抗菌剤の適正使用推進、地域包括診療料などの算定促進を目指す—第375回 中医協総会(2)



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 お伝えしているとおり、12月1日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、(1)ICTを活用した連携(2)ICTを用いた医療(3)薬剤適正使用の推進(4)地域包括診療料などの見直し—の4点が議題となりました。今回は、(3)と(4)に焦点を合わせてお伝えします。

(3)では、薬剤耐性菌対策の一環として「抗微生物薬適正使用の手引き」(以下、ガイドライン)の遵守を診療報酬で評価することなどが提案されています。

12月1日に開催された、「第375回 中央社会保険医療協議会 総会」
12月1日に開催された、「第375回 中央社会保険医療協議会 総会」

抗菌剤適正使用の手引きを活用する医療機関など、診療報酬で評価すべきか

我が国では、抗菌剤の使用量そのものは諸外国と比べてそれほど高い水準にあるわけではないものの、▼経口セファロスポリン▼フルオロキノロン▼マクロライド—といった幅広い細菌に有効な抗菌剤(広域抗菌剤)の使用量が極めて多いと指摘されます。漫然とした抗菌剤使用は薬剤耐性菌の発生につながるため、「抗菌剤の適正使用」が重要課題の1つに位置付けられています。

我が国では、セファロスポリンなどの広域抗菌剤の使用量が諸外国に比べて極めて多い
我が国では、セファロスポリンなどの広域抗菌剤の使用量が諸外国に比べて極めて多い
 
政府は「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を取りまとめ、「▽経口セファロスポリン▽フルオロキノロン▽マクロライド—の使用量を2020年までに半減し、抗微生物薬全体の使用量を3分の2(33%減)とする」との目標を掲げています。
 
目標達成のために医療保険からのアプローチも重要となり、2018年度の次期診療報酬改定に向けて「A234-2【感染防止対策加算】を参考とした『抗菌薬適正使用推進チーム』(AST)の取り組みを診療報酬で評価する」案などがすでに浮上しています。

厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、さらに、12月1日の中医協総会で、「急性気道感染症などの症状を示す患者に、▼厚労省がとりまとめた適正使用マニュアルを活用する▼患者・家族らへの文書による説明する―などの取り組みを行う医療機関」を診療報酬で評価する考えを示しました。

抗微生物薬の適正使用に向けた手引き(ガイドライン)を厚生省が作成、急性気道感染症(かぜ)などには抗菌剤投与が不要であることを明確にしている
抗微生物薬の適正使用に向けた手引き(ガイドライン)を厚生省が作成、急性気道感染症(かぜ)などには抗菌剤投与が不要であることを明確にしている
 
抗菌剤の処方は医師が行いますが、国民が「抗菌剤の適正使用」を十分に理解し、むやみに抗菌剤処方を求めるといった行動を是正してもらうことが極めて重要で、そのためには「医師が抗菌剤の適正使用の必要性などを、分かりやすく説明する」ことが不可欠なためです。ただし、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「医師・医療機関の本来業務であり、評価には違和感がある。明確化・要件化を検討すべきではないか」との意見を示しており、さらなる調整が必要のようです。
抗菌剤適正使用に向けて、「医師から患者に分かりやすく説明する」ことが極めて重要である
抗菌剤適正使用に向けて、「医師から患者に分かりやすく説明する」ことが極めて重要である
 
さらに迫井医療課長は、次のような提案も行っています。

▼地域包括診療料や薬剤服用歴管理指導料において、「抗菌薬の適切な使用に関する説明や取り組みを行う」ことを明確化する(迫井医療課長は「当該報酬を算定する医療機関や薬局において当然、行われるべきこと」と説明しており、「要件化」が行われる可能性がある)

▼「多剤投薬・重複投薬の是正」を推進するため、かかりつけの医師による▼入院医療機関や薬局と連携した減薬に係る情報提供▼減薬後のフォローアップ—などを評価する(入院中に減薬を行い、退院後にも減薬が継続するような、かかりつけ医の取り組みを評価)

▼減薬の取り組みに関する実績を踏まえ、薬剤総合評価調整加算の評価対象に地域包括ケア病棟を追加する

2016年度の前回診療報酬改定では、「入院前に6種類以上の内服薬が処方されていた患者」について、入院中に処方内容を総合的に評価・調整し、「退院時に処方される内服薬が2種類以上減少」した場合などに、その入院医療機関の取り組みを【薬剤総合評価調整加算】(退院時に1回、250点を算定可能)として経済的な評価を行うなどの見直しが行われました。後2者は、この取り組みをさらに強化する狙いがあります。

2016年度の前回診療報酬改定で、多剤投与患者の薬剤を減少(減薬)させることを評価する点数が新設された
2016年度の前回診療報酬改定で、多剤投与患者の薬剤を減少(減薬)させることを評価する点数が新設された

地域包括診療料など、在宅医療提供体制の要件を維持し、実際の提供を別建て評価へ

(4)の地域包括診療料などは、生活習慣病患者に対する総合的な医学管理を包括評価する診療報酬項目です(2016年度の前回改定で、生活習慣病でない認知症患者も対象に加えた認知症地域包括診療料を創設)。200床未満の病院と診療所が対象となります。

しかし、「施設基準などが厳しすぎる」との声が強く、実際に、届出医療機関数はごく少なかったため、2016年度の前回改定で「2次救急指定病院要件の廃止」「常勤医師基準の3人から2人への緩和」などが行われました。

2016年度の前回診療報酬改定で、地域包括診療料の施設基準など見直し、認知症地域包括診療料の創設が行われた
2016年度の前回診療報酬改定で、地域包括診療料の施設基準など見直し、認知症地域包括診療料の創設が行われた
 
この見直しで、届出医療機関数は若干増加しました(地域包括診療料などは2015年7月の81施設から、2016年7月に171施設に、地域包括診療加算などは同じく4701施設から5238施設に増加)が、まだまだ「届出数が少ない」状況は続いています。

この背景には、やはり施設基準などの厳しさがあると考えられます。迫井医療課長は、厚労省調査(2016年度診療報酬改定の結果検証調査)や日本医師会の調査などを踏まえ、(a)在宅患者に対する24時間対応(b)患者に処方されているすべての医薬品の管理(c)患者が受診しているすべての医療機関の把握—などが大きなハードルになっていると分析。一方で、地域包括診療料などの届け出を行っていない医療機関でも、「看護職員が平均2.3人配置されている」「7-8割が保険薬局との連携を行っている」ことから、ハードル解消のために「連携による要件クリア」を認めてはどうかとの考えを迫井医療課長は示しています。

例えば、(b)の「患者に処方されているすべての医薬品の管理」を薬局と連携して行う(かかりつけ薬局から情報提供を受けるなど)、(c)の「患者が受診しているすべての医療機関の把握」を看護師と連携して行う、ことも可能であると明確化することになります。

 
また(a)の「在宅患者に対する対応」については、「体制」と「実績」とを区別し、前者の「在宅医療提供体制」は施設基準などに残したまま、後者の「在宅医療提供実績」を別途評価する考えが示されました。

地域包括診療料を届け出るためには、病院では「在宅療養支援病院」、診療所では「在宅療養支援診療所」であることが必須であり、また診療所では「時間外加算1・2」の届け出も必須となるため、「在宅患者に対する24時間対応体制」は必ず満たさなければなりません。迫井医療課長は、この体制を崩す考えはないようです。

一方、実際に在宅医療を提供する際には、「担当医が在宅診療に出ている場合には、他の医師に外来診療が集中する」など、相応の負担がかかります。迫井医療課長は、この負担に応える必要があるとし、「在宅医療提供実績」を別途評価する考えを示しているのです。具体的には、地域包括診療料などの「継続的かつ全人的な医療提供」という創設趣旨などを踏まえ、「自院に一定期間以上継続して外来通院していた患者」(かかりつけの患者)への訪問診療実績が評価対象となります。評価手法については、「在宅医療提供実績を、外来の診療報酬で評価する」ことになるため、これから工夫が練られます。

 
なお、地域包括診療料などの、もう一つのハードルとして「患者の同意」があることも分かりました。しかし、患者に「地域包括診療料を算定したい」旨の説明を行えば、その6割は同意することが分かっています。現在、同意書の内容については特段の定めがないため、「説明に躊躇してしまい、結果として(当然ながら)同意が得られない」状況もあると考えられます。この点を踏まえ、迫井医療課長は、▼地域包括診療加算▼認知症地域包括診療加算(いずれも再診料の加算)―に限り、「一定期間以上継続して当該医療機関に通院している」患者(かかりつけの患者)については、同意取得の取扱いを見直す(簡素化する)考えも示しました。かかりつけの患者であれば信頼関係が醸成されており、簡素な同意手続きによって算定患者が増加することが見込めます。

医師から説明を受けた患者の6割は、「地域包括診療料などの算定」に同意する
医師から説明を受けた患者の6割は、「地域包括診療料などの算定」に同意する
 
こうした提案に、特段の反論は出ておらず(診療側はむしろ「大歓迎」)、この方向で見直しが行われることになります。

 

 

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