定期巡回や看多機の整備進まず、「ニーズの実態を精査すべき」との指摘も—介護給付費分科会(2)



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 2012年度に創設された新たな地域密着型の介護保険サービスである定期巡回随時対応型訪問介護看護(以下、定期巡回)や看護小規模多機能型居宅介護(以下、看多機)の整備が進んでいないが、全国的にニーズがどれほどあるのかを検証する必要があるのではないか—。

 12日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、委員からこういった指摘が出されました。地域包括ケアシステムの要と期待されるサービスですが、人員配置などを含めた規制が厳しいとの声もあり、今後、さまざまな角度から検討が進められます。

5月12日に開催された、「第138回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
5月12日に開催された、「第138回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

定期巡回は都市型のサービス、地方で少人数対象のオンコール体制は困難

 2018年度の次期介護報酬改定(診療報酬との同時改定)に向けて、介護給付費分科会では4月26日にキックオフ会合を開催。これまでに社会保障審議会の介護保険部会で指摘された事項や、経済財政諮問会議から検討を指示された事項をベースに、夏までに第1ラウンドとして大枠の議論を進めることを確認しています(関連記事はこちら)。

 12日の会合では、(1)定期巡回(2)小規模多機能型居宅介護(以下、小多機)(3)看多機―などの地域密着型サービスの現状と課題を整理し、2018年度改定に向けた検討の方向性を議論しています。

 まず(1)の定期巡回は、例えば毎日の定期的な訪問(食事介助や排せつ介助など)と、緊急時などに利用者からの要請に応える随時対応(訪問や電話での指示など)を組み合わせる地域密着型サービスです。要介護度が重くなっても住み慣れた在宅での生活を可能とする地域包括ケアシステム構築に向けて、2012年度に創設された新たな地域密着型サービスの1つです。

定期巡回随時対応型訪問介護看護の概要
定期巡回随時対応型訪問介護看護の概要
 

 これまでに「深夜・夜間の対応を考慮し、整備を躊躇してしまう」「定期巡回を利用すると区分支給限度基準額(1か月に利用可能な保険給付の上限)いっぱいになってしまう」との指摘があり、▼深夜・夜間のニーズはさほど多くないことを説明すると同時に、深夜・夜間・早朝はオペレータと訪問従事者との兼務を認める▼利用者の生活全般に着目し、主治医や看護師、他介護事業者などとの連携体制構築を「総合マネジメント体制強化加算」として基本報酬から切り離し、これを区分支給限度基準額の対象外とする—などの改善が行われました(関連記事はこちら)。

定期巡回随時対応型訪問介護看護の人員配置基準、夜間や深夜ではオペレータと訪問従事者との兼務が可能との緩和が行われた
定期巡回随時対応型訪問介護看護の人員配置基準、夜間や深夜ではオペレータと訪問従事者との兼務が可能との緩和が行われた
定期巡回随時対応型訪問介護看護の報酬体系、総合マネジメント体制強化加算として医師や看護師などとの連携体制を基本報酬から便宜上切り分け、これを区分支給限度基準額の外におき、利用しやすくしている
定期巡回随時対応型訪問介護看護の報酬体系、総合マネジメント体制強化加算として医師や看護師などとの連携体制を基本報酬から便宜上切り分け、これを区分支給限度基準額の外におき、利用しやすくしている
 

 このため事業所・利用者ともに増加してはいるものの、2016年4月時点で、事業所数は633か所、利用者数は約1万3800人にとどまっており、また、事業所整備が都市部に偏っているなどの課題があることを踏まえ、厚生労働省老健局振興課の三浦明課長は「さらなる整備を進める観点から、人員基準や資格要件などの在り方をどう考えるか」という論点を提示しました。例えば、事業所サイドからは「日中でもオペレータと訪問従事者の兼務を認めてほしい」などの要望が出されています。

定期巡回随時対応型訪問介護看護の事業所数は633、利用者は1万3800人程度にとどまっている
定期巡回随時対応型訪問介護看護の事業所数は633、利用者は1万3800人程度にとどまっている
定期巡回随時対応型訪問看護が整備されていない地域は地方に多く、都市型サービスであることが如実になっている
定期巡回随時対応型訪問看護が整備されていない地域は地方に多く、都市型サービスであることが如実になっている
 

 この点について齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)や伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局政策福祉局長)らは、▼医療ニーズが高い▼独居や高齢者夫婦のみ—といった利用者にとって重要なサービスであり、さらなる普及方策を検討すべきとの考えを強調。ただし、日中におけるオペレータ要件の緩和(訪問従事者との兼務を可能とする)については、「応需体制が崩れないよう、慎重に検討すべき」との考えを示しました。また及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会副会長)は、「保険者や事業者側の理解が不十分なために整備が遅れている可能性もある」と指摘しています。

 一方、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、創設から4年以上が経過していても整備が進まない点について、「ニーズが本当にあるのか」を確認する必要があると強調。厚労省老健局振興課の担当者も、過去の厚生労働科学研究などの結果からニーズの実態を改めて精査する考えを示しています。

 さらに鈴木委員は、「定期巡回は北欧型の特殊なサービスで、かつ3交代制で運営しているようだ。これをオンコール体制で運営することに無理があるのではないか」「都市部でサービス付き高齢者向け住宅などに定期巡回を併設し、居住者全員を利用者とするなどすれば経営は成り立つが、それでよいのか。少人数の利用者でも経営が成り立つようにしなければ、全国では普及しない」と踏み込んだ指摘を行い、制度設計を再検討すべきとの見解も示しています。

 

 なお定期巡回については、「集合住宅併設型で、要介護度の低い利用者に対する訪問が多い」ことなどが分かっています。鈴木委員の指摘するとおり、サ高住などに併設し、居住者の多くを利用者とすることで、移動コストが小さく、高い収益を得ることが見込めます。これが不適切なサービス提供に結びついていないか、今後、詳しく分析していくことが求められるでしょう。

サ高住などの集合住宅に併設されているなどの定期巡回では、要介護度の比較的低い利用者に対して、多くのサービスを提供している状況が伺える
サ高住などの集合住宅に併設されているなどの定期巡回では、要介護度の比較的低い利用者に対して、多くのサービスを提供している状況が伺える

小多機における外付けケアマネを認めるべきか、2018年度改定に向けて再燃

 次に(2)の小多機は、▼通い▼訪問▼泊まり—の3つの機能を備えた地域密着型サービスとして2006年に創設されました。2016年4月時点で、事業所数は4984か所、利用者数は8万5200人となっていますが、要介護度が重くなっても在宅生活を可能とするために、さらなる普及が必要と厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は考えており、人員基準や利用者定員(2015年度の前回介護報酬改定で定員を25人から29人に拡大している)をどう考えるかという論点を提示しています。

小規模多機能型居宅介護の概要
小規模多機能型居宅介護の概要
小規模多機能型居宅介護の報酬体系
小規模多機能型居宅介護の報酬体系
 

 ところで小多機については、「外付けのケアマネジャーを認めるべきか」という点が以前から議論されています。

 居宅サービスの利用者が小多機を利用する場合、「柔軟かつ迅速なケアプラン変更」などを可能にするために、小多機のケアマネジャーを利用することになります。例えば、●月×日に「通い(通所)」サービスを受ける計画であってが、体調がすぐれないために「訪問」サービスへの切り替えや医療機関受診などのほうが好ましいとなったとき、小多機のケアマネジャー(内マネ)であれば迅速かつ柔軟な対応が可能ですが、外部のケアマネジャー(外マネ)ではこうした対応が難しいとの理由からです。鈴木委員や齋藤訓子委員は、この趣旨に遡って考慮すれば「外マネ問題の議論は終わっている」との考えを示しています。

しかし、この仕組みには「利用者の状態などを熟知した『馴染みのケアマネジャー』と切れてしまう」というデメリットがあるとも指摘されます。鷲見よしみ委員(日本介護支援専門員協会会長)は、「内マネのメリットは理解できるが、小多機の運営方針によってサービスが決定される危険もある」とし、利用者の状態などを考慮し、第三者的な中立の視点でケアプランを作成するというケアマネジメントの本質を忘れてはいけないと強調しました。

 この点について武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)の代理として出席した清水紘参考人(日本慢性期医療協会副会長)は、「ベースとなるケアプランを外マネが作成し、迅速かつ柔軟な対応を内マネが行うことで、両者のメリットを享受できるのではないか」との提案を行ったことが注目されます。情報連携や報酬請求などで詰めるべき点がありますが、積極的に検討していくべきでしょう。

小規模多機能型居宅介護の外付けケアマネジャー問題について、2018年度介護報酬改定で結論を出すことが指示されている
小規模多機能型居宅介護の外付けケアマネジャー問題について、2018年度介護報酬改定で結論を出すことが指示されている
 

 このほか三浦振興課長は、「小多機と他サービスとの併用」を論点の1つとして提示しています。三浦課長は、新たなサービス類型の創設ではなく、必要なサービスを組み合わせて利用する場合の連携方策などを議論してほしいと考えているようです(現在は、▼訪問看護▼訪問リハビリ▼居宅療養管理指導▼福祉用具貸与―が併用可能)。

 なお、一部介護事業者や有識者の提唱する「新型多機能」については、鈴木委員を初め、多くの委員が批判していることはメディ・ウォッチでお伝えしたとおりです(関連記事はこちら)。

看多機事業所は318にとどまり、普及に向けてサテライト型設置を認めるべきか

 さらに(3)の看多機は、2012年度に「小多機」と「訪問看護」の複合型サービスとして創設されたものです。より医療ニーズの高い患者について、在宅限界を高めることが狙いです(関連記事はこちら)。

看護小規模多機能型居宅介護の概要
看護小規模多機能型居宅介護の概要
看護小規模多機能型居宅介護の報酬体系、定期巡回同様に、2015年度改定で総合マネジメント体制強化加算を区分支給限度基準額の外に置き、利用推進を促した
看護小規模多機能型居宅介護の報酬体系、定期巡回同様に、2015年度改定で総合マネジメント体制強化加算を区分支給限度基準額の外に置き、利用推進を促した
小規模多機能型居宅介護や訪問看護ステーションの機能を拡充して看護小規模多機能型居宅介護となるケースが多い
小規模多機能型居宅介護や訪問看護ステーションの機能を拡充して看護小規模多機能型居宅介護となるケースが多い

 

 しかし、2016年4月時点で、事業所数は318、利用者数は5100人にとどまっています。ここについても定期巡回と同様に、「サービスの普及を進めるべき」との意見と、「サービス普及の前にニーズの実態を明らかにすべき」との意見があります。

看護小規模多機能型居宅介護事業所はわずか318にとどまっている
看護小規模多機能型居宅介護事業所はわずか318にとどまっている
看護小規模多機能型居宅介護の利用者は5100名程度にとどまっている
看護小規模多機能型居宅介護の利用者は5100名程度にとどまっている

 

 この点について厚労省の鈴木老人保健課長は、「サテライト看多機をどう考えるか」という論点を掲げました。小多機では本体事業所を核として、そこに人員基準などを緩和した「サテライト小多機」を設置することが可能ですが、現在「サテライト看多機」の設置は認められておらず、看多機がサテライト事業所を設置する場合には「サテライト小多機」とするよりないのです。

 齋藤訓子委員や瀬戸雅嗣委員(全国老人福祉施設協議会副会長)らは、「看多機の拡充を図るためにサテライト看多機を認めるべき」と主張しましたが、鈴木委員は、「サテライト看多機を認めるとなれば人員基準の緩和などが行われ、小多機の基準とそれほど変わらなくなる。サテライト看多機の設置は時期尚早で、ニーズがあるのであれば本体の看多機を設置すべきであろう」と反論しています。

 さらに、鈴木老人保健課長は、看多機において「看取りまで対応する体制」の在り方も検討してほしいと要請しており、医療機関との連携強化などの体制評価に向けた議論が行われそうです。この点、本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「看取りのアウトカムを評価すべき」と注文を付けています。

 

 なお、看多機において延長されている「事業開始支援加算」(開設から1年未満の新規事業所で安定した利用者の確保が難しい場合に、2017年度まで1か月当たり500単位を算定できる)を再延長すべきか否かについても賛否が分かれています。鈴木委員は「参考値とはいえ、看多機の収支差率は2013年度の1.4%から15年度の6.3%と改善しており、再延長は不要」と指摘。今後の介護事業経営実態調査結果などを踏まえて検討されます。

 

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