救急医療管理加算、総合入院体制加算などの見直し論議スタート—入院医療分科会(1)



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 救急医療管理加算を2つに区分した2014年から、加算1のシェアが減少傾向にある。総合入院体制加算について区分・施設基準などの大幅見直しを行った2016年度の前回診療報酬改定後に加算1の届け出病院数は大きく増加し、とくに「がん化学療法の実施件数」要件緩和によって加算1の届け出が可能となった病院が多い—。

10月5日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)で、こういった状況が厚生労働省から報告されました。今後、さらに詳細な分析・検討を行い、秋の最終とりまとめにつなげることになります。

10月5日に開催された、「平成29年度 第9回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」
10月5日に開催された、「平成29年度 第9回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

救急医療管理加算、加算2の増加踏まえ「加算1の基準明確化」求める声

 2018年度の次期診療報酬改定に向け、入院医療分科会では入院医療に関する▽専門的な調査・分析▽技術的な課題に関する検討―を行っています。2016年度の前回改定の効果や影響について、2016年度と2017年度の2度に分けて調査を行い、それが分析・検討の基礎資料となります(関連記事はこちらこちら)。

2016年度調査では▼一般病棟▼地域包括ケア病棟▼療養病棟▼退院支援―などの状況を調べ、すでに親組織である中央社会保険医療協議会に中間まとめとして検討状況が報告されています。2017年度には、▼特定集中治療室管理料など▼病棟群単位の届け出▼短期滞在手術等基本料▼総合入院体制加算▼救急医療管理加算など▼療養病棟入院基本料—に関する調査が行われ、今般、速報値が報告されたものです。

今回は速報値の中から、まず「救急医療管理加算」と「総合入院体制加算」について、目立つ項目を拾ってみましょう。

まず救急医療管理加算の算定回数を見ると、2012年・13年には6月審査分で130万件弱でしたが、2014年以降は120万件程度に減少しています。従前は1区分の加算でしたが、比較的軽症な患者についても「(吐血や昏睡などの明示項目に)準ずる重篤な状態」として本加算を算定している疑いがあり、2014年度改定で▼吐血、昏睡、広範囲熱傷など患者状態を規定した加算1▼(吐血や昏睡などの明示項目に)準ずる重篤な状態に対する加算2―に区分。2016年度改定では加算1を900点、加算2を300点に設定し、両者の線引きをより明確にしました。

2014年以降の算定件数を加算1と2に分けてみると、▽2014年:加算1が80.3%、加算2が19.7%▽2015年:加算1が73.5%、加算2が26.5%▽2016年:加算1が67.6%、加算2が32.4%—と言う具合に「加算2のシェア」が高まっていることが分かります。先に開催されたDPC評価分科会では「呼吸不全のない肺炎患者のすべてを【救急医療管理加算】を算定している病院もある」ことなどが報告されており、「加算2のシェア増」をどう考えていくのか、今後詳しい分析・検討が行われると予想されます。

救急医療管理加算が2区分となった2014年以降、加算2(橙色部分)のシェアが拡大している
救急医療管理加算が2区分となった2014年以降、加算2(橙色部分)のシェアが拡大している
 
また、この点について武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)、神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「加算1においても『全身状態不良』や『重篤な状態』など曖昧な規定があり、病院や審査支払機関などで判断基準が異なる」旨を指摘。例えば「加算1の規定を極めて厳格に捉えるとこの患者は該当しないかもしれない。加算2として算定しよう」というケースが増えている可能性も考えられます。武井委員・神野委員は「基準の明確化」を重要論点の1つに掲げています。

 
救急医療は「急性期医療の原点」とも指摘され体制の整備が求められ、あわせて現場負担を考慮した十分な評価が求められます。救急医療管理加算も「救急搬送された重篤な患者に対し、入院初期に濃密な医療提供を行う」医療機関を評価するために創設されました。重篤な患者受入をより積極的に行う医療機関を適切に手厚く評価していくためにも、より詳細な分析を行い、メリハリのある点数設定なども含めた適切な見直しに期待が集まります。なお、この議論は DPCの「救急医療係数」とも密接に関連します。

総合入院体制加算の算定病院、より「上位の加算」目指す方向

 次に総合入院体制加算の状況を見てみましょう。特定機能病院に準じた幅広く高度な医療を提供する一般病院を評価するために設けられたもので、2014年度改定においては▼人工心肺を用いた手術40件以上▼がん化学療法4000件以上▼腹腔鏡下手術100件以上—(いずれも年間)などの実績をもつ病院をより高く評価するための見直し(加算1の設定)が行われました。

しかしこの実績要件が極めて厳しく2015年の届け出実績は「5病院」にとどまったため、2016年度の前回改定で実績要件を一部緩和(がん化学療法を1000件以上にするなど)するとともに、「精神科を含めたより幅広い医療の提供を求める」「より重篤な患者の受け入れを求める」といった視点での要件厳格化も行われ、加算が「3区分」に細分化されています。

今般の速報値を見ると、今年(2017年)7月1日現在、▼加算1は37病院▼加算2は203病院▼加算3は188病院—が届け出ていることが分かりました。加算1の大半は2016年度改定後に新たに届け出を行っており、その大部分が「がん化学療養に関する実績要件の緩和」(4000件→1000件)によって加算1の届け出が可能になっています。

総合入院体制加算の要件緩和及び厳格化が行われた2016年以降、加算1の届け出数が増加したことがわかる
総合入院体制加算の要件緩和及び厳格化が行われた2016年以降、加算1の届け出数が増加したことがわかる
総合入院体制加算1を新規に届け出た病院の多くが「化学療法実績の緩和」で要件が満たせるようになったと答えている
総合入院体制加算1を新規に届け出た病院の多くが「化学療法実績の緩和」で要件が満たせるようになったと答えている
 
さらに加算2届け出病院の12パーセントが「加算1への変更」を、加算3届け出病院の40.6%が「加算2への変更」、1.0%が「加算1への変更」を希望しており、一定数が「より上位区分への移行」を見据えた戦略を練っていることが分かりました。さらに2016年と17年とを比較すると「加算3から加算2への移行」が増加している状況も見えてきます。上位区分になるほど厳しい実績要件・体制要件が課されるため(もちろん報酬も上がるが)、「医療の質」向上に邁進している状況が伺えます。
総合入院体制加算2・3の取得病院の一定数が「より上位の加算取得」を目指していることが分かる
総合入院体制加算2・3の取得病院の一定数が「より上位の加算取得」を目指していることが分かる
 
こう考えると2016年度の「総合入院体制加算の見直し」は一定の成功を収めていると評価できそうです。なお、総合入院体制加算を届け出ていない病院では、▽精神科医療の提供(精神病床設置など)▽年間手術件数―などで「ハードルが高い」と考えているようです。

  

 

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