回復期リハ病棟のアウトカム評価、次期改定で厳格化すべきか—中医協総会(1)



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 2016年度の前回診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟にアウトカム評価が導入されたが、これにより▽平均在院日数の短縮▽在宅復帰率の向上―という効果が見られている。2018年度の次期改定において、この評価を厳格化すべきか、それとも維持すべきか—

 10月25日に開催された中央社会保険医療協議会の総会では、こういった議論が行われました。回復期リハビリ病棟のほか、「要介護被保険者の維持期リハビリについて、どのように介護保険のリハビリへ円滑に移行させるか」という点も議題となっており、別稿でお伝えします。

10月25日に開催された、「第365回 中央社会保険医療協議会 総会」
10月25日に開催された、「第365回 中央社会保険医療協議会 総会」

アウトカム評価、支払側は厳格化、診療側は継続を要望

 冒頭に述べたように、回復期リハビリ病棟にはアウトカム評価が導入され、実績の伴わない病棟では疾患別リハビリ料の算定が6単位までに制限され(通常は9単位算定可能)、事実上、【リハビリテーション充実加算】の算定も不可能となっています。

2016年度改定で導入されたアウトカム評価の概要(その1)
2016年度改定で導入されたアウトカム評価の概要(その1)
 
 どのように実績を評価するかは複雑ですが、大雑把に言えば▼リハビリを1日平均6単位以上提供している▼3か月ごとに「直近6か月のFIM得点をベースにしたADL改善度合い」の実績(実績指数)を計算し、2回連続して27以下―の双方を満たす場合に「実績が伴わない」として、疾患別リハビリ料の算定制限などが行われます。2016年度改定論議の中で「効果の上がらないリハビリを頻繁に、漫然と提供している」回復期リハビリ病棟があることが分かったことから導入されたものです。
2016年度改定で導入されたアウトカム評価の概要(その2)
2016年度改定で導入されたアウトカム評価の概要(その2)
 
 厚生労働省で、このアウトカム評価導入後の状況を調査・分析したところ、▼平均在院日数の短縮▼在宅復帰率の向上▼重症者の積極的な受け入れ―といった成果が上がっていることが分かりました。
ADL改善実績の高い病棟では平均在院日数が短く、在宅復帰率も高い
ADL改善実績の高い病棟では平均在院日数が短く、在宅復帰率も高い
 
 一方、▼アウトカム評価の対象にならない病棟の中には、「実績指数が27を下回る」ところも散見される(対症病棟では、ほぼすべてが実績指数27をクリア)▼手厚いリハビリを提供する回復期リハビリ病棟1では実績指数27クリアが8割近いが、回復期リハビリ病棟2や3ではクリアの割合が低い(ただし、2・3では対象外病棟も多数ある)―という課題もあります。
アウトカム評価の対象とならない回復期リハビリ病棟の中には、ADL改善実績が低いところも散見される
アウトカム評価の対象とならない回復期リハビリ病棟の中には、ADL改善実績が低いところも散見される
 
この状況の中で、診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)や松本吉郎委員(日本医師会常任理事)らは「アウトカム評価導入の成果」に着目し、「一定の成果が上がっており、現状を維持すべき」と主張。

一方、支払側委員は、成果を認めた上で「課題」に着目。吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「回復期リハビリ病棟の入院料別に実績指数の基準値を設定すべきではないか」と提案し、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「実績指数の基準値27が低いのではないかと感じている」と述べ、厳格化を検討すべきと要望しています。厳格化の場合、例えば「実績指数の基準値の引き上げ」や「アウトカム評価対象病棟の拡大」などが思いつきます。

両側の意見は相当程度異なっており、今後の動向を見守る必要があります。

 
なおアウトカム評価導入の際に、常に懸案事項となる点に「クリームスキミング」があります。回復期リハビリ病棟で言えば、「ADL改善効果の出やすい患者を選別して受け入れ、改善効果の出にくい患者などを敬遠する」といった弊害が考えられます。厚労省はこの点についても調査分析しており、▼在棟期間が長くても、ADLは改善する▼疾患などの患者に状態によって一定のバラつきがあるものの、重複も相当程度ある▼実績指数と年齢・入棟時FIM(運動項目)との間に相関はない—ことが分かっています。つまり「在棟期間の長い患者でもADL改善効果があるので、『追い出し』などをする必要はない」「ADL改善効果の出にくい疾患・状態はなく、受け入れ拒否をする必要はない」「高齢者や入棟時にADLの低い患者であっても、リハビリによりADLは改善され、受け入れを拒否する必要はない」ことが明らかになったと言えます。

ADL改善効果と年齢・入棟時FIM得点に相関はない
ADL改善効果と年齢・入棟時FIM得点に相関はない

栄養状態改善でリハビリの効果も向上、回復期リハ病棟での評価も検討

リハビリの効果は、患者の栄養状態の影響を大きく受けることが分かっています。一方で、回復期リハビリ病棟の入棟患者を見ると「約65%で何らかの栄養障害がある」ことが、また管理栄養士配置の状態を見ると「回復期リハビリ病棟の22.2%で専従配置されているものの、実配置人数は平均で1病棟当たり0.3名にとどまっている」ことが分かりました。

回復期リハビリ病棟の5分の1で管理栄養士が配置されているが、実人数は1病棟当たり0.3名にとどまっている
回復期リハビリ病棟の5分の1で管理栄養士が配置されているが、実人数は1病棟当たり0.3名にとどまっている
 
前述のアウトカムを充実させるためには、「管理栄養士配置」を充実させることも重要と言え、2018年度の次期改定において「管理栄養士配置の評価」(加算など)が行われる可能性があります。

回復期リハ病棟から退院直後の患者に、リハ提供しやすい環境を構築

回復期リハビリ病棟では集中的なリハビリが提供されますが、退棟後のリハビリ継続も重要となります。しかし、ここには次の2つのハードルがあると指摘されます。

▼回復期リハビリ病棟に長期間入院すると、「発症から計算するリハビリ算定日数の上限」に到達して(あるいは到達に近くなって)しまい、退棟後のリハビリ提供について十分な診療報酬を算定できなくなっている

▼多くの回復期リハビリ病棟では、リハビリ専門職種が「専従」で配置されており、病棟外での業務が困難である

前者では、「回復期リハビリ病棟に入院中で、治療継続によって状態改善が見込める場合には、疾患別リハビリ料の算定上限を超えた算定が可能」という規定がありますが、退院後には、当然この規定が適用されなくなるため、かえって「退院後の疾患別リハビリ提供が難しくなる」という問題もあります。

また後者に関しては、回復期リハビリ病棟を実施している病院の約半数で訪問・通所リハビリが実施されていない(別稿の介護保険リハビリへの移行とも関連)といった点も手伝って、「回復期リハビリ病棟退棟から、介護保険の通所リハビリ開始までに14日以上かかるケースが18%ある」状態を招いています。退棟から通所リハ開始までの期間が開けば、FIM改善効果が上がりにくいというデータもあり、早期のリハビリ開始が求められます。

迫井医療課長は、この点を解消する必要があると考え、▼回復期リハビリ病棟退院後、早期の患者について疾患別リハビリ料の標準的算定日数上限の対象外とする▼回復期リハビリ病棟のリハビリ専門職専従の取扱いを見直し、退院後リハビリの提供しやすい環境を整える—ことを提案しました。例えば、加配されている専従のリハ専門職が病棟外業務に一定程度携われれば、相当の効果が出ると期待されます。この提案を診療側の猪口委員らは「大賛成」と歓迎、支払側委員も特段の異論を唱えておらず、2018年度改定での見直しが濃厚と言えそうです。

回復期リハビリ病棟1ではリハビリ専門職を加配しているところがほとんどで、2、3の病棟でも相当数が加配している
回復期リハビリ病棟1ではリハビリ専門職を加配しているところがほとんどで、2、3の病棟でも相当数が加配している

  

 

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