介護保険の訪問看護、ターミナルケアの実績さらに評価へ―介護給付費分科会(1)



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 2018年度介護報酬改定で、訪問看護費の看護体制強化加算に新たな区分を設け、ターミナルケアの実績が一定以上ある事業所をより高く評価してはどうか―。

 11月8日に社会保障審議会・介護給付費分科会が開いた会合で、厚生労働省がこのような案を示しました。訪問看護費をめぐっては、▼複数名訪問看護加算に新区分を設けて、看護補助者と同行しての訪問を評価する▼利用者が要支援者か要介護者かで基本サービス費に差を設ける―といった見直し案も示しています。

 この日の会合では訪問看護のほか、通所介護や訪問・通所リハビリテーション、居宅療養管理指導などがテーマでした。それぞれのポイントは改めてお伝えします。

11月8日に開催された、「第150回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月8日に開催された、「第150回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

「年5件以上」のケア加算算定を評価か

 訪問看護費の看護体制強化加算(1か月につき300単位)は、中重度の要介護者の医療ニーズに対応できる事業所を評価すべく、2015年度介護報酬改定で新設されました。

 その算定要件は、▼緊急時訪問看護加算を算定した利用者が5割以上▼特別管理加算を算定した利用者が3割以上▼ターミナルケア加算の算定者が1人以上―で、実績を算出する期間はターミナルケア加算が1年間で、残りの2つは3か月間と規定されています。

 8日の会合で厚労省は、「看取り期」における対応をより充実させるべきではないかと指摘し、ターミナルケア加算の算定者数が特に多い事業所を、より高く評価する方針を示しました。

 具体的な算定要件(ターミナルケア加算を何人以上に算定していたら評価するか)は、今後の議論に委ねられますが、看護体制強化加算を届け出る事業所の約43%で、ターミナルケア加算の算定者数(2014年10月―2015年9月)が5件以上だったことから、これを目安に議論が進むと考えられます。

看護体制強化加算の「届出有り」の事業所の約43%で、ターミナルケア加算の算定者数が年5件以上だった
看護体制強化加算の「届出有り」の事業所の約43%で、ターミナルケア加算の算定者数が年5件以上だった
 また同省では看護体制強化加算の算定要件のうち、緊急時訪問看護加算などの算定実績を算出する期間を、現行の「3か月間」より長く見直す方針です。これにより歴月の実績変動の影響が抑えられ、要件を満たしやすくなると考えられます。

 ちなみにターミナルケア加算をめぐって同省は、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の内容に沿った取り組みを行った上で算定するルールを明示する案も提示しています。

 このガイドラインは、▼医療従事者が、適切な情報の提供と説明を患者に行う▼それに基づいて、患者が医療従事者と話し合う▼患者本人による決定を基本とした上で、人生の最終段階における医療を進める―といった原則やプロセスを示すものです。

「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」方針決定の流れ(イメージ図)
「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」方針決定の流れ(イメージ図)
 厚労省側は、こうした取り組みを行うのは当然だという認識で、ガイドラインに沿った取り組みを加算などで新たに評価する方針ではないようです。しかし8日の会合では鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、そうした取り組みで把握した患者の意向などを地域の医療・介護関係者の間で共有すべきで、その労力に報酬を付けるべきだと主張しました。

医療保険とそろえ、無資格者の同行を加算で評価

 会合で厚労省は、複数名訪問加算の区分を新設し、訪問看護に看護補助者が同行するケースを評価する案も示しました。

 この加算は、看護師等(保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が複数人で訪問する場合に算定できます(30分未満なら254単位、30分以上なら402単位)。このため、こうした資格を持たない看護補助者が同行しても、今は加算を算定できません。その一方で、医療保険の訪問看護療養費には、看護補助者の同行を評価する加算(複数名訪問看護加算)があり、同様の評価を介護報酬でも行うことになりそうです。

医療保険の複数名訪問看護加算の金額は、同行者によって異なる
医療保険の複数名訪問看護加算の金額は、同行者によって異なる
 また医療保険では、「訪問看護を担当する看護師の指導の下に、療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)の他、居室内の環境整備、看護用品及び消耗品の整理整頓等といった看護業務の補助を行う者」を看護補助者として想定しており、介護保険でも同じになる見通しです。

 訪問看護療養費の複数名訪問看護加算の金額(1週間当たり)は、看護職員の訪問看護に同行するのが看護師や理学療法士なら4300円、准看護師なら3800円、看護補助者なら3000円と分かれています。介護保険の訪問看護にも看護補助者同行加算が創設されるとして、その場合の単位数は、看護師等が同行する場合と比べて低く設定されるかもしれません。

要支援者なら基本サービス費低く?

 そのほか厚労省は訪問看護について、▼利用者が要支援者か要介護者かで基本サービス費に差を付ける▼看護職員の代わりに理学療法士等が訪問する場合の評価を見直す▼訪問看護が早朝・夜間か深夜の場合の加算を、2回目以降の緊急時訪問で算定できる利用者を広げる―といった案も示しています。

 このうち、要支援者か要介護者かで基本サービス費に差を設ける案は、両者への訪問看護の実施内容に異なる傾向があることを踏まえたものです。具体的には、「家族等の介護指導・支援」「身体の清潔保持の管理・援助」「排泄の援助」「認知症・精神障害に対するケア」などの実施割合が、要支援者で相対的に低いことが分かっており、基本サービス費は今後、要支援者に提供するケースの方が低く設定されると考えられます。

訪問看護の内容には、要介護者か要支援者かで差があるものもある
訪問看護の内容には、要介護者か要支援者かで差があるものもある

理学療法士等の訪問、不適切なケースに対応

 また、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士による訪問は現在、「看護業務の一環としてのリハビリテーション」が中心の訪問看護に限り、看護職員に代わって行うものいう位置付けで評価されています。しかし、看護職員との間でリハビリテーションの方針を共有していない不適切なケースがあることが分かっています。

訪問職員と理学療法士等がしっかり連携していないケースもあった
訪問職員と理学療法士等がしっかり連携していないケースもあった
 そこで同省では、▼利用者の状況や実施した訪問看護の情報を両者が共有し、訪問看護計画書と訪問看護報告書を連携して作成する▼看護職員が定期的に訪問することで、利用者の状態を適切に評価する▼理学療法士等による訪問が看護職員の代わりであることを利用者側に説明し、同意を得る―といったルールを設けた上で評価を見直すとしています。

診療所が「看多機」目指しやすいルールに

 8日の会合で厚労省は、看護小規模多機能型居宅介護(看多機)に関する見直し案も示しました。看多機は、「通い」「訪問」「泊まり」のサービスを利用者に合わせて提供する小規模多機能型居宅介護に、訪問看護を組み合わせた複合型のサービスで、医療ニーズが高い人の在宅療養を支える役割が期待されています。

 しかし、事業所数が伸び悩んでおり、全国357施設(今年3月末現在)にとどまることから同省は、▼診療所からの参入を促すために基準を緩和させる▼人員基準が緩いサテライト事業所の設置を認める―といった見直し案を示しました。

 このうち、診療所からの新規参入を促す施策について具体的には、▼看多機の利用者専用の宿泊室として「1室」を確保すれば、残りを病床として活用できるルールにする▼個人で開設する診療所でも看多機の指定を受けられるルールにする(現在は法人でないと指定を申請できない)―を挙げています。

 「1室」は個室でなくても構いませんが、利用者のプライバシーを確保できる構造や、一定以上の面積などが求められます。これについて鈴木委員は、4床室であっても認められやすくする配慮を要望しています。

事業開始時支援加算は廃止か

 厚労省は、看多機を増やすための方策を示す一方で、事業開始時支援加算(事業開始後1年未満で、登録する利用者数が一定の基準に満たない事業所のサービス費に月500単位を加算)を、来年3月末までで予定通り廃止する方針です。

 この加算の廃止に鈴木委員は賛成しましたが、齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、看多機の事業所数がまだ少ないことから延長を求めました。

 そのほか看多機について厚労省は、▼訪問看護体制強化加算の名称を看護体制強化加算に改めた上で、ターミナルケアの実施と介護職員等による喀痰吸引等の実施体制を新たに評価▼訪問(看護サービス以外)の担当者を一定程度配置し、訪問実績(1カ月当たりの延べ回数)が一定以上の事業所を加算で評価▼中山間地域等に住む利用者へのサービス提供を加算で評価―する案も示しています。

 

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