介護医療院、報酬設定論議始まる!医療療養からの転換を危惧する声も—介護給付費分科会(1)



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 2018年度から新設される介護医療院について、報酬や人員配置・構造設備に関する基準設定の議論が始まりました。

4日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、「介護療養病床からの転換を最優先すべき」との指摘が多くの委員から出た一方で、「医療療養病床などからの転換によって、介護保険財政が厳しくなり、保険料水準の高騰につながる」ことを危惧する意見も出されています。

8月4日に開催された、「第144回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
8月4日に開催された、「第144回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

介護療養からの転換、建て替えまでは多床室を認めるべきか

介護療養病床の設置根拠が2018年3月で切れることを受け、政府は▼医療機能▼介護機能▼生活機能—の3つの機能を兼ね備えた新たな介護保険施設「介護医療院」の創設を決定(改正介護保険法)。2018年4月から2類型の「介護医療院」が稼働します(関連記事はこちらこちら)。

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる
【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる
 
1つは「重篤な身体疾患を有する者」や「身体合併症を有する認知症高齢者」を主な入所者とする【介護医療院I】で、もう1つが「比較的容体の安定した者」を主な入所者とする【介護医療院II】です。
介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された
介護療養に生活機能をプラスアルファした新たな介護保険施設を創設し、利用者像によって2つに区分する考えが示された
 
注目されるのは、(1)報酬水準(2)人員配置(3)構造設備(4)転換促進策―の大きく4点が注目されます。

まず(1)の報酬水準については、年末の予算編成過程で決定される「改定率」とも大きく関係するため、現時点では具体的に「●●単位とすべき」などの議論には発展しませんが、4日の介護給付費分科会では瀬戸雅嗣委員(全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事)から「【介護医療院I】は現行の療養機能強化型A・B相当に、【介護医療院II】は介護老人保健施設相当(一定の加算を基本報酬に組み込む)とすべきであろう」との相場観が示されましたが、費用負担者側である小林剛委員(全国健康保険協会理事長)から「現行の介護療養病床など単位数から単純にスライドさせるのではなく、メリハリをつけるべきで」との注文が付きました。

介護療養病床からの円滑な転換のためには高水準の報酬が求められますが、後述するように医療療養病床などからの転換を考慮した場合、「介護保険財政への影響」をこれまで以上に考慮しなければならなくなり、厚労省がどのような舵取りをするのか注目されます。

 
また(2)の人員配置については、制度設計を行った社会保障審議会・療養病床の在り方等に関する特別部会で▼介護医療院Iは「介護療養病床相当」▼介護医療院IIは「介護老人保健施設相当以上」―との考え方が固められました。

この点、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)からは、「介護医療院IIの人員配置は、より手厚い転換型老人保健施設(介護療養型老人保健施設)相当とすべき」との指摘が出されています。転換型老健では、医療ニーズの高い高齢者への対応を見越し、例えば夜勤の看護配置41対1以上などを求めており、齋藤委員らは「介護医療院の設置趣旨などに鑑みて、医療ニーズへしっかり対応できる体制を確保する必要がある」旨を説いています。

 
また(3)の構造設備については、特別部会で例えば「居室面積は老健施設相当(1床当たり8.0平米)」といった指摘が出ていますが、多くの委員からは「円滑な転換を進めるために、既存の介護療養などが転換する場合には建て替えなどまでは『6.4平米の多床室』を認めるべき」との指摘が相次ぎました。もっとも、前述のように介護医療院は「生活機能」を重視する施設ゆえ、多床室であっても「家具やパーテーションなどによる間仕切りなどで、プライバシーに配慮した環境を整備する」ことが求められるでしょう。

介護療養からの転換を優先!医療療養からの転換をどう考えるか

一方(4)の転換支援では、「介護療養病床からの転換を促進するための支援策の継続・充実(例えば地域医療介護総合確保基金の活用など)」を求める点で委員間の意見は一致していると言えますが、「介護療養以外からの転換」については若干トーンが異なるようです。

介護医療院は介護保険法の本則に規定されているため、介護保険事業(支援)計画の枠内であれば新設も可能です。しかし、鈴木委員は「第7期介護保険事業(支援)計画期間中(2018-20年度)は介護療養からの転換を優先し、第8期計画期間(2021-23年度)も事前に手上げを行った介護療養からの転換を優先すべき」と具体的に提案。瀬戸委員や東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)もこの見解に賛同しています。さらに鈴木委員は、「急性期の大病院が介護医療院を新設することは認めるべきではない」と釘を刺しました。日本医師会は、大病院における、医療保険の地域包括ケア病棟の複数設置にも強く反対しており、同じ流れと言えそうです。

これに対し武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、真っ向からの反対はしていませんが「医療療養病棟からの転換も可能にすべき」との見解を示しています。さらに「急性期を名乗る一般病棟においても多数の慢性期入院患者がいる」状況を指摘し、暗に将来的な病床の大再編に向けた検討を進めてはどうかとの以降も示しています。

介護療養病床から介護医療院への転換は「介護保険制度内」の話ですが、医療療養病床などからの転換は、「医療保険から介護保険への転換」、つまり「医療費の一部が介護費に移る」ことを意味するため、端的に「介護保険財政が厳しくなる」「介護保険料の引き上げが必要になる」ことを意味します。とくに早期移行のために介護医療院の報酬を高く設定し、そこに医療療養病床からの転換が進めば、この影響はさらに大きくなります。

大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、香川県高松市長)や亀井利克委員(三重県国民健康保険団体連合会理事長、三重県名張市長)は、この点について介護保険の運営主体である市町村は強い不安を覚えていることを強く訴えました。東委員は、こうした介護保険財政への影響を抑えるためにも「当初は介護療養からの転換のみとすべき」と主張しています。

もっとも、医療療養病床などが介護医療院へ転換した場合、介護費は増えますが、医療費は減少するため、社会保障制度全体で見れば、報酬水準にもよりますが、大きな影響はないとも思えます。医療保険制度と介護保険制度とをまったく別個のものと考えるのか、例えば地域包括ケアシステムのように一体的に考えていくのか、この問題に限らず、今後の議論に大きな注目が集まります。

 
なお介護医療院は、介護療養病床などの転換先の1つである点を忘れてはいけません。すべての介護療養病床がすべて介護医療院に転換を迫られるものではなく、医療療養病床への転換や介護老人保健施設への転換など、病院側が自主的に選択し、転換を進めることになります。

医療外付け型、空ベッドを特定施設とした場合、個室を求めるのか

 上記のように、介護療養病床の中には「ベッド数を減らすことで、人員配置を手厚くし、医療療養病床などに転換する」選択を行うところもあるでしょう。この場合、減少分を特定施設入居者生活介護などの居住スペースとして活用できれば、円滑な転換にさらに資することになると考えられます。

社会保障審議会の特別部会では、こうした形態を「医療外付け型」(例えば病院+特定施設入居者生活介護)と名付け、介護療養病床などからの重要な選択肢の1つに位置付けています。

医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる
医療外付け型では、同一建物内でも医療機関と居住スペースの併設を認めることになる
 
この点について瀬戸委員は、「医療外付け型であっても、特定施設入居者生活介護であれば、基準に沿って原則『個室』とすべき」と主張しましたが、鈴木委員は「大都市部などで医療外付け型を推進するために、建て替えまでは現実的な対応(多床室の許可)を検討すべき」旨を提案しています。プライバシーなどへの配慮と、円滑な転換とのバランスをどのようにとるのか、今後の議論を注視する必要があります。

 

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