要介護者への維持期リハ、介護保険への完全移行「1年延期」へ―中医協総会(2)



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 要介護被保険者に提供されている医療保険からの維持期リハビリについて、現在「2017年度末で介護保険リハビリへ完全移行」との目標が立てられているが、介護保険への移行促進策を十分に整えることを前提に「2018年度末」までに目標を延期してはどうか―。

10月25日に開催された中央社会保険医療協議会の総会では、こういった議論も行われました(関連記事はこちら)。

10月25日に開催された、「第365回 中央社会保険医療協議会 総会」
10月25日に開催された、「第365回 中央社会保険医療協議会 総会」

維持期リハの介護保険への完全移行延期、明確な反論なし

2006年度の前々回同時改定(診療報酬・介護報酬)において「要介護被保険者への維持期リハビリは介護保険へ移行する」方針が立てられました。医療保険リハビリの継続で状態の改善が見込めない要介護高齢者に対しては、介護保険からのリハビリ提供が適切、との考えに基づく方針です。しかし、▼介護保険のリハビリ提供事業所や内容の整備が不十分▼移行に向けた利用者の意識醸成が不十分―などの理由から移行の延期が続き、2016年度の前回診療報酬改定でも、完全移行に向けた積極的な議論が行われましたが、環境整備が不十分として「完全移行は2017年度末に延期」されました。

この2016年度改定の結論を踏まえれば、「2018年度から、要介護被保険者の維持期リハビリ(運動器、脳血管疾患等、廃用症候群)は医療保険から給付されない」ことになりそうですが、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、医療保険リハビリが必要な患者にリハビリ提供できるよう対応することなどを前提として「要介護被保険者の疾患別リハビリ料の算定に係る経過期間については、2018年度まで延長する」考えを提示しました。

この背景として、「患者の心理的抵抗」などのほか、迫井医療課長は次のような点も重視しているようです。

(1)医療機関が医療保険・介護保険の双方のリハビリを提供すれば、さらなる円滑な移行が期待できるが、双方の人員配置要件などを満たすことが難しく、介護保険リハビリを提供できない医療機関が一定程度ある(回復期リハビリ病棟を持つ医療機関では、約半数が介護保険の訪問・通所リハビリを未実施)

(2)疾患によっては、標準的算定日数を超えた医療保険のリハビリ提供が不可欠なものがある

医療保険と介護保険、リハビリ提供に求められる人員の共用などを探る

 前者の(1)は、個別対応が求められる医療保険リハビリと集団対応をとっている介護保険リハビリでは目的が異なるため、機能訓練室の面積基準やリハ専門職の配置要件などが異なる点に関するものです。とくにリハ専門職人員については「両方の基準を満たすためには、相当のコスト(人件費増)が必要なる」点などが大きなハードルになっていると考えられます。
迫井医療課長は、まずこのハードルをクリアすることが「介護保険への移行」に必要と考え、「施設基準のうち、職員配置や設備を共用できるよう取扱いを見直してはどうか」との提案を行っています。2018年度は診療報酬・介護報酬の同時改定となるため、両方向から同時にアプローチすることで、より実効性のある「運用改善」が行えるとの考えでしょう。

医療保険リハビリと介護保険リハビリの施設基準抜粋、相当程度異なっていることが分かる
医療保険リハビリと介護保険リハビリの施設基準抜粋、相当程度異なっていることが分かる
医療機関が、介護保険の通所リハビリを行わない理由の多くに「人員配置を満たせない」点がある
医療機関が、介護保険の通所リハビリを行わない理由の多くに「人員配置を満たせない」点がある
 
 リハビリの質を担保することを前提として、「兼務できる部分は兼務を認める」ことなどで医療保険・介護保険双方のリハビリ提供が可能となれば、円滑な移行が期待できます。ただし、診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)から「両者の施設基準を可能な限り揃えるくらいの見直しをしなければ解決しないのではないか」との指摘も出ており、どのような改善を検討するのか、今後の議論に注目が集まります。

肩関節腱板損傷など、標準的算定日数を超えるリハビリが必要な疾患がある

 後者の(2)では、例えば「外傷性の肩関節腱板損傷」では、2割超の患者が150日を超えるリハビリが必要というデータ(日本臨床整形外科学会調べ)があり、運動器リハビリ料の標準的算定日数(150日)よりも長期間のリハビリが必要な患者が一定程度いることが分かります。

外傷性の肩関節腱板損傷患者では、約2割の患者で標準的算定日数を超えるリハビリが必要となっている実態がある
外傷性の肩関節腱板損傷患者では、約2割の患者で標準的算定日数を超えるリハビリが必要となっている実態がある
 
 また、末梢神経損傷患者では神経再生にどうしても時間が必要となるため、リハビリの効果を得るのに300日程度の長期間治療が必要と指摘されます(同)。ここでも運動器リハビリ料の標準的算定日数よりも長期間のリハビリが必要な患者が多くなります。
末梢神経損傷患者では、神経再生に時間がかかるため、どうしてもリハビリ期間が長期になってしまう
末梢神経損傷患者では、神経再生に時間がかかるため、どうしてもリハビリ期間が長期になってしまう
 
医学的に標準的算定日数を超えるリハビリが必要な患者(高次脳機能障害や重度の頸髄損傷など)では、「算定上限」の対象から除外されますが、上記の疾患は「除外患者」に含まれていません。迫井医療課長は「標準的算定日数の上限の除外対象疾患に明確に位置づけられていないが、リハビリの算定上限からの除外が必要な疾患がある」のではないかとの問題意識を持っていると考えられます。診療側の猪口委員は「例示された疾患以外にも、算定除外が必要な疾患がある」と述べ、配慮を要望しています。
医学的に「標準的算定日数を超えたリハビリが必要」と判断される疾患などでは、算定上限から除外されている(上限日数を超えたリハビリが提供可能)
医学的に「標準的算定日数を超えたリハビリが必要」と判断される疾患などでは、算定上限から除外されている(上限日数を超えたリハビリが提供可能)
 
冒頭に述べた「要介護被保険者の維持期リハビリの介護保険への完全移行」延期(2018年度まで)は、このような「職員配置などの取扱い見直し」「算定上限から除外すべき疾患の見直し」などを前提に行われることになりますが、診療側委員はもちろん、支払側委員からも「明確な反対意見」は出されておらず、「完全移行の延期」は確定的と言えそうです。

ただし支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「ずるずると経過措置が延長されているように感じる。何をすれば完全移行が可能なのか、工程表を示すべきではないか」と注文を付けており、議論が荒れる可能性もあります。

【更新履歴】
完全移行を「2年」延期と記載しておりましたが、現在の「2018年3月31日まで」から「2019年3月31日まで」の「1年」延期です。お詫びしてい訂正させていただきます。記事は訂正済です。

 

 

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