2016年度、自治体病院の6割超が赤字で、経営状況はさらに悪化—全自病



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 自治体病院(地方公営企業法適用病院)における2016年度の決算見込み額を調査したところ、赤字割合は前年度から4.9ポイント増加して62.8%となり、黒字病院は37.2%にとどまる。黒字病院の割合は、2009年の40.1%から2010年度に52.3%に増加したが、その後、2011年度:51.9%→12年度:48.4%→13年度:44.5%→14年度:43.3%→15年度:41.0%→16年度:37.3%と減少を続け、非常に厳しい状況である—。

全国自治体病院協議会(全自病)の邉見公雄会長は、12日の定例記者会見でこのような状況を明らかにしました(全自病のサイトはこちら:「平成28年度 決算見込額調査報告書(平成29年3月31日)」をクリックしてダウンロード可能)。

なお働き方改革について邉見会長は、「一般と同じ時間外労働規制をされれば、産科や救急など、日本の地域医療は崩壊してしまう。地方(田舎)の医療を支えている全自病の考え方を9月に公表する」考えを明らかにしました(関連記事はこちら)。

7月12日の定例記者会見に臨んだ、全国自治体病院協議会の邉見公雄会長
7月12日の定例記者会見に臨んだ、全国自治体病院協議会の邉見公雄会長

黒字割合は年々減少、500床以上の大病院での赤字増目立つ

今般の2016年度決算見込みは、全国428の自治体病院(地方公営企業法適用病院382、地方独立行政法人病院46)から得られた回答を分析したものです。ここでは、地方公営企業法適用病院(法適用病院)の状況を見てみましょう。

まず法適用病院382のうち、2016年度に黒字となるのは142病院で37.2%、赤字となるのは240病院で62.8%です。赤字病院の割合は前年度に比べて4.9ポイント増加(逆に言えば黒字病院が4.9ポイント減少)。

法適用病院の赤字・黒字割合
法適用病院の赤字・黒字割合
 
黒字病院割合の経年変化を見ると、▼2008年:29.1%→▼2009年:40.1%→▼2010年:52.3%→▼2011年:51.9%→▼2012年:48.4%→▼2013年:44.5%→▼2014年:43.3%→▼2015年:41.0%→▼2016年:37.2%—となっており、2010年をピークに減少傾向が続いています。邉見会長は、地域医療の崩壊が指摘されたかつての水準に近づいていることに強い危機感を訴えています。

 
病床規模別に赤字・黒字割合の変化(一般病院)を見ると、300床台・400床台の病院では前年から変化していません(300床台では赤字割合が65.5%、400床台では68.9%)が、その他の規模では赤字割合が前年から増加しています(100床未満では54.7%、100床台では72.2%、200床台では73.0%、500床以上では52.9%)。とくに500床以上の大病院では、赤字割合が前年に比べて13.7ポイントも増加しています。

病床規模別に見た法適用病院の赤字・黒字割合
病床規模別に見た法適用病院の赤字・黒字割合

給与費、薬品費、委託費の増加が自治体病院経営を苦しめる

次に決算の内訳を見てみると、100床当たりの総収益は前年に比べて1.4%増加しているものの、100床当たりの総費用が、これを上回る1.9%増となっているために、経営が悪化してしまったことが分かりました(全体では赤字となっている)。

100床当たり費用の中で、前年度から伸びが大きい項目を拾ってみると、▼職員給与費(前年度から3.5%増)▼薬品費(同2.2%増)▼委託費(同2.7%増)―などが目立ちます。給与費増の背景には「公務員俸給表の見直し(引上げ)」、薬品費増の背景には「超高額薬剤の保険収載」、委託費増の背景には「アウトソーシングの拡大」などがあります。邉見会長は「チーム医療を充実するために、さまざまな医療職を確保する必要がある」と述べ、医療の質向上のために費用がかかる点を訴えました。

 
また収入に目を移し、患者単価(患者1人1日当たり診療収入)を見ると、全体では入院4万8768円(前年度に比べて724円・1.5%増)、外来1万3847円(同423円・3.2%増)となり、前年度から増加しています。患者数の減少(1日平均患者数は入院では前年度から0.4%、外来では2.2%減少)を、単価のアップで補っている格好です。

一般病院の入院単価は5万147円(前年度に比べて1.5%増)となっており、病床規模別に見ると、▼100床未満:2万3838円(同0.7%増)▼100床台:3万2204円(同0.7%増)▼200床台:4万1961円(同1.0%増)▼300床台:4万8333円(同0.7%増)▼400床台:5万1548円(同1.8%増)▼500床以上:6万2985円(同2.1%増)―となっており、大規模病院では患者単価の上げ幅が大きいことが分かります。

法適用病院の患者単価
法適用病院の患者単価

地方独法病院、サンプル数少ないが法適用病院より良好な経営状況が伺える

なお、サンプル数が少ない地方独立行政法人病院(今回は46病院が回答)ですが、次のように、法適用病院に比べて経営状況が若干良好なことが伺えます。もちろん単純な比較はできませんが、参考にすべき点は少なくないでしょう(関連記事はこちら)。

▼赤字病院の割合は47.8%(法適用病院では62.8%)、黒字病院の割合は52.2%(同37.2%)

▼100床当たりの営業収益は前年度から2.8%増加し、営業費用はこれを上回る伸び(3.0%増)だが、経常損益では黒字となっている(同赤字)

▼1日平均患者数は、入院では前年に比べて1.2%増(同0.4%減)、外来は同じく0.2%減(同2.2%減)

▼病床利用率は全体で81.5%(同75.4%)

▼患者単価(一般病院)は入院6万4044円で、前年度比1.9%増(同5万147円・1.5%増)、外来1万7803円で、前年度比3.5%増(同1万3917円・3.2%増)

 

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