地域包括ケアを支援する病院の評価新設、資源不足地域での要件緩和を―地域医療守る病院協議会



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 2018年度の次期診療報酬改定において、地域包括ケアシステムを支援する【地域包括ケア支援病院】を新設するほか、医療資源の少ない地域において、例えば【感染防止対策加算】や【褥瘡ハイリスク患者ケア加算】などの人員要件などを緩和した報酬区分を設けるべきである—。

全国自治体病院協議会・全国厚生農業協同組合連合会・全国国民健康保険診療施設協議会・日本慢性期医療協会・地域包括ケア病棟協会の5団体で構成された『地域医療を守る病院協議会』が10月11日、こうした要望項目をまとめたことを公表しました(関連記事はこちら)。10月中にも厚生労働省保険局に要望書を提出する考えです。

地方では、要件を一部満たさない場合に「診療報酬の減額算定」など認めるべき

 協議会は、地域に拠点を置く5つの病院団体が「地域医療の維持・確保」を目指して設立したもので、▼2018年度診療報酬改定▼医師偏在対策▼働き方改革—などについて意見をまとめ、厚労省などに働きかけていきます。
地域医療守る病院協議会 171011
 
10月11日の会合では、主に2018年度診療報酬改定について議論、次の4つの柱に立て、具体的な要望項目をまとめました。

(1)医療資源が少なく人材を確保しづらい、また医療資源が少ないために機能分化が進みにくい地域での「算定要件の緩和」など
(2)地域包括ケアの推進など
(3)へき地などにおける費用増大への措置による応需体制の確保など
(4)その他

 
 まず(1)について全自病の邉見公雄会長(赤穂市民病院名誉院長)は「算定要件のうち、わずかでも人員が欠けていれば一切の診療報酬を算定できないが、オールオアナッシングなではなく、例えば『5人の人員が必要だが、4人しか確保できない』ような場合には、半額に減額した診療報酬の算定を認める」「医療資源の少ない地域において『専従』から『専任』への要件緩和を拡大する」ことなどを検討すべきと訴えています。具体的には、次のような要望をしてく考えです。

▼【感染防止対策加算】【褥瘡ハイリスク患者ケア加算】【地域包括ケア病棟入院料】の要件緩和

▼医療資源の少ない地域に配慮した評価の「対象地域」「対象医療機関」の範囲拡大と、継続(改定の度に地域・医療機関が見直されたので中長期的な人材育成などができない)

▼歯科を標榜していない病院での医科歯科連携の評価(地域の歯科診療所との連携も算定対象に加えることで、入院患者への適切な口腔管理が可能となる)

▼【地域包括ケア病棟入院料】の地域特性への対応(診療報酬上の緩和措置、主に『専従』要件を『専任』に緩和するなど)

▼【総合入院体制加算】の要件緩和(療養病棟入院基本料や地域包括ケア病棟入院料を届け出ていると【総合入院体制加算】を届け出できないが、地域によっては1つの病院で高度急性期から慢性期までを担わなければならない。地域の実情を踏まえた要件緩和を行う必要がある)

全国自治体病院協議会の邉見公雄会長
全国自治体病院協議会の邉見公雄会長

地域包括ケアシステムを支援する中小病院を診療報酬で評価すべき

 また(2)では、【地域包括ケア支援病院】の新設が必要と全国国診協の押淵徹会長(長崎県国民健康保険平戸市民病院長)が訴えました。地域包括ケアシステムは、要介護度が高くなっても住み慣れた地域で在宅生活を送れるよう、住宅・生活支援・医療・介護・健康の各サービスを総合的・一体的に提供するシステムですが、緊急時などの受け入れ病床を確保する「病院」の存在も重要です(いわば最後の砦)。

しかし押淵国診協会長は「病院が地域包括ケアシステムを支援しても何のインセンティブもない状態である。報酬で評価することで中小病院が地域包括ケアシステム支援に積極的になり、システム構築が推進される」と指摘。例えば、▽地域包括ケア病床や回復期リハビリ病床を有している▽急性期病床を有していても7対1を届け出ず、「地域医療支援病院加算」を算定していない▽24時間救急患者を受け入れている▽訪問看護・訪問診療・在宅看取りを実施している▽行政と協力した「地域内多職種研修会」を実施している▽地域ケア会議への専門職種派遣を行っている▽地域での健康講座(出前講座)を年6回以上実施している—などの要件を満たす病院を、【地域包括ケア支援病院】として診療報酬に位置付けるよう要望しました。

全国国民健康保険診療施設協議会の押淵徹会長
全国国民健康保険診療施設協議会の押淵徹会長
 
さらに、要支援者に対して市町村は地域支援事業(要支援者に対する訪問介護サービス・通所介護サービス【介護予防・日常生活支援総合事業】、在宅医療・介護連携支援、認知症施策推進、地域包括支援センターなど)を提供しますが、ここに地域包括ケア支援病院がスタッフ派遣するなどの協力を行うことを介護報酬面でも評価することも提案しました。地方では市町村のマンパワーも限られており、ここに病院が協力することで、地域支援事業が円滑に拡充していくことも期待されます。

なお、この点に関連して仲井培雄地ケア協会長から「▼生活圏▼診療圏▼通勤圏―が同一の地域で一定期間、医療提供を行わなければ地域包括ケアを理解することはできない」という指摘があったことが紹介されました。例えばA地域に、近隣のB都市部から医師が通勤しても、なかなかA地域で求められる地域包括ケアを把握することはできず、A地域に暮らし(生活圏)、A地域の医療機関に勤め(通勤圏)、A地域で診療する(診療圏)ことを一定期間経験することで、やっと地域に求められる医療が理解できるといいます。これは、今後議論される「医師偏在対策」においても重要な視点の1つとなりそうです(邉見全自病会長らは「医師不足地方での一定期間の勤務経験を医療機関管理者要件に加えるべき」と訴えている)。

地域によっては「特別の関係」にある施設しか連携先がないところもある

さらに(3)では、▼【へき地加算】設(【離島加算】18点を参照して、16点程度を要望)▼【データ提出加算の増点】(地方では人材確保が困難ため)―を、(4)では▼「特別の関係」規定の廃止・緩和▼介護保険の訪問看護における交通費算定―を要望する考えです。

このうち「特別の関係」とは、▼同一法人▼開設者や代表者が同一あるいは親族関係にある―ことなどを指し、例えば「医療機関同士もしくは医療機関と介護老人保健施設が特別の関係にある場合には、診療情報を提供しても【診療情報提供料】を算定できない」「入院医療機関と在宅療養を担う訪問看護ステーションが特別の関係にある場合には【退院時共同指導料】を算定できない」といった規定が置かれています。しかし邉見全自病会長は、「地域によっては、医療機関と老健施設がそれぞれ1つずつしかなく、同一法人(つまり特別の関係)であるケースもある。この場合に診療報酬の算定制限などがなされてしまうのは厳しい」と述べ、地域の実情を踏まえた「廃止」「緩和」を検討するよう訴えています。

  

 

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