腹膜透析や腎移植、デジタル画像での病理診断などを診療報酬で推進―中医協総会 第377回(3)



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 2018年度の次期診療報酬改定において、血液透析に比べて患者のQOLが高いとされる「腹膜透析」や「腎移植」を推進するような評価を行ってはどうか。また、病理診断においても、「精度が鏡検と同等」と判断される場合には、デジタル画像のみによる診断でも病理診断料などの算定を認めてはどうか―。

12月8日の中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点が概ね了承されています(関連記事はこちらこちら)。

12月8日に開催された、「第377回 中央社会保険医療協議会 総会」
12月8日に開催された、「第377回 中央社会保険医療協議会 総会」

患者QOLの高い腹膜透析などを推進、長時間の血液透析などを評価

12月8日の中医協総会では、▼腎代替療法▼遠隔病理診断▼小児医療▼医療機関と薬局との情報連携▼医療従事者の多様な働き方—など、多くの個別事項も議題にあがりました。ただし、審議時間が長引いたため、▼腎代替療法▼遠隔病理診断▼小児医療—の3点のみが議論の対象となっており、他の項目は次回以降に議論されます。順番に眺めてみましょう。

まず腎代替療法については、大きく▽血液透析(施設で行う場合、在宅で行う場合)▽腹膜透析▽腎移植―の3手法があります。我が国では諸外国に比べて血液透析の比率が圧倒的に高い状況ですが、関係学会によれば、腎移植や腹膜透析のほうが、血液透析に比べて患者のQOLが高いと報告されています。厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、よりQOLの高い腹膜透析・腎移植を推進する必要があると考え、2018年度の次期診療報酬改定において、「透析医療に係る診療報酬において、腹膜透析や腎移植の推進に資する取組みや実績などを評価してはどうか」と提案し、了承されました。

血液透析、腹膜透析、腎移植とを比較すると、腹膜透析・腎移植のほうが患者QOLが高いと関連学会では指摘している
血液透析、腹膜透析、腎移植とを比較すると、腹膜透析・腎移植のほうが患者QOLが高いと関連学会では指摘している
我が国では、先進諸国に比べて血液透析の割合が圧倒的に高い
我が国では、先進諸国に比べて血液透析の割合が圧倒的に高い
 
関連して、地域包括ケア病棟入院料などの包括入院料において「J042【腹膜灌流】を包括対象外とする」提案も行われました。J038【人工腎臓】と同じく包括から除外(出来高で算定可能)とすることで、より腹膜透析を積極的に実施しやすい環境を整える狙いがあります。

また、J038【人工腎臓】の診療報酬は、(1)慢性維持透析:▽4時間未満2010点▽4時間以上5時間未満2175点▽5時間以上2310点(2)慢性維持透析濾過(複雑なもの):2225点(3)その他:1580点—と設置されています。この点、関係学会からは、▼心不全兆候を認める、または血行動態の不安定な症例▼適切な除水・降圧薬管理・塩分摂取管理を行っても高血圧状態が持続する症例▼高リン血症が持続する症例—については「長時間の血液透析(6時間以上・週3回)によって、よりよい状態を保てる」可能性が指摘されており、迫井医療課長は「特別の評価」を行うことを提案しました。例えば、慢性維持透析に新たに「6時間以上」の細分類を設けることなどが考えられるでしょう。

関係学会からは、合併症を持つ透析患者では、長時間透析が「状態維持のために好ましい」との指摘がある
関係学会からは、合併症を持つ透析患者では、長時間透析が「状態維持のために好ましい」との指摘がある
 
また、J038【人工腎臓】では、▽障害者▽精神障害者▽指定難病患者▽透析中に頻回の検査、処置を必要とするインスリン注射を行っている糖尿病患者▽脳血管疾患患者▽認知症患者▽末期がん患者▽妊婦▽12歳未満の小児—など、著しく透析が困難な障害者等に対して行った場合には、1日につき120点が加算されます(障害者等加算)。これは、医療機関の手間などを考慮したものですが、厚労省の調べでは算定割合(人工腎臓の算定件数に対する加算算定件数)が年々高くなっており、高齢化を背景に今後も上昇することを踏まえ、迫井医療課長は「評価を充実する」考えも示しています。
 
一方で、透析に係る報酬の「適正化」(点数の引き下げや算定要件などの厳格化などを意味する)も提案されています。迫井医療課長は、▼【透析液水質確保加算】(J038【人工腎臓】の加算)が大部分の施設で算定されている状況を踏まえて適正化する▼施設の規模や透析患者数によって効率性が異なっていることを踏まえた適正化を行う(例えば、透析用監視装置1台当たりの患者数などを指標とする)▼J038【人工腎臓】の【2 慢性維持透析濾過(複雑なもの)】について、【1 慢性維持透析】のような時間に応じた評価とする—考えを示しました。
 
これらの提案は診療側・支払側ともに「概ね了承」との立場をとっていますが、「効率性を踏まえた評価」に対して診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は「透析を効率的に行う施設は、不適切に実施しているわけでも、利益率が高いわけでもなく、地域ニーズを踏まえて実施している」点を説明し、「点数の引き下げは小幅にとどめるべき」と配慮を求めています。

鏡検と同等の精度を持つデジタル病理診断を認め、同時に働き方改革にも寄与

病理診断については、まず「デジタル画像による診断」が提案されました。技術革新により「デジタル病理画像」の精度が極めて高くなっていますが、現在、診療報酬上は「鏡検」(検体からプレパラートを作成し、顕微鏡で診断する手法)が原則です。遠隔病理診断によって術中迅速病理診断を行う場合にはデジタル画像を用いた連携が可能ですが、事後に「鏡検」を行うことが必要です

デジタル病理診断は、現在は鏡検の「補助」という位置づけに過ぎない
デジタル病理診断は、現在は鏡検の「補助」という位置づけに過ぎない
 
しかし最新の研究によれば、一部の種類の検体(胆嚢・摘出材料や上部消化管内視鏡・生検材料など)では「デジタル病理画像を用いた病理診断」と「プレパラートを用いた病理診断」とで同等の精度であることが報告されています。迫井医療課長はこの点を踏まえ、精度の同等性が確保された検査については「デジタル病理画像のみによって病理診断を行う場合も、病理診断料などを算定可能とする」考えを示しました。
一部の検査では、デジタル病理診断でも鏡検と遜色ない結果が出るとの報告がある
一部の検査では、デジタル病理診断でも鏡検と遜色ない結果が出るとの報告がある
 
このデジタル画像診断が診療報酬で正面から認められれば、診断を行う医師(病理医)が当該医療機関に常駐する必要性は低くなります。迫井医療課長は、加えて「画像の送受信に十分な環境がある場合で、保険医療機関の病理医が自宅などでデジタル病理画像を用いて病理診断を行う場合について、画像診断管理加算の取扱も踏まえ、評価を見直す」考えも示しています。

例えば子育て中で時短勤務となっている女性の病理診断医が、自宅で「病院から送られてくるデジタル病理画像」を見ながら病理診断を行うことを診療報酬上、認めることになるでしょう。多様な働き方の推進にも資する見直しと言えます(2016年度の前回診療報酬改定で、画像診断について、この取り扱いを導入している、関連記事はこちら)。

ところで、自院に「専門性の高い病理医がいない」ような場合には、他の医療機関に病理診断を依頼することが可能です。この場合、依頼するA病院で「検体」から「標本」(プレパラートなど)を作成し(作成を衛生検査所などに依頼することも可能)、受託するB病院では「診断」のみを行うことになっています。また病理診断を受託できる保険医療機関には一定の施設基準が定められており、人員体制などによって算定可能な診療報酬が変わってきます。

一定の場合には、複数医療機関で連携して病理診断を行い、それが診療報酬で評価されているケースもある
一定の場合には、複数医療機関で連携して病理診断を行い、それが診療報酬で評価されているケースもある
 
迫井医療課長は、この取り扱いを見直し、▼受託病院(上記のB病院)でも「標本」作成を可能とする(委託病院は検体を送付するのみ)▼受託先をより広く「保険医療機関」以外にも認める―ことを提案しています。後者の「受託先拡大」は、病理診断の専門医が不足している状況を踏まえ、より柔軟な検査体制を可能とすることを狙ったものですが、委員からは「フリーランスの医師が受託する場合など、質をどう担保するのか」といった疑問も出ています。年明けの議論で、要件などを再整理することになるでしょう。
個人病理医との連携による病理診断について、診療報酬上の評価を求める声もある
個人病理医との連携による病理診断について、診療報酬上の評価を求める声もある

小児医療の評価を充実、抗菌薬の適正使用による耐性菌対策も進める

 小児医療については、次のような見直し案が迫井医療課長から提示されています。

▼B001-2-11【小児かかりつけ診療料】の施設基準において、参加することとされている「地域の保健活動等」のうち、医師の負担が大きいと考えられる業務(初期小児救急医療など)に従事している場合には、「状態が安定した患者について診療時間外の問い合わせ対応」に係る算定要件を一部緩和する

小児かかりつけ診療料について、2016年度の前回改定で、「地域の保健活動への参加」が要件として設定されたが、内容は幅広い
小児かかりつけ診療料について、2016年度の前回改定で、「地域の保健活動への参加」が要件として設定されたが、内容は幅広い
 
▼かかりつけ医(小児かかりつけ診療料を算定する医療機関などの医師)からの紹介を受けて、整形外科において小児の運動器疾患に対し継続的な管理が行われる場合を評価する

▼B001【特定疾患治療管理料】の【5 小児科療養指導料】について、現在は「小児科の医師が療養上の指導を継続的に行う」ことになっているが、医師の治療計画に基づいて療養上の指導を複数の職種が行えるとの規定に見直す(同【18 小児悪性腫瘍患者指導管理料】などでは、複数職種による指導が可能)

小児科療養指導料では「小児科医による療養上の指導」が要件となっているが、小児悪性腫瘍患者指導管理料などでは、こういった要件がなく「多職種による指導」で診療報酬の算定が可能である
小児科療養指導料では「小児科医による療養上の指導」が要件となっているが、小児悪性腫瘍患者指導管理料などでは、こういった要件がなく「多職種による指導」で診療報酬の算定が可能である
 
▼B001【特定疾患治療管理料】の【5 小児科療養指導料】に、「医師等による療養上の指導が必要な、いわゆる医療的ケアが必要な児」を対象患者に追加する(現在は、▽脳性麻痺▽先天性心疾患▽ネフローゼ症候群▽染色体異常▽小児慢性特定疾病に罹患する児▽出生時体重1500g未満であった6歳未満の児―などが対象)
小児科療養指導料の概要、対象患者は脳性麻痺、先天性心疾患などに罹患した児に限定されている
小児科療養指導料の概要、対象患者は脳性麻痺、先天性心疾患などに罹患した児に限定されている
 
▼B001【特定疾患治療管理料】の【5 小児科療養指導料】の算定要件に「学校との情報共有・連携」などを明確化(要件化)する

▼B001-2【小児科外来診療料】やB001-2-11【小児かかりつけ診療料】の算定患者が、急性気道感染症や急性下痢症で受診した場合に、広域抗菌薬(▼経口セファロスポリン▼フルオロキノロン▼マクロライド—など)を使用しない取り組み(簡易検査等の活用や、患者・家族への十分な理解を得る説明など)を評価する(患者・家族等への文書の提供や、抗菌薬の処方状況などの国への報告を求める)(関連記事はこちら

 

 

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