生活援助の介護人材育てるも、報酬下げの可能性―介護給付費分科会(1)



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 生活援助中心型の訪問介護の従事者を育てる研修(新研修)を創設し、介護人材確保の裾野を広げてはどうかー。

 社会保障審議会の介護給付費分科会が11月1日に開いた会合では、厚生労働省のこうした提案をめぐって議論しました。新研修の創設に強く反対する委員はいませんでしたが、生活援助中心型サービスの報酬について同省が、▼身体介護中心型サービスと比べてより低くする▼提供するのが新研修の修了者でも介護福祉士等でも同じにする―といった案を併せて示したことから、介護人材確保の実効性を疑う意見が相次ぎました。

11月1日に開催された、「第149回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
11月1日に開催された、「第149回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

短い研修を来年4月に創設し、介護業界への参入促す

 訪問介護には、身体介護(入浴の介助など)中心のサービスと、生活援助(調理・洗濯・掃除などの家事)中心のサービスがあり、いずれも、介護を要する高齢者らが在宅療養するのに欠かせないとされています。

 人口ボリュームが大きい団塊世代が75歳以上となる2025年には、250万人を超える介護人材が必要だと推計されます。現状(15年時点)は180万人程度で、今のペースで増えていっても40万人近く不足すると見込まれ、このギャップを埋める方策が強く求められています。

 こうした状況を踏まえ、1日の会合で厚労省は、生活援助中心型サービスのみを提供できる介護人材のための研修を設けることを提案しました。

 このサービスの提供者は現在、介護職員初任者研修など130時間以上の研修を受けています。これに対して新研修では、生活援助中心型サービスに必要な知識などに内容を絞ることで、研修時間を短縮します。介護業界への新規参入を促すのが同省の狙いで、来年4月の研修スタートを目指しています。新研修の創設に、委員から強い反対はありませんでした。

新研修者の給与低いと参入促せない?

 同省はまた、掃除などでも身体介護と見なすケースがあることを明確化させた上で、身体介護と生活援助の報酬にめりはりを利かせる案を示しました。利用者の自立支援につながる身体介護の報酬を相対的に高くするもので、厚労省側は明言しませんでしたが、生活援助の報酬引き下げをにらんでいると考えられます。

 これに対して本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)からは、生活援助中心型サービスの算定回数の制限など、より厳しい提案もありました。

 生活援助中心型サービスをめぐっては、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が月内にもまとめる建議にも、「1日に算定可能な報酬の上限設定」を含めた厳しい見直し案が盛り込まれる見通しです。こうした案が浮上するのは、要介護度が低い利用者の一部が、生活援助中心型サービスを月100回以上利用しているためで、不適切な利用を疑う向きもあります。

財政制度等審議会の分科会(10月25日開催)の資料を、参考資料として厚労省が示した
財政制度等審議会の分科会(10月25日開催)の資料を、参考資料として厚労省が示した
 ただ、その中には「服薬支援のために1日3回の訪問を行っている」といったケースがあると考えられ、1日の会合で田部井康夫委員(認知症の人と家族の会理事)は、個別の事情を深く分析しないままで回数制限などを行うことに対して反発しました。

 また齊藤秀樹委員(全国老人クラブ連合会常務理事)は、生活援助中心型サービスの報酬水準が下がれば、それを提供する人の給与も低くなり、新研修が人材確保につながらないのでは、と疑問を呈しました。

 2018年度の介護報酬改定の内容(引き下げや引き上げなど)には、改定率が強く関連するため、この日の会合で厚労省側は、生活援助中心型サービスの報酬引き下げや、算定回数の上限設定の可能性を否定しませんでした。もしマイナス改定が決まれば、生活援助中心型サービスの報酬引き下げなどが現実味を帯びます。

 このサービスの報酬引き下げは、新研修の修了者だけでなく、訪問介護を行う介護福祉士の給与水準にも大きな影響を及ぼす可能性があります。同省が、生活援助中心型サービスを新研修の修了者が提供しても、介護福祉士が提供しても報酬に差をつけない方針のためです。

 この方針には、複数の委員が慎重論を唱えましたが、18年度改定の注目点の一つとなりそうです。

新研修修了者のステップアップなども課題

 ちなみに、身体介護に当たると明確化させるサービスの具体案として同省は、「利用者と一緒に手助けしながら行う掃除(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)」を挙げました。

厚労省は、身体介護に当たるサービスの明確化も提案した
厚労省は、身体介護に当たるサービスの明確化も提案した
 実際には、掃除に限らず多くのサービスが身体介護に当たると明示されることになりそうですが、新研修の修了者は身体介護を原則提供できない見通しです。ただ、利用者が必要としているのに、このルールが壁となって提供できない、といったケースが生じれば問題です。

 そこで同省では、新研修の修了者がステップアップを目指しやすいように、研修科目の一部を介護職員初任者研修などと共通にして、共通科目を省略できるようにする方針です。

 さらに、「訪問介護事業者ごとに訪問介護員等を常勤換算方法で2.5以上置く」ことが基準の人員配置に、新研修の修了者を含めるルールにするものの、身体介護が提供できない、といった事態に陥らないような人員配置を事業者に求めるとしています。

 

 

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