ICT機器用いた遠隔診察、対象疾患や要件を絞って慎重に導入を―中医協総会(1)



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 ICT機器を用いた遠隔診療は、あくまで「対面診療を補完するもの」との前提に立って、対象疾患の限定や要件を設定し、慎重に導入を検討していく必要があるのではないか—。

 11月1日に開催された中央社会保険医療協議会の総会では、「外来医療その3」としてこういった議論が行われました。例えば、継続的な診療を受けている生活習慣病患者に対し、医師が適切に説明し、患者が同意した場合には、外来診療の一部を遠隔診療に置き換える、といった仕組みなどが考えられそうです(関連記事はこちらこちらこちら)。

11月1日に開催された、「第367回 中央社会保険医療協議会 総会」
11月1日に開催された、「第367回 中央社会保険医療協議会 総会」

遠隔診察の活用で、生活習慣病治療からの脱落を防止できないか

 遠隔診療と一口に言いますが、次の3つのタイプに分類でき、それぞれ一定の診療報酬による評価が行われています。

【医師 対 医師】
ICTを用いて画像の送受信を医師間で行い、専門的な知識の持つ医師の助言などを求める(遠隔画像診断を行った場合にE001【写真診断】、E004【基本的エックス線診断料】、E102【核医学診断】、E203【コンピューター断層診断】の診療報酬を算定できる、一定の施設基準を満たした医療機関でテレパソロジー(遠隔病理診断)を行った場合にN003【術中迅速病理組織標本作成】、N003-2【術中迅速細胞診】の診療報酬を算定できる)

【医師 対 患者】
▼ICTを用いた診察(ここでは遠隔診察):電話などによる再診が認められている(再診料の算定可能)

▼ICTを用いた遠隔モニタリング:在宅で体内植込式心臓ペースメーカーなどを使用している患者について、遠隔モニタリングを用いて療養上の必要な指導を行った場合には【遠隔モニタリング加算】を算定できる

現在の遠隔診療の整理
現在の遠隔診療の整理
 
昨今「テレビ電話システムなどを用いた診療」(離島などに限らず)の是非が議論されていますが、これも再診(電話再診)として実施すること自体は可能です。しかし、もともとは「患者や家族から電話での問い合わせがあった場合に、医師が電話で指導を行うことを評価する」ことを想定した規定であり、「テレビ電話システムなどのICTを用いた遠隔診察」にマッチした規定が求められていると言えます。
電話再診の規定
電話再診の規定
 
厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、ICTを用いた遠隔診察が「対面診療を補完するもの」であるとの大前提を踏まえた上で、診療報酬で評価する場合には▼一定程度の受診期間など▼事前の治療計画の作成と患者の同意など—を要件に据える必要があるのではないか、との見解を示しています。前者は、例えば数か月程度の対面診療によって、医師が患者の病状にとどまらず、「多忙で平日通院が困難になっていないか」などの生活環境なども十分に把握していることを求めるものです。

 
この点、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)や今村聡委員(日本医師会副会長)は、「遠隔診察は対面診療にとって代わるものではなく、あくまで補完に過ぎない」「遠隔診察が少なくとも対面診療と同等とのエビデンスを抜きに、遠隔診察を推進することは認められない」旨を強調した上で、迫井医療課長の示した要件設定やガイドライン構築などを引き続き検討していくことに同意しています。

また、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)らも「遠隔診察が対面診療の補完に過ぎない」点に賛同。迫井医療課長の示した点に関しても、▼悪化した場合の対面診療体制の確保▼算定回数制限―などを必要と、前向きに検討していくべきとの見解を強調しました。

 
さらに支払側委員は「生活習慣病患者などで病態が安定している場合には、定期的なモニタリングを遠隔診察で行い、重症化予防に活用してはどうか」との考えも示しました。例えば、「40代・50代の働き盛りにおいて軽度の生活習慣病リスクを抱えた人が、外来受診が難しく(通院負担)なり、リスクを抱えたまま治療を中断し、重症化してしまう」というケースがあります。定期的な対面診療が好ましいことは述べるまでもありませんが、通院負担によって治療から「脱落」してしまうよりは、遠隔診療によって治療を「継続」することが重症化予防にとって重要ではないか、と幸野委員らは述べているのです。

この考え方そのものに診療側委員は理解を示していますが、「保険者に義務付けられている特定保健指導(40歳以上のいわゆるメタボ健診・特定健康診査において、生活習慣改善などが必要と判断された加入者への指導)においてもICT活用は低調である。まずそこから進めるべきで、健診・指導を飛び越えて、治療の場面でICTを活用せよというのは順番が異なる。ICTを活用した遠隔診察の効果(エビデンス)を確認しながら進めるべきではないか」(今村委員)と慎重導入を求めています。

このように見ると、診療側と支払側とで意見にそれほどの隔たりはなく、支払側の後段の意見は「具体的な対象疾病や要件の限定案」と考えることもできそうです。別途、お伝えするように「生活習慣病の重症化予防」も重要論点の1つとなっており、慎重かつ前向きな検討が求められます。

なお診療側委員は「エビデンス」を求めており、例えば「これまで通勤の負担などで生活習慣病治療を中断してきたが、ICTを活用して自宅に居ながら一定の管理を受けられるのであれば治療を継続したい、と考える加入者が相当数いる」などといったデータなどが支払側から示されれば、議論は相当進むものと考えられ、支払側に期待したいところです。

遠隔モニタリングに基づく指導で、睡眠時無呼吸症候群の治療実施割合高まる

ICTを用いた遠隔モニタリングに関しては、迫井医療課長から「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者に対する持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)への活用によって一定の効果がでている」ことが紹介されました。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者では、持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が標準とされています。鼻に装着したマスクから空気を送りこむことで、気道に圧力をかけて正常呼吸を促す治療法です(毎日の実施が効果的)。厚生労働科学研究の結果からは、▼「3か月に1度の対面診療+毎月の遠隔モニタリング」を行った患者では、「毎月の対面診療」を行った患者と同程度の効果(CPAP4時間以上使用率)がある▼患者の多くは「対面診療は3か月に1度程度がよい」と考えている—ことが判明しており、遠隔モニタリングには適切な治療実施割合を高める効果があると言えるでしょう(遠隔モニタリングでCPAP使用率が低ければ、電話指導を実施する)。

「3か月に1度の対面診療+遠隔診療」では、「毎月の対面診療」と同程度のCPAP治療実施効果がある
「3か月に1度の対面診療+遠隔診療」では、「毎月の対面診療」と同程度のCPAP治療実施効果がある
睡眠時無呼吸症孤群患者の多くは、対面診療の頻度について「3か月に1度」を希望する声が多く、満足度も高い
睡眠時無呼吸症孤群患者の多くは、対面診療の頻度について「3か月に1度」を希望する声が多く、満足度も高い
 
そこで迫井課長は、遠隔モニタリングによる管理について評価の見直しを検討してはどうかと提案しています。例えば、現在【心臓ペースメーカー指導管理料】にのみ認められる【遠隔モニタリング加算】を、C107-2【在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料】にも設定し、対面診療を行わず、遠隔モニタリングに基づいてCPAP療法に関する指導を行った月にも【遠隔モニタリング加算】を算定できるようにする、ことなどが考えられるかもしれません。

この点、松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「治療実施割合ではなく、治療の効果を見て考えるべきではないか」と指摘し、さらなる検討を求めています。ただし治療実施割合は「治療成績の前段階」とも言え、治療実施割合の上昇がエビデンスにならないのであれば、それは「治療方法としての妥当性」そのものを疑うことにもつながり、今後、どういった検討が行われるのか注目する必要があります。

 

 

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