10月10日から【病院総合医】育成プログラム申請を受け付け—日病・相澤会長、末永副会長



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 複数疾病をもつ高齢患者などに総合的な診療を行い、チーム医療、ひいては病院全体を牽引する力を持つ「病院総合医」の養成を来年度(2018年度)から開始。これに向け、10月10日から11月10日まで、「病院総合医」の理念に賛同する病院から「育成プログラム」の申込を受け付ける—。

日本病院会が10月3日に開いた記者会見で、相澤孝夫会長(社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長)と末永裕之副会長(小牧市民病院病院事業管理者)からこういった点が発表されました(日病のサイトはこちら、各種書式がダウンロードできます)(関連記事はこちらこちらこちら)。

総合診療を提供し、チーム医療、将来は病院全体を牽引する【病院総合医】を養成

日本専門医機構が総合診療専門医の養成を2018年度から開始しますが、病院において複数の疾患を抱える患者への総合診療提供や、術後管理などを一手に引き受ける医師を養成するプログラムとなっているかについて疑問を持つ医療関係者も少なくないようです。そこで日病では、高齢化が進む中で「病院において総合診療を行う医師」の養成が急務と考え、1年ほどかけて構想を練ってきました。

相澤会長は「高齢化が進む中で、複数の診療科間で、さらに介護・福祉との間でも連携をとれる医師が求められている。一方で、こうした総合医療を提供する医師の地位をどう考えるか、キャリアアップをどう考えるかという点がはっきりしていなかった。そこで、包括的かつ柔軟に幅広い『全人的』な医療を提供する【病院総合医】の養成に踏み切ることになった。病院総合医は、チーム医療を牽引する役割も担い、将来的には病院全体をまとめることができるだろう」とコメント。病院総合医が「病院経営幹部」への1ルートとなることを強調しています。

10月3日の記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長
10月3日の記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長
 
 また【病院総合医】構想の中心メンバーである末永副会長は「高齢化が進む中では、複数疾病を抱える患者、診療科間の隙間に陥ってしまう患者が増加してくるため、特に中小病院で総合医の養成が急務とされ、また大規模病院でもその必要性は大きい」と指摘。また日本専門医機構の「総合診療専門医」とは別の仕組みである(【病院総合医】は、自院で活躍する「卒後6年目以降の医師」が対象)ことを明確にした上で、「機構でもサブスペシャリティ領域の中で病院の総合医的な資格を考えることになるかもしれない」と見通しました。その際に日病の【病院総合医】がそのままサブスペシャリティ資格になることはないものの、「一定の配慮」がなされる可能性もありそうです(それを期待した制度設計になっている)。
10月3日の記者会見に臨んだ、日本病院会の末永裕之副会長
10月3日の記者会見に臨んだ、日本病院会の末永裕之副会長

10月10日から育成プログラムの申請受付、2月頃から専修医の募集・登録

【病院総合医】の認定スケジュールは、次のようになっています。

▼【病院総合医】の理念に賛同する病院が基準に則った「育成プログラム」を日病に申請する(10月10日-11月10日)

▼日病で育成プログラムを審査・認定(11月下旬から1月にかけて)した後、各病院で専修医を募集し、日病に登録する(2月頃)

▼各病院で研修を開始し(4月スタート)、2年後(あるいは1年後)に日病が研修結果を評価し、基準を満たしていると判断された場合には【病院総合医】として認定する

▼【病院総合医】資格は5年ごとに更新され、その際「医療安全管理」や「医療政策」などの最新情報を取得し、状況変化に適応できる能力を養っていることが期待される

病院総合医認定・更新にかかる大きなスケジュール概要
病院総合医認定・更新にかかる大きなスケジュール概要

 
 末永副会長は、【病院総合医】の理念として、(1)多様な状態を呈する患者に包括的かつ柔軟に対応できる総合的診療能力を持つ(2)全人的に対応できる(3)地域包括ケアシステムにおける医療・介護連携の中心的役割を担う(4)多職種をまとめチーム医療を推進できる(5)地域医療にも貢献できる—能力を持つ医師を養成することを掲げ、「便利屋の養成を行うわけではない」と強調しました。

 【病院総合医】を目指す「専修医」(研修期間の医師)は各診療科で指導を受けますが、その責任は「病院総合指導医」が負います。「病院総合指導医」とは、日病を初めとする各団体の実施する「臨床研修指導医講習会」を修了した医師、あるいは病院管理者とされ、「病院全体で将来の幹部候補を育てる」という意識が重要になってきます。病院総合指導医1人つき、専修医は3名までとされました。

また研修期間は2年間が原則ですが、すでに総合医療を提供していると認められるような場合には、研修期間を1年間に短縮することも可能です。例えば、▼最初の1年間(短縮の場合は6か月)は「救急科」に所属して救急外来を担当することで総合医研修を受ける▼残りの1年(短縮の場合は6か月)は「総合診療科」にて病棟医の研修を受ける—といった育成プログラムが考えられます。自院で研修を完結する必要はなく、複数病院が連携して研修を行うことも可能です。

日病では、研修期間中に▼ショック▼急性中毒▼意識障害▼全身倦怠感▼心肺停止▼呼吸困難▼身体機能の低下▼不眠▼食欲不振▼体重減少・るいそう▼体重増加・肥満▼浮腫▼リンパ節腫脹▼発疹▼黄疸▼認知脳の障害▼頭痛▼めまい▼失神▼言語障害▼けいれん発作▼視力障害・視野狭窄▼聴力障害・耳痛▼鼻漏・鼻閉▼鼻出血▼嗄声▼胸痛▼動悸▼咽頭痛▼誤嚥▼誤飲▼嚥下困難▼吐血・下血▼肛門・会陰部痛▼熱傷▼外傷▼褥瘡▼背部痛▼腰痛▼関節痛▼歩行障害▼四肢のしびれ▼肉眼的血尿▼排尿障害(尿失禁・排尿困難)▼乏尿・尿閉▼多尿▼不安▼気分の障害(うつ)―といった幅広い症例を経験することが必要と考えています。またチーム医療を牽引していく能力を養うために、さまざまなチーム医療活動、とくに「医療安全」「感染制御」チームへの参画は必須となります。

さらに、将来の「病院経営幹部」候補であることも踏まえ、病院経営・管理に関する各種講習会やセミナーに積極的に参加することも求められます。末永副会長は【病院総合医】資格を取得した医師が、次の病院総合指導医になることを期待し、「臨床研修指導医講習会には必ず参加してほしい」と求めています。

 
2年間(あるいは1年間)の研修を終えた後に、病院総合指導医が各専修医の(i)インテグレーションスキル(包括的診療の展開・実践)(ii)コンサルテーションスキル(必要な場合に専門診療科へ速やかな相談・依頼)(iii)コーディネーションスキル(多職種の連携・調整)(iv)ファシリテーションスキル(チーム医療の促進・実践)(v)マネジメントスキル(地域包括ケアシステムや日本全体を考慮した病院運営)―という5つの能力について評価。これをもとに日病で【病院総合医】の基準を満たしているかどうかを審査することになります。

 
なお、育成プログラムの審査には1件当たり3万円、総合医の認定・更新には1人当たり1万5000円の費用がかかります。

 

 
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