地域医療構想踏まえ、9月または12月までに「公的病院改革プラン」を策定せよ—厚労省



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 地域医療構想の実現に向けた議論が本格的にスタートしていることを踏まえ、公的病院などにおいて「地域の現状と課題」「自院の現状と課題」「地域において今後、自院が担う役割」「今後持つべき病床機能」「機能分化などに向けた年次スケジュール」などを明確にした【病院改革プラン】を作成してほしい—。

 厚生労働省は4日、こういった内容の通知「地域医療構想を踏まえた『公的医療機関等2025プラン』策定について(依頼)」を発出しました(関連記事はこちら)。

 救急医療や災害医療といった政策医療を担う公的病院などでは今年(2017年)9月末まで、それ以外の公的病院などでは今年いっぱい(2017年12月末)に改革プランを策定し、地域医療構想調整会議に提示することが求められます。

地域医療構想の実現に向け、公的病院などの機能をまず固める

 いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年に向けて、地域の医療・介護ニーズが飛躍的に増大していくため、現在の医療提供体制ではこれらに対応しきれないと指摘されています。そこで国は「病床機能分化・連携の推進」「地域包括ケアシステムの構築」の2つを最重要政策に位置付けています。

 とくに前者については、2025年における▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—の各病床数を推計した「地域医療構想」が全都道府県で策定され、この実現に向けた議論が、各地の地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で進められています。

 調整会議の進め方に特段の定めはありませんが、厚労省は、まず「▼救急・災害医療などの中心的な医療機関▼公的医療機関や国立病院▼地域医療支援病院・特定機能病院—などが担う医療機能を固める」ことから初めてはどうかと例示しています。まず中核機能を担う医療機関を定め、次いで他の医療機関がそれらとどう連携し、機能分担していくことが近道と考えられるからです。

さらに今般、地域医療構想に関するワーキンググループの意見を踏まえて、公的病院などに対し【病院改革プラン】の作成を求め、これを調整会議論議の土台にすることが求められるに至りました(関連記事はこちら)。公的病院などにとっては「負担」と感じられるかもしれませんが、地域の実情と自院の事態を客観的に把握することで、「見えなった」「見ようとしなかった」ものが見えるようになるため、積極的な改革プラン策定が求められます。ただし、期限は厳しく設定され(調整会議の論議のベースとするため)、救急医療や災害医療といった政策医療を担う公的病院などでは今年(2017年)9月末まで、それ以外の公的病院などでは今年いっぱい(2017年12月末)に改革プランを策定し、地域医療構想調整会議に提示することが求められます。また、改革プランと地域医療構想との間に齟齬が生じた場合には、改革プランの見直しなども求められます。

公的病院の改革プランには、地域で今後担うべき機能や、具体的な数値目標などを記載することが求められる
公的病院の改革プランには、地域で今後担うべき機能や、具体的な数値目標などを記載することが求められる
改革プランは、地域医療構想実現を目指すものゆえ、地域関係者の意見を踏まえ、調整会議の協議と齟齬のないものとする必要がある
改革プランは、地域医療構想実現を目指すものゆえ、地域関係者の意見を踏まえ、調整会議の協議と齟齬のないものとする必要がある
 
なお、改革プランの策定が求められるのは、▼公的医療機関(日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会、厚生農業協同組合連合会、北海道社会事業協会が開設する医療機関、ただし公立病院を除く)▼医療法第7条の2第1項第2号から第8号に掲げる者(共済組合、健康保険組合、地域医療機能推進機構、全国健康保険協会)が開設する医療機関▼その他の独立行政法人(国立病院機構、労働者健康安全機構)が開設する医療機関▼地域医療支援病院▼特定機能病院—ですが、例えば社会医療法人などにも自主的な【改革プラン】の策定が期待されています。

地域と自施設の現状と課題を客観的に把握することで、進むべき方向が明らかに

改革プランには次の点を具体的に記載することになります。
(1)構想区域の現状と課題
(2)自施設の現状と課題
(3)今後、自施設の▼地域で担うべき役割▼持つべき病床機能▼見直すべき点
(4)現在および2025年における、高度急性期から慢性期の病床数(方針)と年次スケジュール
(5)現在および2024年における診療科の見直し(維持、新設、廃止、変更・統合)
(6)▼病床稼働率▼手術室稼働率▼紹介率▼逆紹介率▼人件費率▼医業収益に占める人材育成費用の割合―などの数値目標

このうち(1)の「構想区域の現状・課題」では、地域における人口の推移、医療需要、医療受給の特徴などのほか、「急性期機能が重複していないか」「post acute機能が不足していないか」などを、地域医療構想を参考に記載します。

また【病院改革プラン】の要(自施設の客観的な把握)とも言える(2)の「自施設の現状と課題」では、診療実績や他医療機関などとの連携の実態を正確に記載するとともに、例えば「地域の医療需要の減少が見込まれる、近隣病院と機能の重複があり、現状を維持すべきか否かを検討する必要がある」「地域で不足するpost acute機能の整備に向けて、自院の役割を再検討する必要がある」などといった課題・検討テーマを明らかにします。

自施設の現状を客観的に把握し、課題を分析することで、自ずと進むべき方向が見えてくる
自施設の現状を客観的に把握し、課題を分析することで、自ずと進むべき方向が見えてくる
 
こうして(1)と(2)で地域と自施設の状況(現状と課題)を客観的に把握することで、自ずと「自院が将来目指すべき方向」が明らかになってきます。例えば、「地域において急性期入院医療を提供している。今後も急性期医療を提供する」と考えている病院であっても、地域と自院の現状を把握することで、実は「地域において急性期ニーズは急速に減少する」「高度な手術などが必要な高度急性期・急性期患者数は自院では減少傾向にあり、近隣の病院で急性期患者数が増加している」などの状況が明らかになるかもしれません。この場合、「機能強化して急性期を維持する」方向も考えられますが、「post acute機能に転換していく」方向もありえます。この方向を探るために、地域と自院の状況を「客観的に」把握することが不可欠なのです。この方向が明確になれば、(3)から(6)の各項目は、これらを具体化していけばよく、(1)と(2)が改革プランにおける極めて重要なポイントと言えると考えられます。
自院の進むべき方向が固まれば、あとは具体的な計画とスケジュールに落とし込んでいけばよい
自院の進むべき方向が固まれば、あとは具体的な計画とスケジュールに落とし込んでいけばよい

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