要介護者の維持期リハ、介護保険への移行をどのように進めるか―中医協総会



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 要介護被保険者に対する維持期・生活期リハビリテーションについて、医療保険から介護保険への円滑な移行を進めるために、リハビリ計画書の様式や取扱いなどの効率的な運用をどう進めていくべきか。また患者の状態などを踏まえて、診療報酬をどのように見直していくべきか—。

13日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういったテーマで議論を行いました。2018年度の次期診療報酬改定に向けて、中医協総会では入院・外来・在宅医療の総論的な議論を第1ラウンドで行っています。第2ラウンドでは、より具体的なテーマも含めた議論が展開されます。

9月13日に開催された、「第360回 中央社会保険医療協議会 総会」
9月13日に開催された、「第360回 中央社会保険医療協議会 総会」

前回改定では、2017年度末で介護保険への移行を明確化したが

リハビリテーションについては、患者の病期に応じて、▼発症直後の急性期リハビリ▼症状が一定程度安定してからの回復期リハビリ▼状態改善は見込めないまでも、状態を維持し、日常生活に必要な機能訓練を主な目的とした維持期・生活期リハビリ—の大きく3つに分けることができます。

病期別に見たリハビリの役割に関する概念図
病期別に見たリハビリの役割に関する概念図
 
 またリハビリの種類には、診療報酬上、▼心大血管疾患リハビリ料▼脳血管疾患等リハビリ料▼廃用症候群リハビリ料▼運動器リハビリ料▼呼吸器リハビリ料—があります。このうち脳血管疾患等リハビリ料を例にとって、病期による区分と組み合わせると、次のように整理することができます(機能訓練室が160平米以上、常勤医師2名以上、常勤理学療法士5名以上などの基準を満たす脳血管疾患等リハビリ料(I)で見てみる。ただし急性期などの定義はメディ・ウォッチ編集部で便宜的に設定)。

▼急性期リハビリ:脳梗塞での入院直後の患者について、▽H001【脳血管疾患等リハビリ料】245点を1日当たり6単位(120分)まで▽【初期加算】45点を14日間まで▽【早期リハビリテーション加算】30点を30日間まで―算定できる

▼回復期リハビリ:状態が一定程度安定した患者について、H001【脳血管疾患等リハビリ料】245点を、1日当たり6単位(120分)まで、発症など(急性期の期間も含めて)から180日間(標準的算定日数、リハビリの種類で設定されている)まで算定できる

▼維持期・生活期リハビリ:発症などから181日を超え、医学的に「さらなるリハビリ提供により状態の改善が期待できる」などと判断された場合、上記回復期と同様に算定でき、医学的に「さらなるリハビリ提供により状態の改善が期待できる」などと判断されたなかった場合には▽要介護被保険者以外ではH001【脳血管疾患等リハビリ料】245点▽要介護被保険者ではH001【脳血管疾患等リハビリ料】147点―を1か月当たり13単位まで算定できる

このように「発症直後で濃厚なリハビリが必要な状態」から「回復して安定し、比較的少ない量のリハビリでよい状態」まで、段階的に診療報酬が設定されているのです。

標準的算定日数(脳血管疾患等リハビリでは180日)を超えた場合、医学的に状態改善が期待できる患者では、継続した医療保険のリハビリ提供が可能である
標準的算定日数(脳血管疾患等リハビリでは180日)を超えた場合、医学的に状態改善が期待できる患者では、継続した医療保険のリハビリ提供が可能である

 
ところで要介護被保険者では、医学的に「さらなるリハビリの提供をしても、状態の改善は見込めない」ものの、機能を維持するためにリハビリが必要となる高齢者も少なくありません。この場合、介護保険の通所リハビリなどを利用することになりますが、「依然として医療保険のリハビリが提供されているケースが一部にある」と指摘されます。医療保険と介護保険の役割分担を考えれば、「機能維持」を目的としたリハビリは介護保険給付で賄われるべきであり、過去の診療報酬改定でも「医療保険リハビリから介護保険リハビリへの円滑な移行」が重要テーマとなっています。

ここで注意しなければならないのは、介護保険への円滑な移行が求められているのは、▼運動器・脳血管疾患等・廃用症候群のリハビリに限定されている(心大血管疾患・呼吸器は除外)▼要介護被保険者に限定されている(介護保険の給付対象者に限定)▼「医学的に状態の改善が期待できない」などと判断された患者に限定されている▼入院外の患者に限定されている—という点です。医学的に状態改善が期待できる患者については、標準的算定日数(脳血管疾患等リハビリでは180日)を超えても、医療保険のリハビリを受けることが可能です。

脳血管疾患リハの6%程度、運動器リハの2%程度が要介護・維持期のリハ

 厚労省の調べでは、2016年6月時点で「標準的算定日数を超えて医療保険のリハビリを受けている要介護被保険者」に対するリハビリ提供が、脳血管疾患等リハビリでは算定件数ベースで全体の5.8%(前年同月は6.8%)・算定回数ベースでは6.7%(同7.9%)、運動器リハビリでは算定件数で1.9%(同2.2%)・算定回数で2.3%(同2.6%)となっています。件数・回数ともに少なく、かつ減少傾向にあるものの、依然として「介護保険への移行が必要な要介護被保険者」がいることが分かります。

要介護保被保険者で維持期・生活期のリハビリを受けている人は、脳血管疾患等では全体の6%程度、運動器では全体の2%程度
要介護保被保険者で維持期・生活期のリハビリを受けている人は、脳血管疾患等では全体の6%程度、運動器では全体の2%程度
 
2018年度の次期診療報酬改定は、介護報酬との同時改定となるため、「医療保険リハビリから介護保険リハビリへの円滑な移行」に向けて、医療・介護の両面から効果的にアプローチを行えると期待されます。

厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、診療報酬サイドからのアプローチとして(1)診療報酬上の取扱い(2)円滑な情報共有の確保―の2点を掲げました。

(1)の診療報酬上の取扱いとは、例えば「介護保険への移行が進まない場合のペナルティ」などがあり、例えば2016年度の前回診療報酬改定では、▼「要介護被保険者の維持期・生活期リハビリは2017年度末までに原則として介護保険に移行する」方針の明確化▼円滑な移行を支援するためのH003-4【目標設定等支援・管理料】の新設▼【目標設定等支援・管理料】を算定しない要介護高齢者に対する疾患別リハビリ料の減算規定の創設―などが行われています。介護保険への移行のハードルとして「患者の心理的不安」「介護保険リハビリの質などが不明」という声が多かったことを踏まえ、【目標設定等支援・管理料】を創設し、一定期間、医療保険と介護保険のリハビリの併給も可能としています。

2016年度の前回診療報酬改定における疾患別リハビリ料の見直し概要
2016年度の前回診療報酬改定における疾患別リハビリ料の見直し概要
 
 迫井医療課長は、介護保険への移行が求められる患者の状態や要介護度について、2016年度改定を受けた結果検証調査から把握し、診療報酬について必要な見直しを検討する方針を示しています。介護保険への移行を阻害する要因を分析し、これを解決する診療報酬上の対策を練ってはどうかとの提案です。診療側委員からは「患者の個別性」なども十分に勘案すべきとの注文が付いています。

 一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「2016年度改定で相当の対応をした。数%の要介護被保険者が医療保険リハビリに残っているが、診療報酬での対応は不要なのではないか」とコメント。2018年度改定で「要介護被保険者への標準的日数を超えたリハビリ料」(上記の脳血管疾患等リハビリでは147点の部分)は完全に廃止すべきとの考えが見てとれます。

リハビリ提供の施設基準、診療報酬と介護報酬でどう整合性を図るべきか

 医療保険リハビリから介護保険リハビリの移行に当たっては、「同じ医療機関で両者が提供されれば円滑に進むのではないか」との指摘もあります。この点について診療報酬では、「過去1年間に介護保険の(介護予防)通所リハビリの実績がない場合には、リハビリ料を2割減算する」旨の規定があります。ペナルティによって、介護保険リハビリの実施を求めるものです。

ただし、医療保険と介護保険ではリハビリ実施のための施設基準が異なるため、例えば「両方の施設基準を満たす場合には、他方でオーバースペック(加配など)となってしまうが、報酬上の評価(加算)などはない」という課題もあり、「施設基準の整合性」を求める声があります。

診療報酬と介護報酬では、リハビリ提供に係る施設基準が異なっているため、両方を満たそうとすると「他方でオーバースペック(加配)になってしまう」などの課題がある
診療報酬と介護報酬では、リハビリ提供に係る施設基準が異なっているため、両方を満たそうとすると「他方でオーバースペック(加配)になってしまう」などの課題がある
 
この点、医療保険・介護保険それぞれの施設基準は根拠をもって設定されており、「すべて同一にする」ことはできません。この点、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は「施設基準を適切に緩和していくべき」との見解を示しましたが、支払側の平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「施設基準設定を柔軟にしすぎればリハビリの質が低下する恐れもある」と指摘しています。例えば、介護保険の通所リハビリは集団で行われることもあり、医療保険のリハビリをこれに合わせれば「個別リハビリ」の質が低下してしまう可能性があり、平川委員はこの点を危惧しているのです。

今後、中医協と介護給付費分科会で、どのような工夫・調整が行われるのか注目が集まります。

リハビリ計画書、診療報酬と介護報酬でどう「合理化」していくか

 このテーマについては、4月に行われた中医協と社会保障審議会・介護給付費分科会との意見交換でも取り上げられ、そこでは「医療保険のリハビリと、介護保険のリハビリとで、例えば計画書に重複項目などがある。これを合理化すれば、円滑な情報提供が可能になり、移行にも資するのではないか」との指摘が行われています(関連記事はこちら)。

 この点について迫井医療課長は、「疾患別リハビリの計画書を、介護保険リハビリ事業所でも有用に活用できるよう、▼様式▼取扱い―を見直してはどうか」との論点を示しています。

 医療保険と介護保険のそれぞれで医師がリハビリ計画書を作成し、これに沿って理学療法士などが実際のリハビリを提供しますが、両者には▼診断名・障害名・原因疾患・経過▼合併症・コントロール状況(高血圧、心疾患など)▼要介護度▼心身機能・構造▼ADL▽社会参加・社会地域活動▼本人の生活目標―など共通項目があり、例えば介護保険の通所リハビリ計画においては、「疾患別リハビリの計画書添付で可とする」などの取扱いが考えられそうです。ただし、医療保険・介護保険のリハビリは目的や期間なども異なるため、様式を「まったく同じものとする」ことなどはできません。

医療保険と介護保険では、リハビリ計画書に記載すべき事項に重複する部分もあれば、異なっている部分もある
医療保険と介護保険では、リハビリ計画書に記載すべき事項に重複する部分もあれば、異なっている部分もある
 
 このほか、医療機関と介護リハビリ事業所とで情報連携を行った場合の評価なども検討される見込みです。

【更新履歴】維持期・生活期リハビリの記載に不正確な部分がございました。状態改善が見込める場合には回復期と同様に1日6単位まで、状態改善が見込めず維持を目的とする場合には1か月当たり13単位までとなります。お詫びして訂正いたします。記事は修正済です。

  

 

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