介護医療院の方向性固まる、「1年限りの加算」で転換促す―介護給付費分科会(1)



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 来年(2018年)4月に創設される介護医療院の施設基準や基本報酬の水準は、介護療養型医療施設(介護療養病床)と介護療養型老人保健施設(転換老健)を参考に設定する。ただし、療養室の環境を充実させる分、報酬水準を高く設定した上で、医療処置が必要な者や重度者が利用者に占める割合に応じてメリハリを利かせる―。

 11月22日の社会保障審議会・介護給付費分科会での会合では、こうした方向性を固めました。介護医療院は、「日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ」や「看取り・ターミナル」等の機能と「生活施設」としての機能を兼ね備えた新しい介護保険施設です。介護療養病床などの転換先として期待されており、転換を促すインセンティブとして、「1年限りの加算」を設ける案についても話し合いました。

11月22日に開催された、「第152回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月22日に開催された、「第152回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

介護療養病床からの転換先として来年4月に創設される介護医療院

 全国に約6万床ある介護療養病床は、病院・診療所の療養病床に要介護者を入院させ、必要な医療を提供する施設サービスです。病床であるが故に、医療の必要性が高くない患者を長期入院させることの是非や、医療保険が適用される療養病床(医療療養病床)との役割分担が課題となり2018年3月末での廃止が決まっています(ただし介護医療院への転換期間を6年間設定し、事実上は2024年3月末まで存続可能)。

 介護療養病床の廃止が延期されてきたのは、介護老人保健施設(老健)などへの転換がうまく進まなかったためです。そこで、介護療養病床が果たしている役割や、入院する患者の状態を踏まえた「新たな転換先」が検討され、介護医療院の創設が決まりました。

 介護療養病床だけでなく、看護配置が薄い医療療養病床(病院全体で「看護配置4対1以上」などの基準を満たせない)の一部も、介護医療院に転換すると想定されています。

介護医療院の宿直医師、「II型」は不要で「I型」は併設病院と兼任可

 11月22日の介護給付費分科会で厚労省は、▼介護医療院の基準と報酬▼介護療養病床の基本報酬▼転換老健の基本報酬と療養体制維持特別加算―について、それぞれ具体案を示しました。

 このうち介護医療院の基準・報酬については、「I型」と「II型」の2区分に分けて提案しています。「I型」は、介護療養病床の【療養機能強化型】のように、医療ニーズに対応可能な人員や設備を備え、医療処置が必要な人や重篤な身体疾患を持つ人を積極的に受け入れるサービスです。これに対して「II型」の人員体制は「I型」ほど充実しておらず、状態が比較的安定した患者の入所が想定されています。

介護医療院の人員基準案。「I型」は介護療養病床並み、「II型」は老健並みに設定されている
介護医療院の人員基準案。「I型」は介護療養病床並み、「II型」は老健並みに設定されている
 具体的には、「I型」の人員基準では「48対1以上(施設で3人以上)」と介護療養病床並みの医師を配置し、看護職員(指定基準は「6対1以上」)のうち2割以上を看護師が占めます。介護職員も原則「4対1以上」と、介護療養病床と同じです。医師の宿直が必要ですが、厚労省は、「併設する医療機関の宿直医師が兼任できる」としています。

 一方「II型」の人員基準は老健並みで、医師数は「100対1以上(施設で1人以上)」です。看護職員は「6対1以上」、介護職員は通常「6対1以上」で、両者を合わせると老健の基準と同じ(看護職員または介護職員が3対1以上)です。医師の宿直は不要です。

 厚労省は、「I型」の医師の宿直以外においても、「医療機関と併設する場合には、医療資源を有効活用する観点から人員基準の緩和や設備の共用を可能とする」としています。しかし、齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、「労働衛生上も、利用者の安全の観点からも、人員が手薄な夜間帯などに看護職員や介護職員が『兼務』するのは、あってはならない」とけん制しています。

 なお、リハビリテーション専門職や栄養士、放射線技師らの人員基準は、施設全体として配置することを念頭に設定します。

床面積8平米以上など求めるが、療養病床からの転換に必要なら基準を緩和

介護医療院の施設基準案。床面積が1人当たり8.0平米以上の療養室など、介護療養病床より充実した設備を求めている
介護医療院の施設基準案。床面積が1人当たり8.0平米以上の療養室など、介護療養病床より充実した設備を求めている
 一方、施設や構造の基準として厚労省は、「I型」「II型」の双方とも、介護療養病床や老健よりも充実させる具体案を示しています。例えば、「1人当たり8.0平米以上の居室」(介護療養病床の基準は「1人当たり6.4平米以上」)や、「十分な広さのレクリエーションルームの設置」(介護療養病床には不要)などです。療養室を個室にする必要はありませんが、利用者のプライバシーに配慮しなければならず、例えばパーテーションによる間仕切りなどが考えられます。

 利用者1人当たりの床面積は、4人部屋を2人部屋にしたり、改修したりしないと拡張できませんが、厚労省は、大規模改修までの間、床面積などの基準を緩和させる方針を示しています(医療療養病床からの転換も緩和の対象)。

 また介護医療院の基準案では、老健に不要とされている「処置室」や「臨床検査施設」「エックス線装置」などの設置を求めています。医療・介護・生活の3機能を併せ持つ施設であるためと言えるでしょう。この点、転換老健では介護療養病床から転換した際、「臨床検査施設」などを廃止したケースも想定されることから、厚労省は「サービスに支障のない範囲で配慮を行う」としています。

 なお、介護医療院の指定は「療養棟単位」が原則ですが、療養病棟が2病棟しかない医療機関などには、介護療養病床と同様に「療養室単位」での運営が認められるようです。

居室環境の充実踏まえて基本報酬を高く設定、ただし6.4平米の間は減算か

 介護医療院の基本報酬について厚労省は、「I型」は介護療養病床の【療養機能強化型】、「II型」は転換老健を参考にしてはどうかと提案。その上で、(1)「I型」「II型」に求められる機能を踏まえ、それぞれに設定される基準に応じた評価を行う(2)一定の医療処置や重度者要件等を設け、メリハリが利いた評価とする(3)介護療養病床と比べて療養室の環境が充実していることも評価する―方針を示しています。

 療養環境の充実を評価するのは、介護療養病床と比べて1人当たり床面積を広げたり、レクリエーションルームを設けたりさせ、施設サイドに相応のコストが掛かる(あるいは収益が減少する)ためです。ただし、1人当たり床面積が6.4平米のまま、経過措置を使って介護医療院になるケースも想定されます。瀬戸雅嗣委員(全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事)は「基準の緩和中は、環境が充実しているとは言えない」と指摘し、基本報酬を減算するよう主張しています。

 また、「I型」の参考となる介護療養病床の【療養機能強化型】には、医療処置や重度者の要件が設けられ、重度者等の割合に応じて「療養機能強化型A」「療養機能強化型B」の2段階で評価されています(「療養機能強化型A」の方が、ハードルが高く単位数が高い)。「I型」の基本報酬も、「I型A」「I型B」のように数段階で要件と単位数が設定されそうです。

 一方、「II型」の基本報酬は、転換老健を参考に設定されるわけですが、厚労省は11月22日の介護給付費分科会で、転換老健の基本報酬の見直し案も示していますので、後段で説明します。

転換を加算で促す一方で、介護療養病床の基本報酬は「適正化」?

 介護医療院の加算について厚労省は、介護療養病床と同様に設けてはどうかと提案しています(一部は名称を変更)。さらに、利用者の緊急時に、医療施設として対応することを別途評価する方針です。具体的には、緊急的な治療・管理として入所者に投薬などを行うと511単位を算定できる老健の【緊急時施設療養費】と同様にするとしています。

 また、介護医療院に転換した日から1年間だけ算定できる加算を、2021年3月末までの期限付きで設ける方針も示しています。

 この加算をつくる理由を厚労省は、「療養病床などからの転換前後、サービスの変更内容を利用者・家族に説明したりする手間がかかるため」と説明していますが、転換に対するインセンティブだと言え、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)も「転換を促すには魅力ある選択肢を用意する必要があると言ってきたが、これは魅力的な選択肢の1つだ」と評価しています。その一方で本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、転換を促すインセンティブの必要性を認めながらも、介護報酬以外で「対策を講じるべきだ」と述べています。

 ただし転換を促すためには、介護療養病床の基本報酬を下げる方法もあり得ます。この点、厚労省は単なる引き下げではなく、「医療処置または重度者の割合」に応じてメリハリを利かせる案を示しています。この案については鈴木委員が、「転換へと追い込むべきではない」と、事実上の引き下げにならないようにクギを刺した一方で、本多委員は、重度者などの割合が低ければ報酬を「適正化」させるよう求めました。

 そのほか厚労省は、認知症の人のみを精神病床で受け入れている介護療養型医療施設(老人性認知症疾患療養病棟)の人員基準(1病棟1人以上の作業療法士や精神保健福祉士など)を満たす介護医療院を、基本報酬の加算で評価する方針も示しています。この加算には、精神科病院との連携などの算定要件も設けられる見通しです。

 また居宅サービスのうち、▼短期入所療養介護▼通所リハビリテーション▼訪問リハビリテーション▼訪問看護―は、介護医療院でも提供できる仕組みにするようです。

転換老健の基本報酬を一本化、【療養強化型】並みの実績は加算で評価

 厚労省は11月22日の介護給付費分科会で、転換老健の基本報酬などの見直しも提案しています。転換老健の基本報酬は現在、【療養型】と【療養強化型】に分けて設定されています。「医療処置を行った患者割合」と「重度者の割合」に応じて区分され、ハードルが高い【療養強化型】の方が1日当たりの単位数が高く設定されています(利用者が要介護3以上である場合に限る)。

 厚労省の見直し案は、転換老健の基本報酬を【療養型】の一本に整理して、報酬体系を簡素化するものです。さらに、来年(2018年)3月末までで廃止する予定だった【療養体制維持特別加算】(1日につき27単位、「介護職員の配置4対1以上」などが要件)を無期限に延長し、「医療処置を行った患者割合」か「重度者の割合」が高い施設に対しては、この加算の単位数を通常より高くするとしています。

 介護医療院の「II型」の基本報酬は、こうした見直し後の転換老健の基本報酬を踏まえたものになりそうです。

転換老健の基本報酬の見直し案。「現行」の基本報酬は「介護保健施設サービス費(II)」の多床室を例示している
転換老健の基本報酬の見直し案。「現行」の基本報酬は「介護保健施設サービス費(II)」の多床室を例示している

 

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