療養病棟、リハビリ提供頻度などに着目した評価を検討―入院医療分科会(3)



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 療養病棟において、リハビリと在宅復帰率との関係を調べると、「リハビリ専門職を合計1名以上配置する病棟」「リハビリを頻回に行う病棟」で在宅復帰率が高いことが分かる。2018年度の次期診療報酬改定に向けて、こうした点をどう考えるべきか—。

9月6日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」では、こういった議論も行われています(関連記事はこちらこちら)。分科会では、次回会合でこれまでの議論を整理した「中間まとめ」を行う見込みです。

9月6日に開催された、「平成29年度 第7回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」
9月6日に開催された、「平成29年度 第7回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

在宅復帰率、1回当たりリハ提供量と相関なく、リハ提供頻度と相関あり

 療養病棟入院基本料1(看護配置20対1以上、医療区分2・3の患者割合8割以上など、以下、療養病棟1)で、在宅復帰率50%以上などの基準を満たす病棟を評価する【在宅復帰機能強化加算】が2014年度の診療報酬改定で創設されるなど、療養病棟においても「在宅復帰」が重視されています。

 厚生労働省は「在宅復帰とリハビリとの関係」を分析した資料を提示しました。

 まず療養病棟におけるリハビリ1回当たりの提供量を見ると、一部に▼4単位以上▼2単位以上4単位未満―と比較的濃密なリハビリ提供を行う病棟もありますが、大部分(8-9割)では「2単位未満」にとどまっています。しかし、リハビリ1回当たりの提供量が多くなっても、在宅復帰率が上昇するという状況にはないようです。

療養病棟では、8ー9割では1回当たり2単位未満のリハビリ提供しかないが、一部には4単位以上・2単位以上4単位未満と比較的濃密なリハビリ提供をしている病棟もある
療養病棟では、8ー9割では1回当たり2単位未満のリハビリ提供しかないが、一部には4単位以上・2単位以上4単位未満と比較的濃密なリハビリ提供をしている病棟もある
1回当たりのリハビリ提供量と在宅復帰率との間に相関は見られない
1回当たりのリハビリ提供量と在宅復帰率との間に相関は見られない
 
次に、1週間当たりのリハビリ提供回数(頻度)に目を移すと、在宅復帰機能強化加算算定病棟・加算なし療養病棟1・療養病棟2の区分によって若干の差はありますが、▼2回以上4回未満▼4回以上6回未満―と言うところが多くなっています(8割程度)。
1週間当たりのリハビリ提供頻度は、療養病棟の区分別に若干の違いがあるが、2回以上4回未満・4回以上6回未満と言ったところが多い(約8割)
1週間当たりのリハビリ提供頻度は、療養病棟の区分別に若干の違いがあるが、2回以上4回未満・4回以上6回未満と言ったところが多い(約8割)
 
さらに分析対象となった病棟数は少ないものの、「1週間当たりのリハビリ提供回数が多いほど、在宅復帰率が高い」ことが分かりました。池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)は「数少なく集中的にリハビリを行うよりも、1回当たりの量は少ないながら頻回にリハビリを提供するほうがADL改善などにつながるというのは、現場感覚とも合っている」と指摘、療養病棟においても「患者の状態を改善させ、在宅復帰を目指す」ことが常識になっていると池端委員は強調し、「療養病棟におけるリハビリ提供の在り方」を考える必要があると指摘しています。
1週間のリハビリ提供頻度が高くなると、在宅復帰率が高まるという構図がありそうだ
1週間のリハビリ提供頻度が高くなると、在宅復帰率が高まるという構図がありそうだ
 
またリハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が合計1名以上配置されている療養病棟では、そうでない療養病棟に比べて在宅復帰率が高いことも分かっています。

ここからは、療養病棟における「頻回なリハビリ提供やリハビリ専門職の手厚い配置などを評価する加算を創設する」ことや「在宅復帰機能強化加算の要件に、頻回なリハビリ提供を盛り込む」ことなどが思い浮かびますが、神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「在宅復帰にはリハビリ以外のさまざまな要素(在宅におけるリハビリ提供や介護サービスの有無など)が関係してくる。リハビリのアウトカムを在宅復帰率で測定することが妥当か、さらに検討する必要があろう」とコメントしており、さらに多角的な分析が行われる見込みです。

療養病棟入院患者の相当数は医療区分に変化なし、ただし改善の評価求める声も

 療養病棟では、患者の状態を「医療区分」と「ADL区分」の2つの軸で評価し、両者は診療報酬点数や施設基準とも密接に関連しています。

厚労省は、療養病棟の入院患者について、一定期間(2か月間)の中で医療区分がどのように変化するのかを調査。それによると、改善・悪化する患者も一定程度いるものの、療養病棟1では6-7割、療養病棟2では5-7割が「同じ区分を維持する」ことが分かりました。

療養病棟1では、6-7割の患者で医療区分に変化はないが、一部に悪化・改善もある
療養病棟1では、6-7割の患者で医療区分に変化はないが、一部に悪化・改善もある
療養病棟2でも、5-7割の患者で医療区分に変化はないが、一部に悪化・改善もある
療養病棟2でも、5-7割の患者で医療区分に変化はないが、一部に悪化・改善もある
 
現在、「全患者」について「毎日」、医療区分・ADL区分の確認が行われますが、「相当数の患者は2か月間、医療区分が変化しない」状況からは、「確認のスパンを長くする(例えば1週間に一度など)」方向での検討が行われる可能性もありそうです。

また医療区分が改善した患者の割合を見ると、療養病棟1では▼医療区分3からの改善が11.3%▼医療区分2からの改善が5.0%—、療養病棟2では▼医療区分3からの改善が25.9%▼医療区分2からの改善が14.2%—となっており、療養病棟2のほうが「改善度合いが高い」状況です。この理由は明らかになっていませんが、池端委員は「同じ医療区分でも療養病棟1のほうが重い(例えば、療養病棟1では医療区分3の複数の項目に該当する患者が多いが、療養病棟2では医療区分3のどれか1つの項目のみに該当する患者が多いなど)患者を診ている可能性がある」とコメントしています。今後、病棟の種類ごとに「医療区分のどの項目に該当しているのか」といった観点での分析も必要かもしれません。

この点に関連して「医療区分などが改善した場合の診療報酬上のインセンティブがない」点が池田俊也委員(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)から指摘されました。介護報酬でもこの点が論点の1つとなっており、今後どういった検討が行われるのか、中央社会保険医療協議会と社会保障審議会・介護給付費分科会の議論に注目が集まります。

 
なお、池端委員は「療養病棟1では医療区分2・3の患者割合が8割以上とされており、患者の医療区分が改善した場合『退院』も検討しなければならず、厳しい基準である」と強調。医療区分2・3の患者割合をより細かく設定(8月4日の分科会では、8割・6割・4割などの段階的設置を提唱)すべきと要望しています(関連記事はこちら)。

重症患者を多数受け入れる療養病棟2もある、タイプ別の議論を求める声

 ところで療養病棟については、「療養病棟2の取扱い」も2018年度診療報酬改定における重要テーマの1となっています。

 病院全体で看護配置4対1(診療報酬上の基準に換算すると20対1)などを満たせない療養病床は2017年度末で経過措置が切れるため、「看護配置を手厚くする」「新設される介護医療院に移行する」などの選択肢が敷かれています。この点、「病院全体で看護配置4対1を満たせばよく、診療報酬上の25対1看護の療養病棟2は存続させて問題ない」との見方と、「病院全体では看護配置4対1以上が求められており、(傾斜配置は別にして)病棟単位での25対1は認めるべきではない」との見方の双方があるためです。

療養病棟2存続の是非については今後の中医協総会論議を待つ必要がありますが、神野委員は、▼病院の規模▼入院患者の状況▼看護職員の加配状況—などがさまざま(例えば医療区部2・3の患者割合が100%の病院もある)なことを踏まえ「タイプ別の議論」をすべきとの見解を示しています。

  

 

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