2018年度同時改定に向け、「病床の機能分化・連携」を推進する入院基本料を検討せよ―経済・財政一体改革推進委員会



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 2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定においては、医療費が高齢化の進展を上回って伸びている状況に鑑み、国民負担や医療機関の経営状況などを踏まえて、▼地域医療構想の実現に資するよう、病床の機能分化・連携を推進する入院基本料の在り方▼医療介護の連携強化に向けた診療報酬・介護報酬の在り方▼自立支援に向けた介護サービス事業者に対するインセンティブ付与のためのアウトカム評価▼生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和―などを検討していく必要がある—。

 経済財政諮問会議の下部組織である「経済・財政一体改革推進委員会」が4月28日に開催され、こういった方向が確認されました(関連記事はこちら)。

7対1の厳格化や地域包括ケア病棟創設などを踏まえ、病床機能分化を推進

 推進委員会は、「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」を着実に実行するために設けられた専門調査会です。

 4月28日の会合では、社会保障や国と地方のシステムなど、個別分野について集中的に検討する各ワーキンググループから「今後の対応方向」などについて報告を受けました。

 社会保障ワーキングからは、▼医療介護提供体制改革▼医療費適正化▼2018年度診療報酬・介護報酬改定▼介護保険制度改革▼薬価制度改革と薬剤の適正使用▼人生の最終段階における医療の在り方—などについて、今後の対応方向に関する検討状況が報告されています。

 このうち2018年度同時改定に関しては、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となり、医療・介護ニーズが急速に高まる2025年に向けて、「国民1人1人が状態に応じた適切なサービスを受けられるよう」な医療・介護提供体制の整備を報酬面から推進することが必要と指摘。次のような点について検討を行う必要があると訴えています。

▼医療費の伸びのうち、人口・高齢化の要因は半分程度となっており、これを上回る医療費の伸びが大きいことや、保険料などの国民負担、物価・賃金の動向、医療費の増加に伴う医療機関の収入や経営状況、保険財政や国の財政に係る状況などを踏まえつつ、診療報酬改定の在り方について検討する

▼医療機関の地域連携強化に向けたこれまでの診療報酬改定内容を検証する

▼地域医療構想の実現に資するよう、病床の機能分化・連携を推進する入院基本料の在り方や介護保険の新施設(介護医療院)の介護報酬・施設基準の在り方などを検討する

▼7対1入院基本料の厳格化や地域包括ケア病棟の創設などの取組みを踏まえつつ、病床の機能分化・連携の取組などを更に後押しする

▼患者の状態像に即した適切な医療が提供されるようにする観点から、報酬水準や算定要件のあり方を中医協において検討し、介護施設、高齢者住宅、在宅医療などへの転換などの対応を進める

▼医療介護の連携強化(看取り、訪問看護、リハビリ、関係者の調整・連携など)に向けて、診療報酬・介護報酬の両面から対応する

▼自立支援に向けた介護サービス事業者に対するインセンティブ付与の在り方を検討し、2018年度改定で対応する

▼生活援助を中心に訪問介護を行う場合の人員基準の緩和や、通所介護などの給付の適正化について検討し、2018年度改定で対応する

 内容そのものに目新しい項目は見当たりませんが、今後の中央社会保険医療協議会や社会保障審議会・介護給付費分科会の議論に大きな影響を与えることは必至と言えます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

地域医療構想の実現に向け、「基準病床数」の考え方を踏まえて知事の権限強化も検討

 また医療提供体制改革に関しては、地域医療構想の策定完了を受け、「病床の役割分担を進めるため、手術やリハビリの件数などのデータを国から提供し、これを活用して『個別の病院名』や『転換する病床数』などの具体的対応方針の速やかな策定に向けて、2年間程度で集中的な検討を促進する」よう求めています(関連記事はこちら)。

 さらに、病床機能の分化・連携は「医療機関の自主的な取り組み」によって進めることが基本との考え方は崩さないものの、自主的な取組みによる分化・連携が進まない場合には「都道府県知事がその役割を適切に発揮できるよう、権限のあり方について、速やかに関係審議会において検討を進める。その際、基準病床制度の取扱いを参考にすべきとの考え方にも留意する必要がある」との考えを明確にしました。

 都道府県知事のよる機能転換に向けた命令権限は自治体病院などに対するものです。このため自治体病院が地域の基幹病院となっている地方では、比較的、機能分化・連携はスムーズに進むと考えられます(すでに青森県などでは個別病院名を示した計画も策定されている)が、民間病院の多い都市部では、機能分化・連携の推進に向けた都道府県知事の力はそれほど及びません。このため「都道府県知事の権限強化」を求める声が多くなっていますが(関連記事はこちら)、日本国憲法で保証される「営業の自由」(第22条第1項から導かれる)や「財産権」(第29条)に抵触する可能性が極めて高く、慎重な議論が必要です。

 この点、「基準病床数」現行制度として動いていることから憲法に抵触するとは考えにくいですが、この考えを、例えば▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—の機能ごとに展開することで、「この地域では急性期のベッド数が過剰であり、新規の開設は認められない。新規開設は不足する回復期のみである」と規制することが、果たしてどこまでの規制が可能なのか、今後の動きを注視する必要がありそうです。

7対1入院基本料の「算定状況」を見ると、沖縄や福岡で多く、岩手や和歌山で少ない

 また4月28日の委員会では、評価・分析ワーキンググループの藤森研司委員(東北大学大学院医学系研究科・医学部教授)による「医療提供状況の地域差」に関する資料も提示されました。

 DPCを含めた7対1・10対1入院基本料の算定状況(2015年5-2016年5月審査分)について、各都道府県の年齢構成の違いを調整し「レセプトの出現比(SCR)」として指数化すると、7対1では▼沖縄県▼福岡県▼石川県▼群馬県—などで全国標準より多く、▼岩手県▼和歌山県▼高知県▼新潟県―などで少ない、また10対1では▼高知県▼大分県▼愛媛県▼和歌山県—で多く、▼栃木県▼愛知県▼埼玉県▼神奈川県—などで少ない、といった状況が示されています。

7対1では▼沖縄県▼福岡県▼石川県▼群馬県—などで全国標準より多く、▼岩手県▼和歌山県▼高知県▼新潟県―などで少ない、また10対1では▼高知県▼大分県▼愛媛県▼和歌山県—で多く、▼栃木県▼愛知県▼埼玉県▼神奈川県—などで少ない
7対1では▼沖縄県▼福岡県▼石川県▼群馬県—などで全国標準より多く、▼岩手県▼和歌山県▼高知県▼新潟県―などで少ない、また10対1では▼高知県▼大分県▼愛媛県▼和歌山県—で多く、▼栃木県▼愛知県▼埼玉県▼神奈川県—などで少ない
届出病床数ではなく、実際に診療報酬が支払われている「レセプト出現率」の地域差を分析している
届出病床数ではなく、実際に診療報酬が支払われている「レセプト出現率」の地域差を分析している

 

 最近では日本医師会や病院団体などが、「届け出病床数ベースだけでなく、稼働率も考慮して(つまり算定状況で)、7対1病床数の在り方などを検討する必要がある」と強く訴えており、レセプト出現率は重要な基礎資料となりそうです(関連記事はこちら)。

 

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