レセプトへの郵便番号記載、症状詳記添付の廃止、Kコードの大幅見直しなど検討—中医協総会



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 レセプトへの症状詳記添付などの廃止や摘要欄記載要領の見直しなどによって現場の負担軽減を図るとともに、診療報酬点数表の手術コード(Kコード)について外保連手術試案に沿った体系化を行うことなどによってレセプト情報の利活用促進のベースを整えてはどうか―。

 9月27日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長はこのように提案しました。2018年度の次期診療報酬改定から順次対応されていきますが、現場の混乱などを避けるために十分な準備期間なども設けられます。

9月27日に開催された、「第361回 中央社会保険医療協議会 総会」
9月27日に開催された、「第361回 中央社会保険医療協議会 総会」

現場負担軽減に向け、症状詳記添付の廃止や自由記載の見直しなどを検討

「診療報酬の請求事務を簡素化してほしい」「レセプトの様式を見直すなどし、医療内容を分析しやすくすべきである」といった医療提供側、保険者側の指摘を受け、迫井医療課長は7月12日の中医協総会で、思い切った「診療報酬に係る事務の効率化・合理化」「診療報酬に係る情報の利活用」を進める方針を提示していました。9月27日の中医協総会では、効率化・合理化・利活用推進に向けたより具体的な対応案が示されました。大きな方向は診療・支払両側の委員共賛同していますが、一部項目について慎重論も出ており、今後、詳細な検討が行われます。

まず「診療報酬に係る事務の効率化・合理化」については、大きく次の3つの見直しが行われます。
(1)施設基準の届け出項目や手続きなどのさらなる簡素化・合理化を進めるとともに、2018年度以降も届け出や諸報告などのオンライン化を進めていく
(2)届け出の様式などで記載を求める診療情報のうち、診療録などから得られるものは「簡略化可能」である旨を示すとともに、測定方式の簡略化を検討する
(3)レセプトの摘要欄の記載要領、添付書類について見直しを行う

このうち(3)の「レセプト摘要欄の記載要領」については、「自由記載」から「選択記載」への見直しなどが行われます。例えば現在、C102【在宅自己腹膜灌流指導管理料】を1か月に2回以上算定する場合には「算定回数」「頻回に指導管理を行う必要があると認めた理由」を記述することになっています(下図の橙色点線の囲み)。しかし、診療報酬点数表の解釈通知の中で「頻回に指導管理を行う必要がある場合」として▼導入期▼糖尿病により血糖コントロールが困難▼腹膜炎の疑い—などが例示されている(下図の青点線の囲み)ため、該当項目を選択して記載する形にする、といったイメージです。

在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定に関する解釈通知
在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定に関する解釈通知
 
迫井医療課長は、見直し対象の医科診療報酬項目は▼A105【救急医療管理加算1】▼A308【回復期リハビリテーション病棟入院料】▼C101【在宅自己注射指導管理料】▼D009【腫瘍マーカー検査】▼D026【検体検査判断料】▼J038【人工腎臓】▼N006【病理診断料】―など128に及ぶことを説明しています(歯科、調剤も別途検討)。
レセプト摘要欄への記載について「自由記載」から「選択記載」に見直される診療報酬項目の候補(その1)
レセプト摘要欄への記載について「自由記載」から「選択記載」に見直される診療報酬項目の候補(その1)
レセプト摘要欄への記載について「自由記載」から「選択記載」に見直される診療報酬項目の候補(その2)
レセプト摘要欄への記載について「自由記載」から「選択記載」に見直される診療報酬項目の候補(その2)
レセプト摘要欄への記載について「自由記載」から「選択記載」に見直される診療報酬項目の候補(その3)
レセプト摘要欄への記載について「自由記載」から「選択記載」に見直される診療報酬項目の候補(その3)
 
また「レセプトの添付書類」については、不必要な症状詳記の添付などを廃止し、レセプトへの記載などを求めることになります。例えば現在、【両室ペーシング機能付き植込型除細動器】を移植して、当該材料の費用を算定する場合には、レセプトに当該患者の症状詳記を添付しなければなりません(下図の橙色点線部分)。しかし、特定保険医療材料算定に係る解釈通知の中で「対象患者」として▼「NYHAクラスII・左室駆出率30%以下など」あるいは「NYHAクラスIIIまたはIV・左室駆出率35%以下など」を満たす▼致死性不整脈による心停止に伴う意識消失の既往あり、血行動態が破綻する心室頻拍または心室細動の既往あり、など—のいずれをも満たすこととの基準が定められている(下図の青点線部分)ことから、▽NYHAクラス▽左室駆出率▼QRS幅—などの事項をレセプト摘要欄に記載することで可とする、といったイメージです。
両室ペーシング機能付き植込型除細動器の算定に関する解釈通知
両室ペーシング機能付き植込型除細動器の算定に関する解釈通知
 
迫井医療課長は、医科では本項目を含めて11の診療報酬項目(H001-2【廃用症候群リハビリテーション料】、K282【水晶体再建術】など)が対象になると説明しています(歯科、調剤も別途検討)。
レセプトへの症状詳記添付について見直しが行われる診療報酬項目の候補
レセプトへの症状詳記添付について見直しが行われる診療報酬項目の候補
 
こうした対応案について診療側委員からは「審査支払との関係」を問う声が多数だされました。患者の態様は千差万別であり、医療現場の判断で「当該患者に○○の診療行為が必要である」と判断されるケースも少なくありません。これを、例えば「選択項目に該当していないので査定する」といった機械的な審査が行われては困ると、松本純一委員(日本医師会常任理事)や松本吉郎委員(日本医師会常任理事)らは指摘しています。

この点、迫井医療課長は「請求事務の負担軽減が目的である」点を強調し、診療側委員らの指摘する視点での見直しではない旨を説明しています。ただし、審査支払の見直し論議(支払基金業務効率化・高度化計画)が中医協とは別途進められており、その中で「審査効率化のためにレセプト記載要領を見直す必要がある」などの結論が出れば、改めて中医協で議論が行われることになるでしょう。

レセプトへの郵便番号記載、診療側委員からは慎重論

一方、診療報酬情報の利活用については、次のような対応案が迫井医療課長から提示されました。
(a)レセプトに「患者住所地の郵便番号」「氏名のカタカナ記載」を求める
(b)手術コード(Kコード)を、外保連手術試案の基幹コード(STEM7)に沿って再編する
(c)データ提出項目について、回復期・慢性期の入院患者に有用な項目の追加を検討するともに、既存の重複などを合理化する

このうち(a)の「住所地」情報は、DPCデータ様式1の中で既に記載が義務付けられているもので、「当該医療機関にはどのエリアから患者が受診しているのか」などの分析に役立ちます。ここから「自院の○○診療科は近隣からの患者が多く『地域密着型』機能だが、●●診療科は県全域から患者を受け入れており『基幹型』機能を果たしていることが分かる。今後の医療提供体制の再編を控えて、どの診療科に力を入れていくべきか(機能分担をどう進めていくべきか)」といった検討につなげることができるのです。

しかし、診療側委員の多くから、「保険証にも郵便番号は記載されていない。この確認事務を医療機関に委ねるのは難しいのではないか」(松本純一委員)、「患者が転居しても、その旨を医療機関に伝えない場合もあるが、その場合には不完全なレセプトになってしまう」(今村聡委員:日本医師会副会長)、「最新のレセコンではカタカナ表記などが可能のようだが、古い機種では難しいらいい。医療現場の負担も考慮すべきである」(猪口雄二委員:全日本病院協会会長)といった慎重論が示されました。

この点、保険者代表である吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)や幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)からは「データ利活用のために住所地情報などの記載を進めるべき」との意見も出ましたが、「保険者では被保険者の住所情報など把握しているが、被扶養者情報は必ずしも把握できていない」と述べており、保険者自身も「患者の住所地を適切に把握する」ことには困難が伴う状況が明らかにされました。このほかに「歯科医院や保険薬局などの小規模医療機関の負担増をどう考えるか」といった問題などもあり、さらなる検討が行われます。

 
また(b)は、現在の手術コード(Kコード)は、例えば、K529【食道悪性腫手術】は「頸部などの操作」「胸部などの操作」「腹部の操作」という具合に『部位で細分化』されているが、K657-2【腹腔鏡下胃全摘術】は「単純全摘」「悪性腫瘍手術」という具合に『術式で細分化』されており、体系的な整理がなされていません。これでは、医療技術の多様化・高度化に診療報酬が対応できなくなる恐れもあるため、迫井医療課長は外保連手術試案の基幹コード(STEM7、部位・基本操作・アプローチ方法・アプローチ補助器械で体系化)に沿って再編することを提案しているものです。

 
 こうした見直しの中には、医療現場や審査支払機関、保険者などに大きな影響を及ぼすものもあります(例えば、レセプトへの住所地情報記載や、Kコードの体系見直しなど)。このため、迫井医療課長は「小規模医療機関など現場負担への配慮」「十分な経過措置期間の設定」などを行う考えも強調しています。

  

 

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