居宅療養管理指導でも「単一建物居住者」の人数で評価へ―介護給付費分科会(3)



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 診療報酬の在宅時医学総合管理料などと整合性を取るため、介護保険の居宅療養管理指導費の報酬体系を、「単一建物居住者」の人数(その事業所がその月に訪問診療した利用者が、同じ建物に何人住んでいるか)に応じて3段階で評価する仕組みに見直してはどうか―。

 11月8日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で厚生労働省は、こうした見直し案も示しました(関連記事はこちらこちら)。在宅医療の診療報酬での評価体系が、2016年度の前回改定で大幅に見直されたことから、18年度の診療報酬・介護報酬の同時改定において「平仄を併せる」提案だと言えます。また厚労省は、離島や中山間地域などでの居宅療養管理指導を、訪問介護などと同様に加算で評価する方向性も示しました。

11月8日に開催された、「第150回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月8日に開催された、「第150回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

医師以外の指導も「単一建物居住者」の人数で評価

 医師による訪問診療は、診療報酬と介護報酬でそれぞれ評価されます。大まかに言えば、医師による定期的な訪問診療は診療報酬の在宅患者訪問診療料、医学的管理は診療報酬の在宅時医学総合管理料(患者の住まいが有料老人ホームなどなら施設入居時等医学総合管理料)で評価されます。一方、そうした医学的管理に基づくケアマネジャーへの情報提供などの評価は、介護報酬の居宅療養管理指導費で行われます。

 患者が在宅時医学総合管理料を算定しているケースでは居宅療養管理指導費(II)(262―292単位)、そうでない場合は居宅療養管理指導費(I)(452―503単位)を算定します。単位数に幅があるのは、利用者が「同一建物居住者」かどうかで算定できる単位数が異なるためです。

 同じ集合住宅に住むAさんとBさんを医師が訪問するケースを例に挙ると、二人を同一日に訪問して指導を行った場合には、AさんとBさんは「同一建物居住者」と見なされます。一方、AさんとBさんを別の日に訪問した場合には、どちらも「同一建物居住者」とは見なされません。

 Aさん・Bさんを同一日に訪問し、「同一建物居住者」と扱われた場合には、算定する居宅療養管理指導費(II)(医師が行う場合)はそれぞれ262単位にとどまります。これに対し、Aさん・Bさんを別に日に訪問した場合には「同一建物居住者」以外と扱われ、それぞれ292単位を算定できます。なお、同一日に同一建物の複数患者を訪問した場合の単位数が低いのは、移動コストなどが小さく済むことに由来します。

 在宅療養患者に対する総合的な医学管理の評価に当たる診療報酬の在宅時医学総合管理料なども、かつては居宅療養管理指導費と同様に「同一建物居住者」の場合の点数が低く設定されていました。しかし、高い点数を算定するために、あえて訪問日をずらすケースが少なからず見られました。厚労省は「診療報酬の設定方法が、かえって非効率な診療を招いている」と反省し、2016年度診療報酬改定で「同じ建物に、暦月1か月当たりに何人の患者に訪問しているか」(単一建物診療患者)に着目した評価体系を導入しています(在宅患者訪問診療料の報酬は引き続き「同一建物居住者」かどうかで設定)。

診療報酬の在宅時医学総合管理料などは、2016年度の前回改定で「単一建物診療患者」の人数に応じた評価体系に見直された
診療報酬の在宅時医学総合管理料などは、2016年度の前回改定で「単一建物診療患者」に着目した評価体系に見直された
 「単一建物診療患者」は、在宅時医学総合管理料などを算定する患者が、同じ建物に何人住んでいるかを表します。従前の「同一建物患者」(同一日に同じ建物の複数患者に訪問したか)では、同じ建物に住むAさんとBさんを同じ日に訪問すれば「2人」(低い診療報酬)、別々の日に訪問すればそれぞれ「1人」(高い診療報酬)と扱われましたが、「単一建物診療患者」(暦月1か月当たりに、同じ建物に居住する何人の患者を訪問しているか)では、別々の日にAさんとBさんを訪問した場合でも、同じ日に訪問した場合でも、同様に「2人」と扱われ、算定できる診療報酬は同額です。具体的には、在宅時医学総合管理料の点数は「1人」「2―9人」「10人以上」の3段階で、「単一建物診療患者」の人数が多いほど点数が低くなります。

 8日の介護給付費分科会では、診療報酬と平仄を合わせる形で、居宅療養管理指導も「単一建物居住者」の人数に応じて評価してはどうかとの提案が行われました。2018年度介護報酬改定で導入されれば、暦月1か月の間に同一建物の居住する何人の利用者(「1人」「2-9人」「10人以上」)を訪問したかで、単位数が決まることになります。

 また同省は、医師による指導だけでなく、「歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士等の居宅療養管理指導」も同様の評価体系とする考えを示しています。

 同省の見直し案に対して佐藤保委員(日本歯科医師会副会長)は、評価体系が今よりも複雑になれば、「規模小さな歯科診療所」などの業務負担が重くなるかもしれないと、慎重な姿勢を示しました。一方、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は賛成しました。

居宅療養管理指導も離島・中山間地域に加算

 また厚労省は8日の会合で、離島や中山間地域での居宅療養管理指導に対する評価を新設する方針を示しました。

 具体的には、▼事業所が離島や中山間地域などにある場合の加算(離島などなら所定単位数の15%、中山間地域などなら同10%)▼離島や中山間地域などに住む利用者にサービスを提供する場合の加算(同5%)―の新設を提案しています。こうした加算は、訪問看護費や訪問介護費などには既に導入されています。

 ただし、訪問看護費などの現行の評価では、事業所が中山間地域などにあって10%加算されるのは、その事業所が小規模(1か月当たりの「延べ訪問回数」が一定以下)の場合のみです。また、利用者が離島などに住んでいる場合の5%加算は、事業所の「通常の事業の実施地域」を越えてサービスを提供する場合だけ算定します。

 このため、居宅療養管理指導費の新たな加算にも、「延べ訪問回数」などの要件が設定される見通しです。

 ちなみに、8日の会合で厚労省は、▼離島などにある事業所の加算(所定単位数の15%)や、中山間地域などにある小規模事業所の加算(同10%)を、訪問リハビリテーションに導入▼離島や中山間地域などに住む利用者にサービスを提供する場合の加算(同5%)を看護小規模多機能型居宅介護に導入―することも提案しています。

看護職員による居宅療養管理指導は廃止

 そのほか会合で厚労省は、看護職員による居宅療養管理指導(医師の判断に基づいて実施される療養上の相談・支援など)について、算定実績がほとんどないため、介護報酬での評価を止めてはどうかとも提案しています(廃止までに一定期間の経過措置を設定)。

居宅療養管理指導費を算定できる回数や期間は職種によって異なる
居宅療養管理指導費を算定できる回数や期間は職種によって異なる
 算定実績が少ない主な理由は、「介護認定に伴い作成された居宅サービス計画に基づく居宅サービスの提供を開始した日から6か月間」に「2回まで」しか算定できない、という「期間」と「回数」の厳しい制限があることだと考えられます(医師らが指導する場合には同様の制限がない)。

 厚労省の案に対して齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、「算定実績がないので(廃止は)仕方ないが、使っている所もある」と指摘。少なくとも1年間は経過期間を設けるよう求めました。

 

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