ビジョン検討会報告書を踏まえ、ステークホルダー参加の審議会などで政策立案—社保審・医療部会



 「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(以下、ビジョン検討会)にはステークホルダー(利害関係者)が参加していないため、政策決定は行えない。ビジョン検討会の報告書を踏まえ、ステークホルダーが参加する審議会・検討会で議論・検討し、政策を実現していくことになる—。

 20日に開催された社会保障審議会・医療部会で、厚生労働省医政局の神田裕二局長はこのように強調しました。多くの委員が「ビジョン検討会は各審議会などの上位にあり、報告書の実現を『指示』しているように感じる」と指摘をする中、神田医政局長は上記のように「ビジョン検討会と、各審議会・検討会とは性格が異なる」ことを説明し、上意下達の関係(指示を行う)にはない点について理解を求めました。

4月20日に開催された、「第51回 社会保障審議会 医療部会」
4月20日に開催された、「第51回 社会保障審議会 医療部会」

ビジョン検討会はステークホルダーが参加しておらず、政策の立案・実現はできない

 メディ・ウォッチでもお伝えしていますが、医療従事者の需給推計を行うに当たり「新たな働き方、医療従事者像」や「最新のデータ」などを踏まえるべきとの指摘を受け、厚労省は「ビジョン検討会」を省内に設置。結論が出るまでの間、「医療従事者の需給に関する検討会」や下部組織は開催を見送られていました(関連記事はこちら)。

 こうした点について、検討会委員らは強い不満を漏らしており、20日に開催された「医療部会」や「医療従事者の需給に関する検討会」でも強い批判が出されました。医療部会では、中川俊男委員(日本医師会常任理事)から「ビジョン検討会の報告書では『関係審議会等でこの提言(報告書)に基づいた検討が行われ、実現の見通しが明らかにされるべきである』などとしており、医療部会などに『指示』をしているのか」と不快感を提示。山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)らも同旨の見解を示しました。

 これに対し神田医政局長は、「上意下達や指示の関係ではない。政策の決定や実現には、関係者が集い調整や議論を行う必要があるが、ビジョン検討会にはステークホルダーが委員に入っていないので政策決定や政府の方針を決めることはできない。ビジョン検討会の報告書を踏まえて、ステークホルダーが参加している審議会や検討会で調整・議論してもらう必要がある。医師の偏在対策などで法律改正が必要な事項については、当然、医療部会に諮ることになる」と説明し、理解を求めました。

 また中川委員はビジョン検討会報告書に「診療報酬に関係する事項(包括評価の導入など)」が多数盛り込まれている点にも触れ、「これに中央社会保険医療協議会が従わなければならないのか」と質問。神田局長は「保険局の所管である」と断りを入れた上で、「報告書の内容を丸ごと中医協で議論することはないと思う。個々の提言について、熟度に応じて中医協に諮り、議論してもらうことはありうる」との見方を示しています。

 

 ところで、ビジョン検討会の議論と併せて、厚労省は「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」(いわゆる10万人調査)を実施。そこからは「医師の44%が、今後、地方(東京23区および政令指定都市、県庁所在地などの都市部以外)で勤務する意思がある」ことなどの結果が示されています。

 調査結果について邉見公雄委員(全国自治体病院協議会会長)は、「すでに地方勤務している医師も入った数字ではないか。『地方勤務を希望する』と述べるが、実際には地方にはこない医師が多い。実態に合わず、この数字を信じるほど私はお人よしではない」と疑問視。木戸道子委員(日本赤十字医療センター第二産婦人科部長)も「地方には、例えば東京の吉祥寺も含まれるようだ。また当直とオンコールを分けないなど、データの信頼性に疑問がある」と指摘しています。

 この点、厚労省医政局医事課の武井貞治課長は、さらに詳細な分析を行う考えを述べるにとどめました。また医事課の担当者は、「東京で勤務している医師に限定すれば、地方勤務の意思を持つ方は確かに44%よりも少ない。詳細なデータを、医療従事者の需給に関する検討会などに提示したい」と述べています。

医療機関のホームページも広告に含めるが、「広告可能事項」の限定を解除

 20日の医療部会では、厚労省から▼2018年度からの2第7次医療計画(関連記事はこちら)▼地域医療に求められる専門医制度の在り方などを議論する「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」の設置(関連記事はこちら)▼医師も「罰則付き時間外労働の上限規制」の対象とすることなどを盛り込んだ働き方改革実行計画医療法改正案—についても報告が行われました。

 このうち「医療法改正案」について厚労省医政局総務課の中村博治課長は、与党との協議なども通じて、「看護師などに対する行政処分に関する調査規定の創設」をした場合、他職種との整合性(ちなみに医師や歯科医師では調査規定がすでにある)などを考慮し、今般は「見送り」としたことを説明しています。

 また一部の医療機関ホームページで虚偽や誇大な表現がなされている点を是正するための措置として、「文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(広告)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」旨などを定めました。ホームページも「医療を受ける者を誘引するための手段」と考えられ、広告に該当するものと考えられます。

 ところで医療機関の広告では、広告可能な項目(診療科名や設備など)が決まっています(限定)が、ホームページでは有用な情報の提供も行われることから、「医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める場合」には、この限定が解除されることになります。詳細については改正法成立後に、医療関係者や消費者代表などを含む検討会が設置され、そこで議論されます。

    

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