が高いことが分かっています。これを踏まえて都道府県知事に、医師の出身地に着目した医師確保策を講じる権限が付与されます。

 具体的には、地元出身者に限った入学枠(地元出身枠)を設定するよう、知事が大学に要請できる制度を設けます。さらに、臨床研修病院の指定権限や、募集定員の設定権限を知事に与え、都道府県の中でのキャリアパスを整備しやすくします。募集定員には、「地元出身者らが入りやすい別枠」を設けることで、「地元出身者が、地元の病院での初期研修を志望したにもかかわらず、アンマッチになる」のを防ぎます。

 ただし、臨床研修の質を担保する必要もあることから、臨床研修病院の指定基準は従前どおり国が示します。また、都道府県ごとの募集定員上限は段階的に厳しく設定され、研修医の都市部集中が抑制されます。

 地元出身者枠の設定要請や、臨床研修病院の指定の前に、都道府県知事は、都道府県に設置された地域医療対策協議会(医師確保策を協議する場)を開き、「具体的な人数」などについて意見を聴きます。

 医師確保策に関わる会議体としては現在、この協議会だけでなく、「地域医療支援センター運営協議会」や「へき地医療支援機構」「専門医協議会」なども設置されています。“会議体の乱立状態”で、結果として地域医療対策協議会が機能していないケースもあることから、今後は、地域医療対策協議会に機能を統合し、ほかの会議体は原則廃止します。構成員も見直し、「具体的な医師確保対策の実施を担う医療機関」(例えば大学病院)を中心に据えます。

派遣される医師の不安を「交代派遣」などで解消

 一方、(b)の医師不足の地域での環境整備には、「勤務に関する不安解消」と「勤務へのインセンティブ付与」によって進められます。

 まず不安の解消に向けては、「医師不足の地域で働く間、代わりの医師がいないので休暇が取れない」といった事態を避けるために、「医師複数人での交代派遣」を支援します。交代派遣の仕組みでは、「医師が都市部に住みながら、グループ診療などで、医師不足の地域で週数回のみ診療する」ことも可能にします。

 また、「専門外の症例について他の医師に相談できない」状況では不安が生じるため、地域の中核病院などがバックアップし、派遣された医師に対する助言や後方支援を行います。上述した「医師派遣機能を持つ地域医療支援病院」が行う事前研修なども、こうした不安を払拭するための施策です。

認定医師へのインセンティブ強化策など「将来に向けた課題」も

 一方、「勤務へのインセンティブ」は、医師少数区域などにある医療機関(都道府県知事が、認定医師になるための勤務先として指定)で、一定期間以上勤務した医師を、厚生労働大臣が指定する認定医師制度を指します。

 上述の通り、地域医療支援病院の一部には、「管理者が認定医師であること」にインセンティブが与えられるため、「こうした病院の管理者になることを目指す」医師に対しては、認定医師制度が間接的にメリットをもたらします。

 ただし、医師需給分科会の構成員からは、「『認定医師が管理者であること』が評価される医療機関の対象を広げなければ、医師が認定を受けることにメリットを感じない」といった指摘もあり、対象医療機関の拡大が、「将来に向けた課題」に位置付けられています。

 「将来に向けた課題」には、このほか、▼臨床研修後の専門研修で、診療科ごと・都道府県別に定員を設定する▼無床診療所の開設に対して何らかの規制を設ける―ことがあります。いずれも、一部の構成員が、導入に慎重な姿勢を示したことから、すぐ実行に移されることにはなりませんが、医師の偏在が今後も解消されなければ、医師需給分科会などで、導入の是非を改めて検討することになります。

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