単月では病院経営は改善しているかに見えるが、2016年度改定後に赤字病院が増加―日病



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 2016年度診療報酬改定直後の2016年6月と、改定への対応が進んでいる2017年6月とで病院の経営状況を比較すると、100床当たりの収益の伸び(1.3%増)が費用の伸び(1.2%増)を上回り「改善している」ように見える。しかし年度単位で見れば、2014→15→16と赤字病院の割合は増加しており、病院経営は依然として厳しい—。

 こういった状況が、10月31日に開かれた日本病院会の定例記者会見で発表されました(2017年度の「診療報酬等に関する定期調査―中間集計結果(概要)―」)(関連記事はこちらこちら)。

10月31日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の万代恭嗣副会長/会長代行(写真向かって右)、島弘志副会長(写真中央)、永易卓診療報酬検討委員会委員(写真向かって左)
10月31日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の万代恭嗣副会長/会長代行(写真向かって右)、島弘志副会長(写真中央)、永易卓診療報酬検討委員会委員(写真向かって左)

単月で見ると病院経営は改善しているが、赤字基調そのものは変わらず

 この調査は日病の会員を対象に行われたもので、▼2016年度改定直後(2016年6月)と改定対応がかなり進んだ時点(2017年6月)の比較(単月比較)▼改定前年度(2015年)と改定年度(2016年度)の比較(年度比較)―などを行っています。

 まず単月比較の結果を見ると、次のように「病院経営は改善している」状況が浮かび上がってきますが、そもそもの「赤字基調」が転換されたわけではありません。

▼稼働100床当たり・1病院当たりのいずれにおいても、医業収益は1.3%増加、医業費用は1.2%増加し、赤字幅が減少した

▼診療収益の増減(対前年同月)を見ると、病院全体では58.5%、一般病院では57.7%、療養・ケアミクス病院では63.6%、精神科病院では57.1%が増加(増加病院のほうが減少病院よりも多い)。病床規模別に見ると、200-299床を除き、6割程度が前年よりも診療収益が増加している

▼患者の単価(1人1日当たり診療収入)は、入院では0.33%増(DPC病院では0.36%増、非DPC病院では0.24%増)、外来では1.49%増となった

 日病の診療報酬・病院経営検討委員会の永易卓委員(若草第一病院事務局長)は「2016年度診療報酬改定への対応が進み、各種加算の取得・算定が増えている状況が伺える」と述べ、各病院の経営努力の現れによるものと分析しました。事実、診療行為別の点数を見ると、入院料等(入院料や入院基本料等加算)が2016年6月から17年6月にかけて4.64%増加しており、この分析を裏付けています。

 しかし、▼7対1病院において重症患者割合(重症度、医療・看護必要度を満たす患者の割合、以下同)を見ると、4.7%が25%の基準値を満たしていない(200床以上では2.3%、200床未満では12.2%が満たせず)▼7対1病院の9.5%が何らかの施設基準を満たしていない(10対1などへの届出変更をした可能性大)―という結果も出ており、病院の経営努力も限界に近付いているようです。

 
また外来単価が大きく伸びている点について日病の島弘志副会長(社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院病院長)は「外来での抗がん剤使用が増加している」点に着目(診療行為別点数を見ると、外来の注射は2016年6月から17年6月にかけて9.63%も増加)。▽入院から外来へのシフト▽軽症外来から重症外来へのシフト―が進んでいることが分かります。

 
なお、医業費用の内訳を見ると、給与費(1.6%増)、委託費(1.6%増)となっており、「人件費増が病院経営を圧迫している」状況を再認識できます。

年度単位で見れば病院経営は悪化の一途を辿っている

 次に後者の年度比較(改定前の2015年度と、改定後の2016年度の比較)の結果を見ると、次のような状況が分かりました。

▼経常利益ベースで赤字病院の割合は55.2%(2015年度は50.3%)、医業利益ベースで赤字病院の割合は67.4%(同64.9%)となり、赤字割合は増加している

▼稼働100床当たり・1病院当たりのいずれにおいても、医業収益は0.8%増加、医業費用は1.1%増加し、赤字幅は拡大した

▼医業費用増加の主因は、給与費の増加(稼働100床当たり、1病院当たりのいずれにおいても2.2%増)である

 
 さらに2014年度→15年度→16年度と3年度連続で見ると(2度の診療報酬改定を含んでいる)、経常利益・医業利益のいずれを基礎としても「赤字病院の割合が増加している」ことが分かりました(経常利益ベースでは46.5%→48.0%→53.5%と増加、医業利益ベースでは63.0%→64.5%→66.3%と増加)。島副会長は「単月比較では経営状況が改善しているように見えるが、年度単位で比較すれば悪化傾向にあるのではないか」と見通しています。

 
 中央社会保険医療協議会には、近く、2018年度の次期診療報酬改定に向けて「医療経済実態調査」の結果も報告されます。病院を含めた医療機関の経営状況が、2016年度の前回改定以降にどう推移しているのか、改定率を占う上でも重要な資料となります。

 

 

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