診療報酬は2%半ば以上、介護報酬は一定程度の「マイナス改定」とせよ—財政審



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 「2020年度におけるプライマリ・バランス(PB)の黒字化」という目標達成が困難になった中では、財政の健全化がこれまで以上に強く求められており、歳出削減を強く進める必要がある。2018年度には、診療報酬について「2%半ば以上のマイナス改定」を行い、介護報酬についても「一定程度のマイナス改定」としつつ、生活援助サービスなどの報酬水準適正化を行うべきである—。

 財政制度等審議会(以下、財政審)は11月29日、こうした内容の建議(平成30年度予算の編成等に関する建議)をまとめ麻生太郎財務大臣に提出しました(関連記事はこちらこちら)。

7対1などの看護配置でなく、提供する医療機能に応じた入院基本料も要望

 財政審建議は、次年度予算編成に向けた重要な提言という位置づけです。2006年度の中央社会保険医療協議会改革により、診療報酬の改定率は「予算編成過程で内閣が決定する」ことになっており、建議では「改定率」に関する明確な考え方も示しています。これから12月下旬にかけて予算編成に向けた調整が本格化する中で、建議で要望された「改定率」も極めて重要な参考資料となります。

 まず診療報酬に関する建議内容を見てみましょう。

財政審は、診療報酬が「医療機関の収入」であるばかりでなく、「国民にとっては受診の料金」である点を強調し、国民負担に与える影響を十分に考慮すべきと指摘。診療行為が高齢化などで増加していくため、国民負担の増加を抑制する観点から「診療報酬単価を抑制する必要がある」とし、「2%半ば以上のマイナス改定」を求めています(関連記事はこちらこちらこちら)。

さらに、「薬価引き下げ分は診療報酬本体の財源とはなりえない」ことを改めて説くとともに、「診療報酬本体のマイナス改定も必要」と強調しています。

医療費の伸びを高齢化などの範囲内とするため、財政審は「2018年度に2%半ば以上のマイナス改定が必要」と提言
医療費の伸びを高齢化などの範囲内とするため、財政審は「2018年度に2%半ば以上のマイナス改定が必要」と提言
 
また、今後の高齢化(いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりはじめる2022年、すべて後期高齢者となる2025年)を踏まえて医療提供体制の再構築が必要であることを確認した上で、地域医療構想の実現に向けて▼診療報酬・介護報酬も必要な見直しを行い、病床転換の動きが加速するような改定内容とする▼看護配置ではなく、提供する医療機能で評価される仕組みとする▼医師の診療科偏在を助長しないような診療報酬とする—ことなども求めています。
7対1など看護配置に基づいて設定されている入院基本料について、医療機能による評価を目指すべきとも提案
7対1など看護配置に基づいて設定されている入院基本料について、医療機能による評価を目指すべきとも提案
 
なお25対1医療療養については、患者の状態像にそぐわない「20対1医療療養への転換」を防止するために、「医療必要度要件(現在、20対1では医療区分2・3の患者割合が80%以上)の厳格化」などを行うよう指摘しました。

このほか、調剤報酬について、▼患者の受けるサービスの価値にあった技術料設定▼かかりつけ機能を果たさない薬局の報酬水準引き上げ(平均以上規模の門前薬局・マンツーマン薬局(いわば診療所の門前薬局)の調剤基本料引き下げ、など)―を要望。また薬価制度については、新薬創出・適応外薬解消等促進加算のゼロベースでの見直しなど、「抜本改革」を着実に進めるよう求めています。

頻回な生活援助の抑制、質の低い通所介護での報酬減額なども言及

 一方、介護報酬については、「2025年には第1号保険料が全国平均で8000円を超える」と見込まれる中で、国民負担の抑制が重要課題であると指摘。さらに▼「2017年度の臨時プラス改定」(処遇改善加算Iの新設など)の影響を抑える必要がある▼介護サービス事業所の経営(収支差率)は、中小企業の経営状況と比べて概ね良好である▼質の高いサービスを加算で評価する報酬体系となっている(報酬全体の水準を上げれば、質の低いサービス提供事業所も評価されてしまう)—点を踏まえれば、「2018年度には一定程度のマイナス改定とする」ことが適当と述べています(関連記事はこちらこちら)。

2017年度に行われた臨時の介護報酬プラス改定(プラス1.14%)の影響も踏まえ、「2018年度には一定程度のマイナス改定が必要」と提言
2017年度に行われた臨時の介護報酬プラス改定(プラス1.14%)の影響も踏まえ、「2018年度には一定程度のマイナス改定が必要」と提言
財政審は介護事業経営実態調査を踏まえ、「中小企業よりも経営状況がよい」と見ている
財政審は介護事業経営実態調査を踏まえ、「中小企業よりも経営状況がよい」と見ている
 
また、▼生活援助サービスの適正利用を推進する(頻回利用はケアプラン検証を行う、1日の算定可能上限を設定する、など)▼高齢者向け住まいの居住者へのサービスについて算定回数上限を設ける(同一建物・隣接建物からの過剰なサービス提供の是正)▼自立支援・重度化防止に向けた質の高いサービスを提供していない通所介護事業所で基本報酬を減算する—など、個別項目にも言及しています。

このほか、介護保険制度について、▼調整交付金(市町村における年齢構成・所得水準の違いを補正し、保険料水準のバラつきを抑える)と、新たな交付金(保険者などによる自立支援への取り組み状況に応じた財政支援)とをセットで活用した、保険者機能強化へのインセンティブ制度の創設▼在宅サービスへの総量規制・公募制導入(地方自治体による介護提供体制のコントロールを可能とする)▼補足給付(低所得の施設入所者への居住費補填)の見直しによる、施設と在宅との公平性確保▼軽度者への生活援助サービスなどの地域支援事業への移行推進—なども求めました。

 

 

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