処遇改善加算IVとVを廃止、介護ロボット導入で要件緩和―第153回介護給付費分科会(1)



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 職員のキャリアパスの整備状況などに応じた5区分の【介護職員処遇改善加算】のうち、処遇改善の取り組みが不十分な事業所が算定する「IV」と「V」を廃止する。ただし、一定の経過期間を設けて「I」「II」「III」の加算取得に向けた支援を行う―。

 11月29日の社会保障審議会・介護給付費分科会で厚生労働省は、こうした方向性を示しました。【介護職員処遇改善加算】の算定対象の事業所の9割弱(88.8%)が「I」「II」「III」のいずれかを算定していることから、「廃止はやむを得ない」と考える委員が大勢を占めています。

 また厚労省は、介護ロボットの「見守り機器」を導入する介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)について、【夜勤職員配置加算】の要件を緩和する方針も示しています。

11月29日に開催された、「第153回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月29日に開催された、「第153回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

「IV」「V」廃止に向け、「III」以上目指す事業所への丁寧な助言が必要

 2000年度に介護保険制度が施行されてから、介護保険サービスの利用者増に伴い、介護職員数も増加傾向が続いています。2015年度は183.1万人で、2000年度(54.9万人)の約3.3倍となっています。

介護ニーズに合わせて介護職員数は増えている
介護ニーズに合わせて介護職員数は増えている
 しかし、2016年時点の「介護分野」の有効求人倍率は3.1倍(全職業では1.36倍)と高い水準であり、人手不足の状態です。今後、高齢化が進めば介護ニーズもさらに増大します。特に、いわゆる「団塊の世代」が高齢化する影響は大きく、介護人材不足は「家族介護のための介護離職」にもつながります。

 そこで、政府は「十分な受け皿を介護保険サービスとして準備して、『介護離職』を防ぐ(「介護離職ゼロ」を目指す)」という方針を掲げて対策を講じています。昨今の【介護職員処遇改善加算】による介護職員の処遇改善は、その一環だと位置付けられています(相対的な「給与水準の低さ」が、人手不足の一因だと考えられるため)。

 今年(2017年)4月には、介護職員のさらなる処遇改善のみを目的とする緊急の介護報酬改定が実施され、「改定率プラス1.14%」分の財源をもとに、現在の【介護職員処遇改善加算】の「I」が新設されました。

5区分の【介護職員処遇改善加算】のイメージ
5区分の【介護職員処遇改善加算】のイメージ
 【介護職員処遇改善加算】が算定する区分は、▼キャリアパス要件I:介護職員の職位・職責・職務内容などに応じた任用要件と賃金体系を整備する▼キャリアパス要件II:介護職員の資質向上のための計画を策定し、研修を受ける機会を確保する▼キャリアパス要件III:経験や資格などに応じて昇給する仕組みか、定期的に昇給する仕組みを設ける▼職場環境等要件:賃金改善以外の処遇改善―の4要件の達成状況に応じて決まります。

 具体的には、▼4要件すべてを満たす→加算の「I」:月額3万7000円相当▼3要件(キャリアパス要件III以外)を満たす→加算の「II」:月額2万7000円相当▼2要件(キャリアパス要件のI・IIのどちらか+職場環境等要件)を満たす→加算の「III」:月額1万5000円相当▼1要件(キャリアパス要件III以外)だけ満たす→加算の「IV」:「III」の9割▼1要件も満たさない→加算の「V」:「III」の8割―です。 このほかに、どの区分でも共通の要件として、【介護職員処遇改善加算】の算定額に相当する賃金改善(「I」なら月額3万7000円の賃金アップ)などがあります。11月29 日の介護給付費分科会で厚労省が提案したのは、このうち「IV」と「V」を、一定期間後に廃止するというものでした。

 今年(2017年)8月のサービス提供では、【介護職員処遇改善加算】を算定可能な事業所のうち66.2%が「I」、13.2%が「II」を算定しています。「III」は9.4%で、「IV」と「V」は0.8%ずつにとどまります。「IV」と「V」が廃止されても、影響が及ぶ事業所は一部に限定されると考えられます。

 さらに厚労省は、「IV」と「V」を廃止するまでに、これらを取得している事業所に対して、「より上位の区分の取得について積極的に働き掛ける」方針です。具体的には、【介護職員処遇改善加算】の「I」などの算定に向けた「規定の整備方法」などの助言を事業所が受けられるように、都道府県や政令指定都市がコールセンターを設置する費用などを厚労省が全額補助するとしています。同省では、今年度(2017年度)からこの予算事業を始めており、来年度も継続して実施する予定です。

 【介護職員処遇改善加算】の「IV」と「V」を廃止する厚労省の案には、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)ら多くの委員が賛成しました。ただし石本淳也委員(日本介護福祉士会会長)は、「IV」などを廃止する方向性に賛同した上で、事業所が「I」などの要件を満たせない理由に合わせた丁寧な助言が必要と注文をつけています。

 一方、伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は、「I」などの取得に向けて事業所に助言する今年度(2017年度)の予算事業で、「実際にこれだけの事業所が『I』を取得できた」といった成果が分からないとして、厚労省側にデータを示すよう要望。「IV」などの廃止案への賛否は保留しています。

 また、田部井康夫委員(認知症の人と家族の会理事)は、事業所が小規模な場合にはキャリアパス要件などを満たしづらい可能性があり、「IV」や「V」を廃止すればそうした事業所が廃業に追い込まれる懸念があるとして、反対の立場を表明しました。

 「IV」と「V」は来年度(2018年度)の介護報酬改定の後、1年程度の経過期間を経て廃止される公算が大きいですが、その間に「I」や「II」の取得(処遇改善のための各事業所の規定の整備)に向けた支援を着実に進めることが、厚労省にも都道府県などにも求められると言えます。

 ちなみに、政府は「人づくり革命」のための2兆円規模の政策パッケージを年内にまとめる方針で、そこには「『介護離職ゼロ』に向けた介護人材確保」のための施策も含まれる見通しです。安倍晋三内閣総理大臣は衆院選前の9月25日の記者会見で、「他の産業との賃金格差をなくしていくため、さらなる処遇改善を進める」と明言しており、【介護職員処遇改善加算】に、「I」の上位区分が設けられる可能性があることにも注目する必要があります。

「見守り機器」導入施設では加算に必要な夜勤時間を短縮

 11月29日の介護給付費分科会では、「見守り機器」を設置している特養で、【夜勤職員配置加算】の人員配置の基準を緩める厚労省案についても話し合いました。

 「見守り機器」は、ベッドの上などに設置して使う介護ロボットで、入所者の動向(離床など)を検知します。厚労省が昨年度(2016年度)の補正予算で行った事業(介護ロボットの導入支援及び導入効果実証研究事業)で、特養など30施設に7種類の「見守り機器」を導入し、介助時間の変化を調べたところ、夜間の「巡回」などの介助時間を、介助者1人につき5.4%短縮させる効果がありました(特養23施設についての検証結果)。

 そこで厚労省は、「見守り機器」を導入した施設で、「夜勤を行う介護職員または看護職員の数が最低基準を1人以上、上回っていること」という【夜勤職員配置加算】の算定要件を、「0.9人以上」に緩和する案を示しています(短期入所生活介護でも同様に緩和)。

 この要件緩和の対象となるのは、▼「見守り機器」を入所者の15%以上に設置している▼施設内に見守り機器を安全かつ有効に活用するための委員会を設置し、必要な検討等を行う―を満たす施設です。

 「1人以上」という基準が「0.9人以上」に緩和されても、配置する職員数を減らすのは難しいですが、夜勤職員の勤務時間を少し(平均して1.6時間程度)短くでき、その分、休憩時間を長くできると考えられます。

 委員からは、「見守り機器」による介助時間の短縮効果を示すデータが乏しいことへの指摘や、入所者の安全を担保する必要性を強調する意見がありましたが、強い反対意見は出ていません。

 なお、厚労省の事業では「移乗介助機器」の導入効果も検証しましたが、介助時間の短縮効果が明確には認められなかったため、その活用方策を引き続き検討するとしています。

 

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