多床室ショートステイの介護報酬、従来型個室並みに引き下げ―介護給付費分科会(2)



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 短期入所生活介護(ショートステイ)の多床室の基本報酬を、2018年度介護報酬改定で従来型個室と同水準にまで引き下げてはどうか―。

 11月15日に社会保障審議会・介護給付費分科会が開いた会合で厚生労働省は、こうした見直し案も示しました。現在は1日につき20単位、多床室の方が高く設定されていますが、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)にはそうした差がなく、整合性が取れないことから、多床室の基本報酬が「適正化」される見通しです。

 また厚労省は、「医療機関の退院患者を受け入れる特定施設(有料老人ホームなど)を加算で新たに評価する」といった案も提示しました(関連記事はこちら)。

11月15日に開催された、「第151回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月15日に開催された、「第151回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

従来型個室と多床室の報酬「逆転現象」を解消

 ショートステイは、在宅生活を送る要介護者らが特別養護老人ホームなどに短期間(最長1か月)入所して、日常生活上の世話や機能訓練を受ける居宅サービスです。利用者の状態悪化時の対応や、介護をしている家族のレスパイトなどのために活用され、「在宅生活の限界点を高める」ために重要だとされています。2015年時点で、事業所数が1万を超え、30万人以上が利用しています。

 ショートステイは現在、▼ユニット型(共用スペースなどがある在宅に近い居住空間で、居室が一人部屋)▼多床室(ユニット型以外で、居室が相部屋)▼従来型個室(ユニット型以外で、居室が一人部屋)—に分類され、それぞれで基本報酬が設定されています。

 要介護3の利用者では、ユニット型で855単位、多少室で775単位、従来型個室で755単位となり、多床室の方が従来型個室よりも高くなっています(単位数は単独型の場合)。一方、ショートステイが行われる特別養護老人ホームの基本報酬を見てみると、多床室でも従来型個室でも同じです。

 短期入所生活介護の基本報酬をめぐっては、介護給付費分科会の委員からはこれまでに、「本来は従来型個室の報酬を多床室よりもむしろ高くすべきで、『逆転現象』が起きている」といった指摘もありました。こうした状況を踏まえて11月15日の会合で厚労省は、「多床室」の基本報酬を引き下げる方向性を示しました。

 この見直し案には多くの委員が賛意を示しましたが、瀬戸雅嗣委員(全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事)は、多床室でショートステイを提供する事業所が赤字に転落する可能性もあるとして、慎重な姿勢を示しています。

要介護3以上の入所者が多い事業所を新たに評価

 またショートステイに関しては、(1)要介護3以上の高齢者の受け入れに積極的な事業所を新たに評価する(2)特別養護老人ホームとの夜勤職員の兼務を、さらに広く認める(3)外部のリハビリテーション専門職と連携して、質の高い機能訓練を行うことを評価する加算(生活機能向上連携加算)を創設する―といった見直し案も示されています。

 このうち(1)は、中重度者の受け入れ促進を狙うもので、厚労省は算定要件として、「看護師常勤1人以上の配置」(看護体制加算(1)の要件)と、「看護配置25対1以上」など(看護体制加算(II)の要件)、「中重度の高齢者(要介護3以上)の一定割合以上受け入れ」のすべてを満たすことを提案しています。

 実際には42.4%のショートステイ事業所で、要介護3以上が入所者の「7割以上」であることが分かっています。新たな評価の要件(要介護3以上の入所者割合)も、これを参考に設定される見通しですが、これについて本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、既に重症者の受け入れがかなり進んでいることから、厳しい要件を設けるべきだと主張しています。

要介護3以上が入所者の7割以上の事業所が、全体の42.4%を占めている
要介護3以上が入所者の7割以上の事業所が、全体の42.4%を占めている

併設の特養との夜勤職員の兼務を認めるケースを拡大

 (2)の夜勤職員の配置基準の緩和は、ショートステイ事業所と特別養護老人ホームが併設する場合に配置する夜勤職員数の規定を見直すものです。

 現在、ショートステイ事業所と特別養護老人ホームが「どちらもユニット型の場合」や「どちらもユニット型以外の場合」には、夜勤職員の兼務が認められています。

 しかし、いずれか一方のみがユニット型の場合には兼務が認められません。厚労省は、両者の取り扱いが不均衡になっている点を踏まえ、「いずれか一方がユニット型」のケースでも兼務を認めてはどうかと提案しています。ただし、▼両方の施設の利用者数の合計が21人以上▼入所者の処遇に支障がある―場合は兼務が認められないようです。夜間の安全確保が最優先のためです。

規定が見直されれば、このケースでは夜勤職員2人(今は3人)の配置で済む
規定が見直されれば、このケースでは夜勤職員2人(今は3人)の配置で済む
 (3)の生活機能向上連携加算は、外部のリハビリテーション専門職(通所リハビリテーション事業所などの理学療法士ら)の協力を得て、質が高い機能訓練を行うことへの評価です。リハビリテーション専門職を雇用できず、機能訓練指導員加算(1日につき12単位)や個別機能訓練加算(同56単位)の要件(機能訓練指導員の専従配置など)を満たせない小規模な事業所が算定すると想定されます。

 ちなみに厚労省は、通所介護事業所や特別養護老人ホームにも、同様の評価を行う方針です(関連記事はこちらこちら

医療機関から特定施設への入居で加算、老健からでも評価するかは「検討」

 11月15日の介護給付費分科会で厚労省は、特定施設入居者生活介護に関する見直し案として、(1)退院時連携加算の創設(2)医療的ケア提供体制加算の創設(3)短期利用特定施設入居者生活介護の受け入れ人数の上限見直し―の3つを示しました。

 特定施設入居者生活介護は、有料老人ホームなどに入居する要介護者を対象とする居宅サービスで、日常生活上の世話や機能訓練、療養上の世話などに対して報酬が支払われます。

 見直し案(1)は、「医療機関を退院した者を受け入れる場合」の「医療機関との連携」などを評価する加算を設けるものです。具体的には、医療機関退院後、特定施設への入居から一定期間、毎日、加算が上乗せされます。厚労省は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の基本報酬の初期加算(1日につき30単位)のような加算をイメージしているようです。

 「連携」の評価なので、医療機関との連携に関係する「要件を明確に定めるべき」と主張する委員もいましたが、厚労省側は、入所前の居場所以外の要件を設ける考えを示していません。

 一方、東憲太郎委員(全国介護老人保健施設協会会長)が、介護老人保健施設から出て入居するケースでも算定できるか確認したところ、厚労省老健局高齢者支援課の武井佐代里課長は「現時点では想定していないが検討したい」と答えています。

 一方、(2)の医療的ケア提供体制加算は「配置する介護福祉士の数が、入居者数に対して一定割合以上である」「たん吸引等が必要な入居者が一定割合以上を占める」の2つを満たす事業所を評価するものです。特別養護老人ホームの日常生活継続支援加算の要件を参考にしています。

 これに対して委員からは、たん吸引などができる職員(看護師や研修を受けた介護福祉士ら)の配置が要件でないのなら、「医療的ケア提供体制加算」という名称はふさわしくないといった指摘が相次ぎました。名称変更が検討される見込みです。

特定施設のショート、利用者数の上限は一部拡大

 (3)の短期利用特定施設入居者生活介護は、特定施設が行うショートステイです。現在、「入居定員の10%まで」という利用者数の上限がありますが、「利用者側の需要と比べて供給が不足する地域もある」といった指摘があり、上限拡大が論点になっていました。

 しかし、全国介護付きホーム協会の調査では、今の受け入れ上限まで利用者を受け入れたことがある事業者が15.3%にとどまり、うち7割が「定員数の規定を変えなくてよい」と考えていました。

受け入れ上限の緩和を希望する事業所は多くない
受け入れ上限の緩和を希望する事業所は多くない
 このため厚労省は、規定を「1または定員の10%まで」に見直し、入居定員が9人以下の事業所でもショートステイができる(利用者を1人受け入れられる)ようにする方針を示しています。

 

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