強みが不明確な病院に患者はこない―鼎談 II群請負人(3)



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 高度な急性期医療を提供する病院としての絶対的なブランドとも言える「II群」を手に入れるには何が必要なのか、その条件とは――。

 経営分析システム「病院ダッシュボードΧ」リリース直前の緊急企画として、数多くのII群病院の昇格・維持をコンサルティングしてきた「II群請負人」であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのシニアマネジャーの塚越篤子、マネジャーの冨吉則行と湯原淳平が、II群昇格・維持の本質を語り合う連載。3回目は集患戦略です。

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集患戦略の柱は看護師

冨吉:次に集患はどうでしょう。II群脱落は、診療密度がネックになる病院が多い。患者が減って在院日数をコントロールしづらくなるためで、早急に集患強化が必要なのですが、やはり地域の雄であるII群病院が「集患しなければならない」という思考にはなりづらい背景もあります。

湯原:再びA病院(公立、400床台)の事例ですが、ある時、人口があまり多くなく、受療率が低かった地域から患者がくるようになり、気が付けばその地域から根こそぎ患者が来院するようになっていました。調べてみると、連携室のある看護師長が、介護連携を強化していました。当時、多くの病院で一桁台の前半だった介護連携指導料の算定率が30数%。具体的な取り組みを聞いてみると、来院したケアマネジャーとの関係作りがものすごくうまかった。

塚越:C病院(公的病院、300床台)の事例で集患を考えてみると、前方・後方連携のネットワーク作りが重要でしょう。救急と紹介のバランスは重要で、C病院は急性期激戦区とも言える地域にあるので、連携のネットワーク作りをしないと患者はこないし、すぐには結果が出るものでもない。そこをどう我慢してネットワークの地盤固めをしていくかにかかっているでしょう。

 そのための院内の職種として、私はずっと看護師をメインに医療連携室で展開することを勧めています。

 その理由の一つは、II群病院のような高度先進医療の魅力や強みを正確かつ具体的に伝えるには、医療従事者である必要があるということ。看護師は院内の医療にたずさわり、医師に最も近く、患者に最も近いという両面の強みを持っています。つまり、医療を提供する側と受ける側の間に立っているわけで、患者を紹介するクリニックの医師の立場でさまざまな疑問点に回答することができます。

 もう一つの理由は、マネジメントやコーディネートの視点。連携ネットワークを構築するには、院内外でのさまざまな交渉事を的確に処理する必要があります。訪問したクリニックで、「患者を紹介してもその後の連絡がないようでは困る」などの声があれば、例えば院内の医師に紹介患者の診察後は必ずクリニックの医師へ連絡するようお願いしたり、そのための院内の仕組みを作り、徹底させることが求められます。こうした医療現場の具体的な場面を想像しながら交渉事を進めていくには、やはり看護師が適任だと思っています。

ブランディングとは明確な差別化

冨吉:連携ネットワークの構築は、集患の王道ですよね。これは王道ではないかもしれませんが、II群を維持し続けているE病院(公的、500床台)では、近隣の中小病院に自院の医師を多数派遣していました。派遣先からの紹介を増やすという狙いです。ただ、これは特殊な事例かもしれません。

 ただ、集患について考えていくと、これはII群になれる病院と、なれない病院の違いかもしれませんが、自病院の強みを正確に理解しているというところが、最も重要なのではないでしょうか。

 「うちは市民病院だから」「うちは総合病院だから」などと考えるかもしれませんが、自分たちで「ここがうちの強み」というものがなければ、患者はもちろん、連携先の病院やクリニックにも分かってもらえるはずがない。おそらく、いくら連携室が頑張って「うちに送ってください」と言ったところで、相手にされないでしょう。

 例えば、最初からII群のF病院(民間、300床台)には、昔から明確に自院の強みと言える3本の矢があります。具体的には、救急、循環器、整形。ほかはお世辞にも強いとは言えない状況なのですが、それでもこの3本の矢は国内有数レベル。院内のスタッフも近隣の医療機関も患者もその強みが分かっているから、患者は集まってくるし、次から次へと回さなければならないので、必然的に在院日数も短縮するという流れになるわけです。

塚越:先ほども述べましたが、地域の中で自病院がどのような機能を持った病院なのかが周知徹底されているということは、集患を語る上での本質なのです。そしてその最も分かりやすい証が、II群ということなのです。それはただII群病院であるということを言っているのではなく、II群というツールを使いこなし、集患までを踏まえた戦略の中で、II群昇格ないしは維持のための病床管理が徹底されているということの証という意味です。

連載◆鼎談 II群請負人
(1)最重要はトップの強い意志
(2)院内を一つにする最強ツール
(3)強みが不明確な病院に患者はこない
(4)迷ったら針路は「医療の価値」向上
(5)入院医療の外来化、制度の遅れにどう対処(11/28公開予定)
(6)診療密度の「境界線病院」の未来(12/5公開予定)
(7)やりたい医療から、求められる医療へ(12/12公開予定)
(8)急性期医療の本質が、そこにある(12/19公開予定)

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。



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