2017年8月までに716件の医療事故報告、院内調査のスピードは頭打ちか―日本医療安全調査機構



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 今年(2017年)8月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は42件。一昨年(2015年)10月の医療事故調査制度スタートから、累計で716件の医療事故が報告され、このうち6割超(63.0%・451件)で院内調査が完了し、遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で42件となっている―。

 こうした状況が、日本で唯一のセンターとして指定されている「医療安全調査機構」から9月8日に公表されました(機構のサイトはこちら)。

2017年8月、外科で8件、内科で6件の医療事故

 一昨年(2015年)10月に医療事故調査制度がスタートし、すべての医療機関の院長など管理者は、予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」をすべて、センターに報告することが義務付けられました。ただし、医療事故調査制度は「責任追及」ではなく、事故の原因を究明し「再発防止」策を構築することを目的としている点を忘れてはいけません(関連記事はこちら)。

管理者によるセンターへの報告を起点として、▼当該医療機関が、事故原因の調査(院内調査)を行い、その結果をセンターに報告する▼当該医療機関が、事故の内容や原因について遺族に説明する▼センターが、事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る—ことにつなげます。今年(2017年)3月には再発防止策の第1弾「中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―」が、9月には第2弾「急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析」が公表されています。

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
 
我が国唯一のセンターである医療安全調査機構は、毎月、医療事故の報告状況などを公表しており(前月の状況はこちら)、今年(2017年)8月には、医療事故が新たに42件報告され、制度発足からの累計報告件数は716件となりました。

 8月の報告は、病院からが40件、診療所からが2件で、診療科別に見ると▼外科8件▼内科6件▼循環器内科4件▼精神科3件―などで多くなっています。

2017年8月に、新たに42件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で716件の医療事故が報告されている
2017年8月に、新たに42件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で716件の医療事故が報告されている

 
 センターに報告しなければならない医療事故は、医療機関で生じたすべての死亡・死産事例ではなく、院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—死亡・死産事例に限定されます。例えば、「手の施しようのない重篤な状態で搬送された救急患者」は「死亡が予期される」ため報告対象から除外されます。

ここで医療機関においては「患者が予期せぬ死亡を遂げたが、センターに報告すべき医療事故だろうか?」、あるいは「初めての報告となるが、センターへの報告はどのように行えばよいのか?」といった疑問が生じることがあるでしょう。また遺族側には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。隠蔽されているのでは?」といった不信感をぬぐいされない方もおられることでしょう。こうした疑問を解決するために、センターでは医療機関・遺族からの相談に対応しており、今年(2017年)8月には、新たに142件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計は3571件となっています。新規相談の内訳は、▼医療機関から82件▼遺族などから54件▼その他・不明6件―という状況です。

 医療機関からの相談内容を見ると、「報告の手続き」が46件・56.1%を占めています。「医療事故に該当するか否かの判断」は15件・18.3%(前月から4.0ポイント低下)にとどまっており、制度の医療現場への浸透・運用の改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」設置など)などの効果が確実に現れています。

 一方、遺族などからの相談内容では、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が最多で31件・57.4%となっています。ただしこの中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも「報告すべき医療事故でない」ものも含まれており、「一般国民への制度浸透」はまだ十分とは言えないようです。

センターへの相談は2017年8月に142件あり、うち82件が医療機関から、54件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要だ
センターへの相談は2017年8月に142件あり、うち82件が医療機関から、54件が遺族などからのものとなっているが、相談の中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要だ

 
 医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあるため、「事故が発生した医療機関自らが、原因究明に向けた調査を行う」ことが重要です。調査の中で、院内体制やルール、遵守状況などを再点検することで、院内体制の改善、職員の意識向上が促され、結果として事故防止につながると期待されるためです。今年(2017年)8月に新たに院内調査が完了した事例は23件で、制度発足からの累計では451件となりました。これまでに報告された全716件のうち63.0%で院内調査が完了している計算です。調査完了割合は、前月(2017年7月)から低下しており、調査スピードが頭打ちになっている可能性が高まりました。院内の調査体制に起因するのか、調査に時間のかかる事故が増加しているのかなど、今後の状況を見守る必要があります。

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が済んだものは2017年8月に23件、制度発足からの累計で451件で、報告された事故全体の63.0%となった
医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が済んだものは2017年8月に23件、制度発足からの累計で451件で、報告された事故全体の63.0%となった
 
 ところで、遺族の中には「院内調査結果に納得できない」「院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)」と感じる人もいることでしょう。また小規模な医療機関などでは、「自力での院内調査が困難」というところもあります(医師会や病院団体などの支援団体によるサポートは整備されているが)。そこで、センターは「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整えています(ただし、院内調査が適正に実施されているのか、という観点での調査が中心となる)。この点、今年(2017年)8月にはセンターへの調査依頼は1件もなく、制度発足からの累計は42件(遺族から31件、医療機関から11件)のままです。このうち38件が「院内調査結果報告書の検証中」(院内調査が適切に行われたかの確認)、3件が「院内調査の終了待ち」がとなっており、センター調査の進捗状況を伺うことができます。

  

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