医科入院・入院外とも、本人より家族の1人当たり医療費が高い—健保連



 医科入院外では家族の「呼吸器系疾患による受診率」が極めて高く、医科入院では25-39歳の家族で受診率が高い。これらも影響して、サラリーマン本人に比べて、家族のほうが1人当たり医療費が高くなっている—。

 このような状況が、18日に健康保険組合連合会が公表した2015年度の「健保組合医療費に関する調査(基礎数値)」から明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。前者は「乳幼児における喘息など」、後者は「妊娠などに関連する疾患」が大きく影響していると考えられますが、さらに詳細な分析を行うことで、医療費の適正化に向けた効果的な方策を見出せる可能性があります。

医科入院外、家族における「呼吸器系の疾患」での受診が多い

 主に大企業で働くサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健保連では、データヘルスに積極的に取り組んでおり(関連記事はこちらこちらこちら)、今般の調査では1234組合(サラリーマン本人:1447万2130人、家族:1200万3043人)の電算処理レセプト(2億9275万2818件)をもとに医療費の詳細な分析を行っています。

 健保組合の2015年度医療費(約3兆7848億円)について診療種類別内訳を見ると、▼医科入院:23.8%▼医科入院外:42.6%▼歯科入院外:11.7%▼歯科入院:0.2%▼調剤:21.7%—となっています。

 1人当たりの医療費は本人13万9113円・家族14万7595円となっており、診療種類別では、▼医科入院:本人3万1983円・家族3万6561円▼医科入院外:本人5万8583円・家族6万3636円▼歯科入院外:本人1万7637円・家族1万5781円▼調剤:本人3万670円・家族3万1358円―という状況です。

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 最もシェアの大きな医科入院外の1人当たり医療費は、本人よりも家族のほうが5000円強高くなっています。この原因を、医療費を3要素(受診率・1件当たり日数・1日当たり医療費)に分解して探ると、▼受診率(1000人当たりの受診件数)は本人5236.6、家族6623.8▼1件当たり日数は本人1.4日、家族1.5日▼1日当たり医療費は本人8130円、家族6467円―となっており、「家族で受診率が高い」ところにあると分かります。

 また年齢階層別に、本人と家族で3要素を比較すると、本人にはない「0-4歳の1万623.9、5-9歳の7835.2」が影響していることもありますが、すべての階層で家族のほうが本人よりも受診率が高くなっています。

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 さらに医科外来の1人当たり医療費を本人と家族で疾患別に見ると、本人では▼内分泌、栄養および代謝疾患1万1670円▼呼吸器系の疾患1万989円▼循環器系の疾患1万352円―などが高いのに比べて、家族では呼吸器系の疾患が2万5062円と飛び抜けて高い(次が内分泌、栄養および代謝疾患の7938円)という違いがあります。

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 また、本人と家族について、疾患別の受診率を見てみると、本人では▼呼吸器系の疾患1332.6▼内分泌、栄養および代謝疾患1178.6▼消化器系の疾患1168.1▼循環器系の疾患1048.6―などが高くなっていますが、家族では呼吸器系の疾患が2691.5とやはり飛び抜けて高い状況も分かりました。

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 乳幼児において「呼吸系の疾患による受診」が多いことが予想されます(後述するように喘息など)が、さらに年齢と疾患をクロスさせた分析を行い、家族における「医療機関の外来受診の適正化」を図れる余地がないか検討する必要がありそうです。

医科入院、0-4歳で受診率高く、1日当たり医療費も高い

 次に医療費シェアの大きな医科入院について見てみましょう。医科入院の1人当たり医療費は、医科入院外と同様に本人よりも家族のほうが5000円弱高い状況です。この原因を、3要素に分解して探ってみると、▼受診率は本人68.8、家族88.0▼1件当たり日数は本人8.4日、家族9.0日▼1日当たり医療費は本人5万5687円、家族4万6241円―となっており、やはり「家族で受診率が高い」ところにあると分かります。

 また年齢階層別に、本人と家族で3要素を比較すると、本人にはない「0-4歳の181.2」の影響もありますが、家族では「25-39歳」の階層で本人よりも受診率が高くなっている(25-29歳では159.3、30-34歳では138.0、35-39歳では66.6、本人よりも家族の受診率が高い)点が注目されます。

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 さらに医科外来の1人当たり医療費を本人と家族で疾患別に見ると、本人では▼新生物7193円▼循環器系の疾患6359円▼消化器系の疾患3288円▼損傷、中毒およびその他の外因の影響2233円―などが、家族では▼新生物4275円▼呼吸器系の疾患3349円▼循環器系の疾患2926円▼損傷、中毒およびその他の外因の影響2377円―などが高くなっています。

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 本人と家族について、疾患別の受診率を見てみると、本人では▼消化器系の疾患29.3▼循環器系の疾患19.3▼新生物19.2▼内分泌、栄養および代謝疾患15.8―など、家族では▼消化器系の疾患26.3▼呼吸器系の疾患20.4▼新生物15.8▼ほかに分類されないもの13.8―などが高くなっています。ここからは際立った特徴を見出すことが難しく、年齢と疾患をクロスした詳細な分析に期待が集まりますが、後述する結果からは「医科入院における家族の1人当たり医療費がもっとも高い疾患は『その他の妊娠、分娩および産褥』である」ことが分かっています。

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 なお、医科入院においては、0-4歳の1人当たり医療費が6万1888円と全年齢階層の中で最も高く、かつ受診率も高いことから、「乳児の入院」が家族の1人当たり医療費に大きな影響を与えていると推測できます。

本人、生活習慣病での医科外来受診が多い

 さらに疾患別に「1人当たり医療費」が高いものを見てみると、医科入院と医科入院外で、それぞれ次のようになっています。

【医科入院】

▼本人:「その他の悪性新生物」2412円、「その他の消化器系の疾患」2212円、「その他の心疾患」1893円

▼家族:「その他の妊娠、分娩および産褥」2023円、「その他の消化器系の疾患」1654円、「良性新生物およびその他の新生物」1339円

【医科入院外】

▼本人:「高血圧性疾患」6587円、「糖尿病」5839円、「その他の内分泌、栄養および代謝疾患」5098円

▼家族:「喘息」6419円、「アレルギー性鼻炎」5238円、「その他の内分泌、栄養および代謝疾患」4746円

 本人においては、生活習慣病よる医科外来の医療費が高くなっており、積極的な「特定健診」「特定保健指導」の実施に期待が集まります。

    

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