集合住宅への訪問介護など、減算対象を拡大へ―介護給付費分科会(2)



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 同一敷地内の建物や、利用者数が一定数以上住んでいる建物に訪問介護を提供する場合に単位数を減算するルールを、一般集合住宅にも適用してはどうか―。

 11月1日の社会保障審議会・介護給付費分科会の会合で、厚生労働省がこうした案を提示しました。このルールは、所定単位数の1割を減算するものですが、同一敷地内かつ利用者数が一定以上の場合により厳しく減算する方向性も示しています。

11月1日に開催された、「第149回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月1日に開催された、「第149回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

有料ホームへの訪問は利用者数10人でも減算すべきか

 1日の会合で厚労省は、▼訪問介護▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護▼小規模多機能型居宅介護―のそれぞれで、報酬・基準の見直し案を示しました(関連記事はこちら

 訪問介護の報酬には現在、▼事業所と同一敷地内または隣接する敷地内に所在する▼建物に居住する利用者数が1カ月あたり20人以上いる―のどちらかを満たす建物の居住者にサービスを提供すると、所定単位数が1割減るルールがあります。

 これが適用されるのは、建物が有料老人ホームか養護老人ホーム、軽費老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の場合のみですが、厚労省は会合で、「有料老人ホーム等以外の建物も対象としてはどうか」と提案しました。

「○○%減算」の数値が18年度介護報酬改定の焦点の一つとなる
「○○%減算」の数値が18年度介護報酬改定の焦点の一つとなる
 その理由について同省は、サービスを提供する建物が同一敷地内にある場合などに、建物が一般集合住宅であっても、次の訪問先までの移動時間が短くて済むことなどを挙げています。

 さらに同省は、建物が同一敷地内などにある上、一定数以上の利用者が住んでいる場合について、サービスを特に効率的に提供できることから、より厳しく減算する必要性を示唆しました。また、訪問先が有料老人ホームなどの場合に、居住する利用者数が「10人以上」なら減算の対象とする方向性も示しています。

 減算対象の拡大には複数の委員が賛意を示しましたが、建物の種類によって利用者数の基準を「10人以上」と「20人以上」とに分けることには、合理的な理由がないといった意見が相次ぎました。

 また、同一敷地内かつ利用者が一定以上住んでいる場合の減算率は、具体的な数値の案が出ていません。2018年度介護報酬改定に向けては、そうしたケースの減算率をどれだけ高く設定するかと、居住する利用者が10人以上20人未満の有料老人ホームなどへの訪問を、減算対象にすべきかが焦点となりそうです。

 ちなみに同省は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を同一敷地内の建物などの居住者に提供する場合の減算(1カ月につき600単位)についても、有料老人ホームの居住者などに適用対象を限るのをやめ、一般集合住宅に住む場合などにまで広げる案を示しています。

生活機能向上連携加算、専門職の訪問なしでも算定可に

 1日の会合で同省は、訪問介護の生活機能向上連携加算(1カ月につき100単位)の算定要件を2段階にして、算定する事業者を増やす案も提示しました。

 生活機能向上連携加算の現行の算定要件は、▼訪問・通所リハビリテーション事業所の理学療法士らの利用者宅への訪問に、サービス提供責任者(サ責)が同行するなどして、利用者の身体状況などの評価(生活機能アセスメント)を共同して行う▼生活機能の向上を目的とした訪問介護計画をサ責が作成する―ことなどです。

訪問介護の生活機能向上連携加算の現行要件では、専門職の利用者宅への訪問が必須となっている
訪問介護の生活機能向上連携加算の現行要件では、専門職の利用者宅への訪問が必須となっている
 厚労省の見直し案では、こうした要件を満たすケースの報酬を今よりも引き上げます。その上で、利用者宅に訪問する専門職の要件を緩めて、リハビリテーションを実施している医療提供施設の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師でも算定できるルールに見直します。

 さらに、そうした専門職が利用者宅を訪問しなくても算定できる区分を新設します。その報酬は、専門職が訪問するケースと比べ低く設定しますが、利用者の状態を、動画などで専門職が把握して助言を行い、それに基づく訪問介護計画をサ責が作成したり、内容を変更したりした場合でも算定できるルールにします。

 専門職の訪問なしに算定できる区分を設けるのは、専門職が利用者宅を訪問する機会がないことなどが、この加算を算定しない理由だと指摘されているためです。この加算を取得するケースは156件(今年4月審査分)にとどまっており、算定要件を緩める同省の案には、利用者の自立支援などにつながる訪問介護を推進する狙いがあるようです。

 同省は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と小規模多機能型居宅介護にも、生活機能向上連携加算を新設することを提案しています。それぞれのサービスで作成する計画の名称などは違いますが、専門職が訪問する場合としない場合の2段階とするのは、訪問介護の加算の見直し案と同様です。

サ責の任用要件から初任者研修課程修了者など廃止へ

 1日の会合で厚労省は、サ責の任用要件から「初任者研修課程修了者」と「旧2級課程修了者」を廃止する案も示しました。これらの修了者は現在、サ責として配置できるものの、その事業所では所定単位数が3割減算されています。同省は、そうしたケースに限って1年間の経過措置を設けるとしています。

 さらに、サ責の役割を明確にする案も示しました。具体的には、▼訪問介護の現場での利用者の口腔管理や服薬管理の状態などに係る気付きをケアマネジャーらに情報共有する▼訪問介護の提供時間を記録するとともに、それがプラン上の標準時間と著しく乖離する場合にはケアマネジャーに連絡する―ことなどです。いずれも、介護サービスの提供をより適切にするためのものですが、サ責の業務負担が重くなり過ぎることに懸念を示す委員もいました。

小多機と通リハの併用認める案には慎重論も

 そのほか同省は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護について、▼「随時訪問サービスを行う訪問介護員」や、指定訪問介護事業所、指定夜間対応型訪問介護事業所以外の「同一敷地内の事業所の職員」とオペレーターとの兼務▼事業所間の連携が図られている場合のオペレーターの集約―を、それぞれ日中にも認める人員基準の緩和を提案しました。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員配置は、夜間などに限れば今も柔軟だ
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の人員配置は、夜間などに限れば今も柔軟だ
 また小規模多機能型居宅介護(小多機)については、「通いサービス」を利用しない日の通所リハビリテーションの併用を、短時間で行うもの(所要時間3時間まで)に限って認める案を示しました。

 利用者となじみの関係を築きながら「通い」「宿泊」「訪問」のサービスを組み合わせて提供するのが小多機ですが、現在も訪問看護や訪問リハビリテーションなどの併用が認められています。ただ、通所リハビリテーションの併用を認める同省の提案には、「理念と合わない」(鈴木邦彦・日本医師会常任理事)などと慎重姿勢を示す委員もいました。

 

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