2018年度予算編成に向け、「重症度、医療・看護必要度」などの厳格化を要請—財政審



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 2018年度の診療報酬改定においては、7対1入院基本料の「重症度、医療・看護必要度」などの算定要件を一層厳格化すべきである。また、入院基本料ごとに「どのような医療を提供しているか」を検証し、看護配置でなく機能によって評価される仕組みを目指すべきである—。

 20日に開かれた財政制度等審議会・財政制度分科会では、こういった議論が行われました。また、介護報酬についても「自立支援・重度化防止に向けた質の高いサービス提供が行われていない場合には、基本報酬の減算も含めた適正化を図るべき」などという方向も提示されています。

軽度の要介護者への生活援助サービスの在り方など、改めて議論に

 2018年度予算編成に向けて、財政制度分科会では社会保障改革の論議を始めています。年末にまとまる建議はもちろん、それまでにもさまざまな改革提言が行われ、中央社会保険医療協議会や社会保障審議会・介護給付費分科会などの議論にも影響を及ぼします。

 今後検討する事項として、(1)医療費適正化に向けた診療報酬の特例の活用(2)病床再編などに向けた都道府県の体制・権限の整備(3)かかりつけ医の普及の観点からの外来時の定額負担(4)市販品類似薬に係る保険給付の見直し(5)軽度者に対する生活援助サービスその他の給付の在り方(6)金融資産などを考慮した負担を求める仕組みの医療保険への適用(7)後期高齢者の窓口負担の在り方(8)診療報酬・介護報酬の適正化(9)先発品価格のうち後発品に係る保険給付を超える部分の負担(10)生活習慣病治療薬などの処方の在り方—があげられています。

医療・介護制度改革の視点と、具体的な検討項目(赤字部分が今後の検討テーマ)
医療・介護制度改革の視点と、具体的な検討項目(赤字部分が今後の検討テーマ)

 

 (2)は、厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」で、(3)や(4)(6)(7)などは社会保障審議会・医療保険部会で、(5)は社会保障審議会・介護保険部会で、(8)は中央社会保険医療協議会で、それぞれ具体案を議論することになるでしょう。(3)の「外来時定額負担」や(5)の「軽度者の生活援助サービスの給付」などについては、すでに社会保障審議会の部会で議論がされたことは記憶に新しいでしょう。

 (5)の軽度者の生活援助サービス給付の見直しについては、介護保険部会が「要支援者への訪問・通所サービスの総合事業への移行状況を確認してから検討すべき」旨の意見をまとめています。一方で、厚労省は「生活援助サービス中心に訪問介護を行う事業所の人員基準緩和」(報酬の引き下げにつながる)といった論点も議論の中で提示しており(介護給付費分科会で議論される見込み)、また2018年度中に「要支援者への訪問・通所サービスが総合事業に完全移行する」ことなども踏まえ、引き続き議論が行われることになります(関連記事はこちら/a>とこちら)。

看護必要度の厳格化、中医協論議で診療側には強い向かい風に

 (8)の診療報酬について財務省当局は、次のような改革の方向性を明らかにしています。

(a)7対1⼊院基本料について、重症度、医療・看護必要度など算定要件の一層の厳格化を行うべき

(b)入院基本料ごとに、具体的にどのような医療を提供しているか検証したうえで、看護職員配置ではなく、提供している医療の機能(高度急性期、急性期、回復期など)で評価される仕組みを目指すべき

(c)介護医療院などの受け皿に係る報酬の検討と併せて、療養病床の報酬水準や算定要件の適正化・厳格化を図り、「医療の必要性が低い患者を対象としている病床」について、生活機能を兼ね備えたより効率的な受け皿への移行を促していくべき

(d)調剤報酬について、対物業務から対人業務へ評価を引き続き重点化し、更なる抜本的な適正化を行うべき

(e)門内薬局や門前薬局などの業務実態など、様々な形態の保険薬局が実際に果たしている機能を精査した上で、院内調剤と比較してどの程度の機能を果たしているかという観点も含め、報酬のあり方を検討すべき

 

 このうち(a)(b)については、早くも中央社会保険医療協議会で舌戦が始まっており、財務省と同じ方向を目指すべきとする支払側と、さらなる看護必要度の見直しで医療現場が混乱すると反対する診療側とで、大きな意見の隔たりがあります。今後、下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」を中心に、看護必要度の実態調査結果などを踏まえた議論が行われますが、財務省の見解は診療側にとって強い向かい風となるでしょう(支払側には当然、追い風になります)。

7対1入院基本料などにおける「重症度、医療・看護必要度」の厳格化を財務省は要請。さらに将来的に、「看護配置でなく、提供している医療機能に応じた報酬」にすべきとも提案している
7対1入院基本料などにおける「重症度、医療・看護必要度」の厳格化を財務省は要請。さらに将来的に、「看護配置でなく、提供している医療機能に応じた報酬」にすべきとも提案している

自立支援や重度化防止に資する介護サービスの評価、厚労相と同じ方向

 一方、介護報酬については、次のような改革の方向性が示されています。

(i)機能訓練などの自立支援・重度化防止に向けた質の良いサービス提供がほとんど行われていないような場合には、基本報酬の減算措置も含めた介護報酬の適正化を図るべき

(ii)「サービス付き高齢者向け住宅」などを中心に、必要以上に在宅サービス提供がなされていないか実態調査を行った上で、給付の適正化に向けた介護報酬上の対応を検討すべき

(iii)通所介護などその他の給付の適正化について、2018年度改定で対応する(改革工程表に記載済)

(iv)「自立支援・重度化防止に向けた介護」を促す介護報酬上のインセンティブについては、例えば、利用者の「要介護度の改善度合い」などのアウトカムに応じて、事業所ごとに、介護報酬のメリハリをつける方向で検討すべき(ただし、クリームスキミング(改善見込みのある利用者の選別)を回避する必要性にも留意し、専門職による機能訓練の実施といったプロセス評価等を組み合わせることを検討する)

(v)介護ロボットの活用については、予算事業を有効活用しつつ、導入効果を分析・検証し、人員・設備基準の緩和につなげることで、生産性の向上を図り、介護人材不足にも対応していく観点から検討を進めるべき

(vi)都道府県・市町村におけるデータ分析力を高め、需要を適切に見込みながら計画的な制度運営に努めるとともに、供給が需要を生む構造を排除する観点から、ケアプランの検証などを通じて、真に必要なサービスの利用を徹底すべき

(vii)市町村(保険者)による介護費適正化インセンティブを強化するため、具体的かつ客観的な成果指標(例:年齢調整後1人当たり介護費の水準や低下率など)に応じて、調整交付金(介護給付費の5%)の一部を傾斜配分する枠組を導入すべき

 

 塩崎恭久厚生労働大臣も、(i)や(iv)につながる2「科学的介護」(自立支援に向けたエビデンスのある介護サービス)の推進を行う考えを示しています。2018年度の介護報酬改定で、どこまでアウトカム評価に基づく報酬設定が議論されるかは見通せませんが、「下地」が構築される可能性は否定できないでしょう。

要介護度の改善など「自立支援・重度化予防」に向けて、介護報酬の見直し(効果的なサービスを行わない事業所での減算など)を行うよう提案
要介護度の改善など「自立支援・重度化予防」に向けて、介護報酬の見直し(効果的なサービスを行わない事業所での減算など)を行うよう提案

医師の偏在対策、財務省は「規制的手法」の検討も要請

 (2)の病院・病床の機能再編に関しては、▼病床機能報告における定量的基準の速やかな検討▼機能分化に向けた要請・勧告に従わない「民間」医療機関への、と都道府県知事による対処権限の付与・強化—を行うよう求めています。

 前者の定量基準については、医療資源投入量などを用いることはナンセンス(高額な新薬の抗がん剤を使う診療科で高度急性期になりやすいが、これが妥当か)なため、厚労省は「特定入院料の施設基準と各機能の紐づけ」という定量的基準の設定をすでに行っています。今後、「一般病棟入院基本料の算定病棟と診療内容との関係」についての分析などが進められると思われ(関連記事はこちら)、これは前述した診療報酬の(b)の論点とも密接に関係します。

病床機能報告制度において、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の「基準」が定性的なため、これを定量化すべきと財務省は提案
病床機能報告制度において、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の「基準」が定性的なため、これを定量化すべきと財務省は提案

 

 また財務省は、機能再編に関連して「医療従事者の需給の在り方」にも言及。「マクロでの医師数増が、医師不⾜の地域域・診療科の医師数増につながるよう、保険医の配置・定数の設定など、医師配置などにかかる『規制』も含めた実効的な偏在是正策を導⼊し、国・都道府県の権限を強化すべき」との方向を示しています。しかし、厚労省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」では、規制的手法による偏在是正を否定しています。財務省の意向をどう考えていくのか、今後の厚労省検討会(医療従事者の需給に関する検討会や、医師需給分科会など)の議論が注目を集めます(関連記事はこちら)。

  

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