療養病棟、医療区分2・3患者割合を8割・6割・4割ときめ細かな設定求める意見も—入院医療分科会



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 2018年度の次期診療報酬改定に向けて、看護配置25対1の「療養病棟入院基本料2」をどのように取り扱うべきか—。

 4日に開催された診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」で、こういった議論が始まりました。

 支払側代表の立場で参画する本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)が「廃止し、新設された介護医療院への転換方策を検討すべき」と訴える一方、療養病棟運営者でもある池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)は「看護配置20対1の療養病棟入院基本料1へ移行しやすくあるよう、医療区分2・3の患者割合をより細かく設定した段階的な取り扱いを検討してはどうか」と提案しています。

8月4日に開催された、「平成29年度 第5回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」
8月4日に開催された、「平成29年度 第5回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

25対1看護配置の療養病棟2、2018年度以降どういった位置づけにするのか

療養病棟入院基本料は現在、看護配置20対1、医療区分2・3の患者割合80%以上の「療養病棟入院基本料1」(以下、療養病棟1)と、看護配置25対1、医療区分2・3の患者割合50%以上(2016年度の前回改定で導入)の「療養病棟入院基本料2」(以下、療養病棟2)があります。

療養病棟入院基本料の概要
療養病棟入院基本料の概要
 
ところで医療法では「療養病床の看護配置は4対1」となっており、これを診療報酬の看護配置基準に換算すると「20対1」となります。現在、病院全体で20対1を維持できない療養病床であっても、経過措置で2017年度末(2018年3月末)まで設置が認められますが、「25対1の療養病棟2を2018年度以降どう扱うのか」という大きな論点があります。ちなみに、同じく2017年度末で廃止される介護療養病床(介護療養型医療施設)については、6年かけて新設された介護医療院などに転換することになっています(関連記事はこちら)。

この点について本多委員は、療養病棟2の3割程度は医療区分2・3の患者割合50%を満たせていない点などに着目し、「看護配置25対1の療養病床は廃止する方向とし、介護医療院などへの転換方策を検討すべき」と主張。

一方、池端委員は「療養病棟2の一部では医療区分2・3の患者を集めきれていないが少し長い目で見守ってほしい。療養病棟2が廃止されれば、医療区分2・3の患者割合が8割に達しなければ、いきなり特別入院基本料を算定せざる得なくなってしまう。現在、医療区分2・3の患者を50%以上確保できない病院にとって80%以上のハードルは高すぎる。段階的な取り扱いを検討してほしい」と要望しました。池端委員はメディ・ウォッチに対し「たとえば、医療区分2・3の患者割合を▼80%以上▼60%以上▼40%以上—とするなどとすることが考えられる」とコメントを寄せています。

入院医療分科会では「療養病棟2の取扱いをどうするのか」というテーマに正面から答えを出すわけではありません(正面から議論する場は、中央社会保険医療協議会総会)が、今後の議論やデータにも要注目です(関連記事はこちら)。

医療区分、患者への医療提供頻度と一定の相関あり

また医療区分に関連して、厚生労働省からは次のようなデータが示されました。「医療区分が1・2・3と高くなるにつれて、患者の状態が不安定になり、医療提供頻度と一定の相関が見られる」ようです。

▼医療区分が高くなるにつれ、日常生活に支障を来す認知症患者の割合が高くなる

医療区分が上がるほど、日常生活に問題のある認知症患者の割合が高くなる
医療区分が上がるほど、日常生活に問題のある認知症患者の割合が高くなる
 
▼要介護認定を受けている患者について見ると、医療区分が高くなるにつれ、要介護3以上の重度者の割合が高くなる
医療区分が上がるほど、要介護度の高い患者割合が高くなる
医療区分が上がるほど、要介護度の高い患者割合が高くなる
 
▼医療区分が高くなるにつれ、経管栄養・経静脈栄養を使用する患者の割合が高くなる
医療区分が上がるほど、経管栄養などの患者割合が高くなる
医療区分が上がるほど、経管栄養などの患者割合が高くなる
 
▼医療区分が高くなるにつれ、医療的な状態の不安定な患者の割合が高くなる
医療区分が上がるほど、状態が不安定な患者の割合が高くなる
医療区分が上がるほど、状態が不安定な患者の割合が高くなる
 
▼医療区分が高くなるにつれ、医師による直接の医療提供頻度が高くなる
医療区分が上がるほど、医師による直接の医療提供頻度が高くなる
医療区分が上がるほど、医師による直接の医療提供頻度が高くなる
 
▼医療区分が高くなるにつれ、直接の看護提供頻度が高くなる
医療区分が上がるほど、直接看護の頻度が高くなる
医療区分が上がるほど、直接看護の頻度が高くなる

 
 一方、「診療行為をすべて出来高算定した」場合の総点数(ただし入院基本料を除く)を見ると、▼医療区分1では、医療区分2・3よりも引く▼医療区分2・3には重複部分が大きく、明確な差はない—状況も分かりました。検査や投薬、処置などの状況をより詳細に見ていく必要がありそうです。

入院基本料を除く総点数(出来高で算定したとして)を見ると、医療区分2と3の患者では大きな違いがなく、医療区分1の患者では低くなっている
入院基本料を除く総点数(出来高で算定したとして)を見ると、医療区分2と3の患者では大きな違いがなく、医療区分1の患者では低くなっている
 
 医療区分については、とくに区分1について「2・3以外という定義で、医療区分1が必ずしも軽症なわけではない。導入から10年が経過しており、そろそろ区分の見直しを検討する時期に来ている」との指摘が医療現場から出されていますが、今回のデータをそのまま受け止めると「医療区分1は現状を維持し、医療区分2と医療区分3の定義を見直すべき」との考えに結びつく可能性もありそうです。前述どおり、より詳細に医療提供内容を分析する必要があります。

 なお、この点に関連して武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)は「患者の状態を評価するツールとして、一般病棟や地域包括ケア病棟では重症度、医療・看護必要を用い、療養病棟では医療区分・ADL区分を用いており、療養病棟への転院・転棟で評価が切れてしまう。少なくともADLの項目を併せるなどの見直しを検討してはどうか」と提案しています。

療養病棟からの死亡退院は4割、「看取り」と考えるべきか

 さらに厚労省は、療養病棟1・2のいずれにおいても死亡退院が4割程度だが、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」は必ずしも十分に浸透していないとのデータも提示しました。

 単純に考えれば「院内での死亡が多いのであるから、ガイドラインの遵守を促進すべきでは」とも思えますが、池端委員は「死亡退院が4割だが、特別養護老人ホームで行うような静かな『看取り』とは異なる。可能な限り在宅復帰を目指し、積極的な治療を行ったものの、残念ながら治療の甲斐なく死亡される患者さんが多い」という点を考慮しなければいけないと強調。また神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「現在の報酬水準では、ガイドラインを遵守した看取りを推進することは難しい」と指摘しています。

療養病棟でも「在宅復帰」を重視する時代に

 また、療養病棟からの在宅復帰に関連して、厚労省からは▼療養病棟1の入院患者の1割強、療養病棟2の入院患者の2割弱は自宅に退院し、在宅医療の提供を受けていない▼医療区分1の4割程度、医療区分2の4分の1程度、医療区分1の1割程度は「医学的には外来・在宅でよい」が、他の要因で退院予定がない▼退院できない最大の理由は「家族の希望に適わない」(35.1%)▼リハビリ専門職種が合計1名以上配置されている病棟で、在宅復帰率が高い—というデータも提示されました。

医療区分1の患者の4割程度、医療区分2の4分の1程度、医療区分3の1割程度は「医学的には外来・在宅でもよいが、他の要因で退院予定がない」状況である
医療区分1の患者の4割程度、医療区分2の4分の1程度、医療区分3の1割程度は「医学的には外来・在宅でもよいが、他の要因で退院予定がない」状況である
理学療法士などのリハビリ専門職種配置が手厚い療養病棟のほうが、そうでないところよりも在宅復帰率が高い
理学療法士などのリハビリ専門職種配置が手厚い療養病棟のほうが、そうでないところよりも在宅復帰率が高い
 
 療養病棟1に在宅復帰機能強化加算が設定されるなど、療養病棟においても「在宅復帰の促進」が重視されてきています。本多委員からは「在宅復帰率やADL改善などのアウトカムに着目した評価を積極的に検討すべき」との指摘が出されています。

障害者施設、2018年度改定では重度肢体不自由児(者)への評価が鍵か

 4日に入院医療分科会では、▼障害者施設等入院基本料▼有床診療所入院基本料—についても議題となりました。

 前者の障害者施設に関しては、入院患者の半数超が「重度の肢体不自由児(者)」ですが、▼身体障害者の等級が「不明」「非該当」で、うち医療区分1の割合が療養病棟1よりも多い▼医療区分2・3の該当患者割合は療養病棟1よりも少ない—ことなどが分かりました。今後、さらなる分析(例えば年齢分布から、肢体不自由児と肢体不自由者の状況を見るなど)が行われることになります。

障害者施設に入院する重度肢体不自由児(者)の医療区分該当状況
障害者施設に入院する重度肢体不自由児(者)の医療区分該当状況
 
2016年度の前回改定で「重度の意識障害(脳卒中の後遺症の患者に限る)」について、患者の疾患・状態などで医療区分1・2に相当する場合には療養病棟入院基本料の評価体系を踏まえた評価(包括評価)とする、との見直しが行われましたが、2018年度改定では「重度の肢体不自由児(者)」の評価に関する見直しが検討されるようです。

 
また後者の有床診療所に関しては、▼眼科や産科などの専門クリニック▼地域包括ケアシステムの1要素となるクリニック—の2つに分けた議論を行う方向が確認されました。メディ・ウォッチでもたびたびお伝えしているとおり、有床診療所の施設数は減少の一途をたどっており(関連記事はこちら)、4日の入院医療分科会でも「地域医療に貢献してきた有床診療所がどんどん閉院している」状況を憂える意見が多数だされており、今後、地域医療に不可欠な有床診療所を存続可能とするような診療報酬での評価に向けた議論が行われます。

  

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