介護のエビデンス構築に向けたデータ提出、当面は事業所を限定―厚労省・科学的介護検討会



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 科学的に効果が裏付けられた介護サービスの方法論を確立するためのデータ収集では、データの提出を求める事業所の範囲を当面限定すべきではないか―。

 厚生労働省は、11月7日に開催した「科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」の会合でこのような案を示しました。データ収集は、試行期間を経て2020年度から本格化させる予定ですが、どのようなデータを集めるかなど「データベースの初期仕様」を年度内に確定させなければいけません。データベースの構築や、試行的なデータ収集にも時間を割く必要があるためです。

 7日の会合では、このスケジュールを守るため、「初期仕様に盛り込む項目を優先して検討する」「項目を固める際、介護サービスを行う事業所側の負担を増やさない」といった大前提を再確認しました。また、利用者のアセスメント(課題分析)などのデータ収集方法も議論しています(関連記事はこちらこちら)。

11月7日に開催された、「第3回 科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」
11月7日に開催された、「第3回 科学的裏付けに基づく介護に係る検討会」

まず「施設系サービス」などからデータ収集

 「○○状態の患者に対して介護サービスの●●を提供すると、一般論として効果が上がりやすい」といった科学的な裏付けがあれば、介護サービスを効率的かつ効果的に提供しやすくなります。科学的に裏付けられた方法を実践している事業所は、利用者やケアマネジャーから選ばれやすくなるでしょうし、効果があるサービスの介護報酬が高く設定されても、利用者側は納得しやすいはずです。

 しかし実際には、そうした裏付けのためのデータ分析はあまり進んでいません。そこで厚労省では、介護領域に関する既存のデータベースを補完するデータベース(CHASE)を20年度に本格稼働させ、科学的な裏付けに必要なデータを集める方針です。

 既存の介護保険総合データベース(介護DB)では、介護サービスに関するデータのうち要介護認定情報や介護保険レセプト情報を格納しています。また、通所・訪問リハビリテーションの質を評価する厚労省の事業(VISIT)で、リハビリテーション計画書などの情報の収集が進んでいます。

 7日の会合で厚労省は、CHASEに盛り込むデータ測定項目について、▼既に電子化されている▼現場の負担を増やさずに収集できる―といったものを選ぶ必要性を改めて挙げ、「紙媒体に記録する事業所が多いデータなどは除外すべき」だとの考えを明確にしました。

 さらに、全事業所からデータを集めることにはこだわらず、データ収集の労力が比較的少ない、一部の(先進的な)事業所のデータ収集から始めることも視野に入れてはどうかと呼び掛けました。例えば、「施設系サービス」「(特定の情報を)既に電子的に取得している事業所」などが考えられます。データの電子化の状況にばらつきがあるという事業所側の事情に配慮したもので、こうした方向性に強く反対する構成員はいませんでした。

導入コストや職員の抵抗感がある中で電子化をどう進めるか

 とはいえ、介護サービスの効果を科学的に裏付けるのに必要なデータが、既に電子化されているものばかりとは限りません。そこで厚労省は、将来的には収集すべきでもCHASEの初期仕様には入れづらい項目などを「中長期の課題」と位置付け、来年度以降に検討する方向性も改めて示しています。

 ただし、そうしたデータを収集するためには、紙媒体で情報を記録している事業所に電子化を促していく必要があります。7日の会合では、電子化が進まない理由について意見交換しました。

 オブザーバーとして参加する全国老人保健施設協会の代表者や、構成員が挙げたのは、電子化に必要なシステムの導入コストや、特に高齢の職員が持つ抵抗感などです。そうした障壁をどう取り除くかは、今後の大きな課題だと言えます。

アセスメント情報は別々の様式で提出させて紐付け

 7日の会合では、利用者のアセスメント情報をどう収集すべきかも論点となりました。アセスメント情報は、健康状態や日常生活動作(ADL)の機能などの項目で構成されますが、その評価方法として、さまざまな様式が普及しています。

 例えば、上着の着脱を利用者が自力でどの程度できるかを、居宅介護支援事業所の4割近くが使う「居宅サービス計画ガイドライン方式」では4パターン(介助されていない・見守り等・一部介助・全介助)で評価します。

 一方、介護老人福祉施設の半数近くが用いる「包括的自立支援プログラム方式」も評価は4パターンですが、項目(自立・見守り・一部介助・全介助)は少し異なります。さらに、介護老人保健施設の1割程度が使う「MDS方式・MDS-HC方式」は8パターンで評価しています。

 様式がばらばらのままでは、データ分析に使いやすいとは言えません。しかし、特定の様式にそろえることになれば、切り替えが事業所の負担になると考えられます。

 こうした状況を踏まえて厚労省では、別々の様式で取得されたアセスメント情報を紐付ける方法を、調査研究事業として検討しています。

 この事業で活用する方法では、アセスメント情報の各項目を、原則2パターンに分類します。例えば上着の着脱に関する情報なら「自分で行っている」か「自分で行っていない」です。

 そして、介助が要らない側から数えて、「MDS方式・MDS-HC方式」なら8パターン中3パターン目まで、「居宅サービス計画ガイドライン方式」や「包括的自立支援プログラム方式」なら4パターン中2パターン目までを、「自分で行っている」と見なすことにすれば、違う様式で取得された情報を同じ尺度で比較できるというわけです。

 この研究の結論はまだ出ていませんが、7日の会合で厚労省は、各事業所が使っている様式でデータを集めた上で、こうした方法で紐付けて分析に活用することの是非を論点に挙げ、これに対しても、強い反対意見は構成員から出ませんでした。

 ここで、「アセスメント様式が特定のものに統一されるのか」との疑問も湧きます。しかし厚労省側は少なくとも、データ収集のためにアセスメント様式を変えさせるべきではないと考えています。いわば「データベース構築のためのコンバータシステム」を構築するにとどめることになり、現場に業務変更を強いるものではない点に留意が必要です。

 

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