2019年10月から、勤続10年以上の介護職員で8万円の賃金アップ―安倍内閣



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 介護職員の処遇をさらに改善するため、2019年10月から、「勤務継続10年以上の介護福祉士」の賃金が月額平均8万円程度アップするような対策を講じる。このために公費1000億円程度を投じる―。

 安倍晋三内閣は12月8日、こうした方針を盛り込んだ「新しい経済政策パッケージ」を決定しました。2019年度の介護報酬改定の中で実施される見通しで、この加算を算定する介護サービス事業所が満たすべき要件(例えば、経験や技能に応じた昇給の規定など)が注目されます。

 「新しい経済政策パッケージ」は、少子高齢化が進む中で経済成長を持続させるための対策をまとめたものです。2019年10月の消費税率引き上げ(8%→10%)によって生まれる税収などで安定的に2兆円の財源を確保し、「介護人材の処遇改善」や「幼児教育の無償化」などに充てるとしています。

経験などに応じた処遇改善をさらに進め、若手職員がキャリアパス描きやすく

 介護分野の有効求人倍率(2016年時点で3.02%)は、全職業(1.36%)と比べて高い水準にあり、人手不足が深刻な状況です。この一因は処遇にあると考えられており、特に、男性介護職員の賃金が低いことから、他産業に人材が流出し、好景気の中でも人材不足が進んでいると指摘されています。

介護分野の有効求人倍率は、全職業の平均よりも高い
介護分野の有効求人倍率は、全職業の平均よりも高い
 例えば2016年の調査では、「対人サービス産業」(飲食サービス業など)の男性職員(平均41.0歳・勤続8.4年)の平均賃金が月30.6万円であったのに対し、男性の「介護職員」(平均37.9歳・勤続6.0年)は月28.4万円にとどまりました。
「対人サービス産業」と比べ、「介護職員」の賃金は女性では高いが、男性では低い
「対人サービス産業」と比べ、「介護職員」の賃金は女性では高いが、男性では低い
 こうした賃金格差を縮めて介護分野の人手不足を解消すべく、政府は介護職員の処遇改善に取り組んできました。2009年度から今年度(2017年度)までの計4回の介護報酬改定などで実施された施策の改善効果を積み重ねると、トータルでみれば月額5.3万円に相当する改善が図られています(個人の給与には必ずしも反映されていません)。

 しかし、人口ボリュームが大きい団塊世代が2025年までに全員75歳以上になることを踏まえれば、要介護状態の高齢者の生活を支える介護サービスの需要が増し、これに対応できる介護人材の確保が必要不可欠です。このため、政府は「新しい経済政策パッケージ」 の中で、介護人材確保の一方策として「さらなる処遇改善策」を盛り込んだのです。

 具体的には、「勤続年数10年以上の介護福祉士の賃金を、月額平均8万円引き上げられる程度の財源」(公費1000億円程度)を用意し、「経験・技能のある職員の賃金が上がる」ような処遇改善を推進することで、「介護職員としてのキャリアパス」を描きやすくします。

 この施策は、「消費税率10%への引き上げに伴う介護報酬改定」の中で制度化され、2019年10月から実施されます。介護報酬改定は来年度(2018年度)にもありますが、ここでは「さらなる処遇改善」が講じられない点に注意が必要です。

 ちなみに、さまざまな介護サービスに設定されている【介護職員処遇改善加算】のうち、処遇改善効果が最も高い「I」(月額3万7000円相当)の算定要件では既に、「職員の経験や資格などに応じた昇給の仕組み」の整備が、事業所に求められています。

2017年度介護報酬改定で創設された「加算(I)」は、「経験や資格に応じて昇給する仕組み」を事業所が設ることなどが算定要件だ
2017年度介護報酬改定で創設された「加算(I)」は、「経験や資格に応じて昇給する仕組み」を事業所が設ることなどが算定要件だ
 「さらなる処遇改善」の具体的な要件などは、2018年度介護報酬改定後、社会保障審議会・介護給付費分科会での議論を経て固まりますが、単に【介護職員処遇改善加算】の「I」の処遇改善効果を高めるものなのか、あるいは上位区分を設けて、より厳しい要件を課すものなのかが注目されます。

生産性を高めるため、介護事業所の帳票半減や遠隔診療のGL公表を目指す

 政府の「新しい経済政策パッケージ」には、「生産性が伸び悩む分野」の制度改革を進める一環として、▼介護サービス事業所が作成する帳票などの文書量を半減させる▼遠隔診療の具体的なユースケースなどを示すガイドラインを今年度(2017年度)中に取りまとめて公表する―方針も掲げられました。

 介護サービス事業所が作成する帳票などの半減に向けては、まず来年度(2018年度)中に、国や自治体が事業所に求めている帳票などの事態把握と、「当面の見直し」を実施する方針です。この段階では半減まで至りませんが、その後、事業所が独自に作成する文書の内容なども見直すことで、文書量の半減を達成するとしています。

 一方で、遠隔診療に関するガイドラインではユースケースに加え、「患者との合意形成」などのルールを明示することで、「安全で効果的・効率的な遠隔診療」の普及を図ります。これと併せて、「遠隔での服薬指導をどのように進めるべきか」も検討されます。

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