市販品類似薬を保険給付から外し、薬価引き下げ分は診療報酬に充てるな—健保連



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 75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度について、公費負担を「50%」とし、患者負担は「段階的に2割」へ引き上げる。また医療提供体制については、「機能分化・連携」「地域間格差の是正」を推進する。さらに軽疾患用の医薬品については保険給付範囲からの除外などを行う必要があり、まず「市販品類似医薬品」から除外を進めていく必要がある。また薬価引き下げで生じた財源は、診療報酬本体に充てず国民に還元せよ—。

 健康保険組合連合会は9月25日に「2025年度に向けた医療・医療保険制度改革について」を発表。その中でこうした提言を行いました(健保連のサイトはこちら)(関連記事はこちら)。

医療保険、医療提供体制、診療報酬などに関する提言

 主に大企業の従業員とその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健保連は、「医療保険改革」「医療制度改革」について積極的な研究・提言を行っています。2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、これから医療・介護ニーズが飛躍的に高まり、医療費・介護費も急増します。健保連の試算では、2025年度には医療費が58兆円となり、うち75歳以上の後期高齢者医療費は25兆円(全体の43%)を占めると推計されました。

健保連の試算では、2025年度には57.8兆円になると推計された
健保連の試算では、2025年度には57.8兆円になると推計された
 
こうした状況の中で、健保連は「国民皆保険制度を維持するために医療制度・医療保険制度の改革を先送りしてはならない」と考え、今般の提言を行ったものです。提言内容は多岐にわたりますが、メディ・ウォッチでは次の項目に注目しました。

(1)後期高齢者拠出金負担割合に50%の上限を設定し、上限超過分は国庫負担とすべき
(2)後期高齢者の患者負担を段階的に2割とすべき
(3)「持続可能な医療保険制度」に向けたビジョンを示すべき
(4)医療機能の分化・連携を推進すべき
(5)医療の地域間格差を是正すべき
(6)薬剤費の伸びを抑制すべき
(7)保険給付範囲を見直すべき
(8)診療報酬体系を見直すべき

75歳以上の後期高齢者でも窓口負担は2割とせよ

 まず(1)と(2)は「後期高齢者医療制度」に関する見直し項目です。75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度の医療費は、▼公費5割▼若年世代からの支援金4割▼高齢者自身の保険料1割—という構成の財源で賄うこととされています。このうち若年世代からの支援金(拠出金)を詳しく見てみると、健保組合平均で50.7%となっており、「支出の過半が加入者ではなく、後期高齢者のために費やされている」状況になっています。そこで健保連は「拠出金(支援金)負担に50%の上限を設け、超過分は公費負担とすべき」と訴えているのです。

また現在、新たに70歳になった人から「2割の窓口負担」が課せられる仕組みとなっており、健保連は「2018年度から70-74歳の窓口負担がすべて2割となるので、75歳以上も2割負担を継続してはどうか」と提案しています。「医療費に対する自己負担」という視点で診ると、75歳以上では、74歳以下に比べて極めて負担割合が低く、「受益に応じた負担の公平化」を進めるべきと健保連は考えているようです。もっとも、75歳以上では、若い世代に比べて収入の水準が極めて低くなるため、「能力の応じた負担」という視点での検討も必要でしょう。

「医療費に対する自己負担」(応益負担)の視点だけでみると、75歳以上の高齢者は負担割合が若い世代に比べて低いことが分かる
「医療費に対する自己負担」(応益負担)の視点だけでみると、75歳以上の高齢者は負担割合が若い世代に比べて低いことが分かる
 
 一方(3)では、医療保険制度を「税金」と「保険料」でどのように賄うのか、「消費増税分の配分方法見直し」(高齢者医療へ充当)などを検討するよう求めています。

1人当たり医療費の都道府県格差は1.5倍、まず格差の「半減」を目指せ

また(4)と(5)は医療提供体制に関する提言です。▼地域包括ケアシステムの構築▼ゲートキーパー機能を担う総合診療専門医の育成推進▼適切な受診行動の啓発▼効率的・効果的な医療提供に向けた医師の意識改革▼病床数・入院日数・医療費などの地域間格差是正—などを行うべきと強調しています。

とくに「地域間格差」については、1人当たり医療費を都道府県別に比較した際に「最高の福岡県と最低の埼玉県では1.5倍の格差があり、病床数と入院医療費との間に相関がある」ことなどを指摘。この格差の半減を目指して、情報公開・データ分析の見える化を進めるよう強く求めています。

病床数と入院医療費には正の相関があり、都道府県別の1人当たり医療費には1.5倍の格差があることから、これをまず「半減」すべきと健保連は提案している
病床数と入院医療費には正の相関があり、都道府県別の1人当たり医療費には1.5倍の格差があることから、これをまず「半減」すべきと健保連は提案している

薬価引き下げで生じた財源は診療報酬本体に充てず、国民に還元せよ

 さらに(6)から(8)は診療報酬に関する提言と言えます。(6)の薬剤費については、▼薬価制度抜本改革の基本方針に沿った「薬価の適正化」▼服薬指導管理、処方変更、リフィル処方箋などを活用した薬局・薬剤師の機能発揮—などを図るべきと提案。

また(7)では、これまでの診療報酬改定での提言に続き「まず市販品類似薬の保険給付からの除外」を進めるよう求めています。フランスでは、▼抗がん剤などは100%▼血圧降下剤などは65%▼アレルギー用剤などは30%▼耳鼻科用薬などは15%▼去痰剤などは0%—という具合に、医薬品の重要性を勘案した保険給付率の階段を設けており、こうした仕組みを参考にした改革が必要と訴えています。

フランスでは、医薬品の重要性を勘案して保険給付率が設定されており、我が国でもこの制度を参照すべきと健保連は訴えている
フランスでは、医薬品の重要性を勘案して保険給付率が設定されており、我が国でもこの制度を参照すべきと健保連は訴えている
 
さらに(8)では、▼薬価引き下げ分の財源は国民に還元する(診療報酬本体には充てない)▼診療報酬体系の包括化を拡大する―よう求めています。

 
診療報酬については中央社会保険医療協議会(関連記事はこちらこちらこちらこちら)、医療保険制度については社会保障審議会・医療保険部会(関連記事はこちらこちらこちら)、医療提供体制については社会保障審議会・医療部会(関連記事はこちらこちら)で主に議論が進められており、今秋から来春にかけて熱い論議が繰り広げられます。各審議会・協議会には健保連からも委員が出席しており、この提言に沿った意見陳述が行われることになるでしょう。

 

 
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