抗菌薬適正使用に向けた取り組みや医療用麻薬の投与日数をどう考えるか—中医協総会(2)



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 お伝えしているとおり、10月4日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、「がん医療」「感染症対策」「移植医療」といったテーマについて、診療報酬サイドからのアプローチが検討されました。

ここでは、がん医療のうちの「医療用麻薬の使用推進」、抗菌薬の適正使用、移植医療に関する議論の内容を紹介します。

10月4日に開催された、「第362回 中央社会保険医療協議会 総会」
10月4日に開催された、「第362回 中央社会保険医療協議会 総会」

医療用麻薬の投与日数上限を引き上げるべきか、診療側委員から反論も

緩和ケアに関して厚労省は、緩和ケア病棟などの評価とは別に、▼がん疼痛療法に適応のある、新規収載された医療用麻薬について、投薬期間の日数上限を30日に見直してはどうか▼在宅療養中の末期がん患者における「苦痛緩和を目的とした酸素療法」について、C103【在宅酸素療法指導管理料】の対象としてはどうか―といった提案も行いました。

このうち前者については松本純一委員(日本医師会常任理事)から「注射薬(医療用麻薬)については、医師などが患者宅を訪問する都度に準備すればよく、投与日数上限を緩和することは認めるべきでない。医療安全を考慮すれば、現在の14日の上限も見直すべきではないか(訪問の都度に処方)」と明確に反対。一方で、安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)からは「麻薬以外の鎮痛薬の中にも14日の上限が課せられ、処方が複雑になっているケースもある。見直しを検討してほしい」と要望するなど、診療側委員内でも意見の違いがあり、今後の調整が待たれます。

医療用麻薬のうち新規に薬価収載された場合には、投与期間が14日に制限されるのが原則となり、「30日処方」の医薬品と組み合わせたときに処方が複雑になるとの指摘がある
医療用麻薬のうち新規に薬価収載された場合には、投与期間が14日に制限されるのが原則となり、「30日処方」の医薬品と組み合わせたときに処方が複雑になるとの指摘がある
 
また後者について今村委員は「酸素療法は、がんに関する指導管理料の中で評価されているのではないか。それよりもC158【酸素濃縮装置加算】が末期がん患者で算定できない点が問題である」と指摘し、厚労省に提案内容の再考を求めています。

進行した心不全患者への緩和ケアも診療報酬で評価

 
なお、厚労省は「循環器系疾患の患者では、がん以上に緩和ケアが必要なケースがある」「がんと異なり、循環器系疾患では徐々に機能が低下する」といったデータを示し、『進行した心不全患者』への緩和ケアを診療報酬で評価してはどうかとの提案も行っています。

緩和ケアが必要な疾患は、実は「がん」よりも「循環器疾患」であるとの研究結果がある
緩和ケアが必要な疾患は、実は「がん」よりも「循環器疾患」であるとの研究結果がある
がんと循環器疾患では機能低下の状況が異なっている
がんと循環器疾患では機能低下の状況が異なっている
心不全において、治療と連携した「緩和ケア」の必要性が指摘されている
心不全において、治療と連携した「緩和ケア」の必要性が指摘されている
 

耐性菌制御のため、抗菌薬適正使用推進の取り組みを評価すべきか

感染症対策については、(1)薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)対策(2)小規模結核病棟—の2点が取り上げられました。

このうち(1)については、厚労省が薬剤耐性(AMR)対策アクションプランとして「▽経口セファロスポリン▽フルオロキノロン▽マクロライド—の使用量を2020年までに半減し、抗微生物薬全体の使用量を3分の2(33%減)とする」との目標を掲げています。国際的にも問題となっている「薬剤耐性菌」を制御するために、「抗菌薬の適正使用」を国を挙げて進める考えを明確にしたものです。これを診療報酬サイドからサポートするため、厚労省は「A234-2【感染防止対策加算】を参考とした『抗菌薬適正使用推進チーム』(AST)の取り組みを診療報酬で評価してはどうか」と提案しています。

薬剤耐性(AMR)対策アクションプランでは、経口セファロスポリンなどの使用量を半減させるなどの目標とたてている
薬剤耐性(AMR)対策アクションプランでは、経口セファロスポリンなどの使用量を半減させるなどの目標とたてている
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)による取り組み例
抗菌薬適正使用支援チーム(AST)による取り組み例
ASTの介入によって、抗菌薬使用量が一定程度低下するとの研究結果がある
ASTの介入によって、抗菌薬使用量が一定程度低下するとの研究結果がある
 
感染防止対策加算は、院内に感染制御チームを設置し、▽院内感染状況の把握▽抗菌薬の適正使用▽職員の感染防止—といった取り組みを評価するものです。これを参考にした場合、例えば「院内にASTを設置し、▽感染症治療のモニタリング▽抗菌薬使用の適正化▽高感染リスク患者への効率的な抗菌薬適正使用支援▽医療専門職への教育・啓発—といった取り組みを評価する」ことなどが考えられそうです。このAST設置を「感染防止対策加算の加算などとして評価するのか」「感染防止対策加算とは別に評価するのか」などは今後の検討に委ねられますが、両者の重なりを考慮した場合、前者のような一体的な評価とする可能性が高いのではないでしょうか。なお支払側の幸野委員は「AST設置は感染防止対策加算の算定医療機関では当然行うものではないか」と述べ、新たな評価に慎重な構えを見せています。

また(2)では「障害者施設病棟と結核病棟を併設置している病院において、結核病棟で重症度、医療・看護必要度のみを満たさない場合の救済措置」(現在は7対1看護配置をしていても障害者施設病棟も10対1となってしまう)が検討されます。

障害者施設病棟と結核病棟とを一体的に運営する場合には、結核病棟が看護必要度基準を満たさない場合、障害者施設側で基準を満たしても7対1を届け出ることができない
障害者施設病棟と結核病棟とを一体的に運営する場合には、結核病棟が看護必要度基準を満たさない場合、障害者施設側で基準を満たしても7対1を届け出ることができない

迅速な造血幹細胞移植を可能とする体制を敷いている病院の評価を充実

 さらに「移植医療」については、「造血幹細胞移植のコーディネート期間短縮」に資するようなコーディネート体制を敷いている場合の評価が検討されます。

 非血縁者間で造血幹細胞移植が行われる場合には、骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業者(日本骨髄バンク)が移植希望者や幹細胞採取医療機関との連携調整を行いますが、この期間(コーディネート期間)の中央値は147日となっており、長期間に及んでしまうケースがあります。コーディネート期間が長期にわたると、患者の容態が悪化し、移植に適さない事態が生じる(ひいては死亡も)ことから、厚労省はコーディネート期間を短縮するための試行事業(移植希望者を通常の5人から10人に増加し、効率的な連絡調整を行う)を実施し、成果も上がっています。

造血幹細胞移植におけるコーディネート期間の中央値は147日と長い
造血幹細胞移植におけるコーディネート期間の中央値は147日と長い
骨髄バンクにおいて、移植希望者数を従前の5人から10人に増やし、効率的な連絡調整(コーディネート)を推進する試行事業が行われている
骨髄バンクにおいて、移植希望者数を従前の5人から10人に増やし、効率的な連絡調整(コーディネート)を推進する試行事業が行われている
効率的な移植の連携調整により、コーディネート期間は大幅に縮減している
効率的な移植の連携調整により、コーディネート期間は大幅に縮減している
 
また日本臓器移植学会が認定する造血幹細胞移植コーディネーター(HCTC:Hematopoietic Cell Transplant Coordinator)を配置している施設では、▽患者が移植に関する情報を十分に得られる▽コーディネート期間が短縮する—といった効果のあることが報告されています。
 
こうした点を考慮した「コーディネート体制」要件が今後検討されます。

  

 

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