要介護・維持期リハビリ、介護保険への移行を促すため、診療報酬での評価やめるべきか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)



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 医療・介護の連携・移行をより効率的に推進するため、医療保険と介護保険で「リハビリテーションの実施計画書」などの重複を可能な限り排除してはどうか―。

 19日に開かれた「医療と介護の連携に関する意見交換」では、このようなテーマに沿って中央社会保険医療協議会委員と社会保障審議会・介護給付費分科会委員との意見交換が行われました(前回の会合はこちらこちら)。

4月19日に開催された、「第2回 医療と介護の連携に関する意見交換」
4月19日に開催された、「第2回 医療と介護の連携に関する意見交換」

支払側委員は「診療報酬が介護保険への移行を鈍らせている」と指摘

 リハビリテーションは、医療保険と介護保険の双方から給付されるサービスです。リハビリは、発症からの時間経過によって、大きく(1)急性期(2)回復期(3)維持期・生活期—に分けることができます。(1)の急性期リハビリでは早期離床や廃用症候群防止を主な目的として行われ、医療保険から給付されます。(2)の回復期リハビリは、在宅への復帰などを目指した心身機能回復・ADL向上を目的として行われるもので、同じく医療保険から給付されます。(3)の維持期・生活期リハビリは、心身機能・ADLの維持・向上を図りながら、生活機能やQOL改善を目的としたもので、医療保険と介護保険の双方から給付されます。

 このうち(3)の維持期リハビリについては、その趣旨「心身機能・ADLの維持やQOL改善」に照らし、本来「介護保険給付」とすべきと指摘されます。医療保険の給付(療養の給付)は「被保険者の疾病・負傷に関する治療」に対するものであり、生活機能やQOLの改善を対象とすべきかと考えられるからです。こうした点に鑑みて、脳血管疾患等リハビリ・運動期リハビリ・廃用症候群リハビリについては、「要介護者における維持期リハビリ(標準的算定日数:それぞれ180日・150日・120日を超える部分)は、原則として介護保険サービスへの移行を目指す」という方針が、2006年度改定で確立されました。

 しかし、患者個々人の状態はさまざまで、リハビリの効果が出るまでに時間のかかるケースも考えられるため、維持期(標準的算定日数を超える部分)であっても「治療上有効であると医学的に判断される」場合には、医療保険からの給付を継続して受けられる規定が設けられています。

 もっとも「治療上有効であるとは判断されない」場合には、原則どおり要介護・維持期のリハビリは介護保険給付から受けるべきであり、例えば2016年度の前回診療報酬改定では、▼要介護・維持期リハビリの点数の6割への減額▼リハビリの目標を立て、介護保険リハビリなどを紹介することを評価する「目標設定等支援・管理料」の新設―などが行われました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。厚生労働省の調べでは「2015年6月には3万9000人程度が、治療上有効であると医学的に判断されないにも関わらず、要介護・維持期リハビリが医療保険から給付されている」状況が分かっており、さらなる円滑な「介護保険への移行」が求められています。

2016改定関係 リハ関係
 

 具体的な移行促進策は中医協で議論すべきテーマですが、支払側の幸野庄司委員(中医協委員、健康保険組合連合会理事)は「10年にわたり完全移行が延期されており、診療報酬が移行を鈍らせている。(要介護・維持期リハの診療報酬という)箱をとっぱらう決意があるかないかの問題となっている。2017年度末(2016年度改定での廃止期限)に移行できるよう早めに準備すべき」と強い調子で主張。さらに「身体機能の回復や、生活への復帰などのどこを目指すかを定め、節目節目できちんとしたリハビリの効果などを説明することも医師の役割である」と述べ、移行に向けた鍵は「現場の医師の的確な説明」にあるとの見解も披露しています。

 これに対し診療側の鈴木邦彦委員(介護給付費分科会委員、日本医師会常任理事)と松本純一委員(中医協委員、日本医師会常任理事)は「治療上有効と判断されないにも関わらず、要介護・維持期リハビリを医療保険から受けている3万9000人の状態を調べ、丁寧に議論していく必要がある」と慎重姿勢を崩していません。ここ数回のリハビリ改革では常に論点となる部分ですが、2018年度改定に向けてどのような議論が進むのか注目したい部分です。

医療機関が介護保険リハビリを提供しやすくするため、基準などを見直し

 ところで、ある要介護者の維持期リハビリを医療保険給付から介護保険給付へ移行していくに当たっては、「従前の医療機関でリハビリを継続可能とする」ことも重要です。リハビリは長期間にわたるもので、患者・利用者とリハビリ専門職種(PT・OT・ST)との人間関係なども重要な要素となるためです。

 厚労省は、こうした点にも配慮し、▼保険医療機関は介護保険における通所リハビリの指定を受けているものとみなす(みなし指定)▼「医療保険の疾患別リハビリ」と「介護保険の通所リハビリ」(1時間以上2時間未満)を同時に同じ機能訓練室で行うことが可能で、その場合の機能訓練室の面積はそれぞれの基準を満たせばよい—などの規定を設け、「医療保険が介護保険のリハビリを実施する」ハードルを下げています。

 しかし詳細に見ると、みなし指定を受けた医療機関でも、介護保険の通所リハビリ費を請求するには、別途「介護保険の人員・構造設備基準」を満たし、都道府県への届け出が必要というハードルが依然あります。こうしたハードルを2018年度の同時改定でどのように見直していくかも、重要な論点となります。

 

 なお、医療保険・介護保険いずれのリハビリでも「実施計画書」などを作成し、これに則った実施が求められることは言うまでもありません。しかし両者には「重複の記載」を求める内容もあり、厚労省は効率的な連携のために2018年度改定において記載内容の見直しを検討する考えを示しています。

急性期・回復期リハビリでも「目標」設定や方向付けへの指導などを評価

 2015年度に行われた介護報酬改定では、「リハビリ報酬体系の見直し」が大きな論点となりました。ともすると介護保険のリハビリは「身体機能の改善」のみを目標として、漫然として行われている嫌いがあるのではないかとの指摘を受け、「利用者の移行踏まえた目標の設定」→「目標を達成するためのリハビリ計画の策定」→「リハビリの実施」→「効果の確認と、計画の修正」という「リハビリマネジメント」を強化するとともに、さまざまなリハビリ(身体機能の回復だけでなく、日常生活の実現や、地域社会への参加など)を可能とする報酬体系の整備などが行われました(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

訪問・通所リハのマネジメントを再構築、他職種によるカンファレンスやPDCAサイクル構築など
訪問・通所リハのマネジメントを再構築、他職種によるカンファレンスやPDCAサイクル構築など
 

 また2016年度の診療報酬改定でも、前述の「目標設定等支援・管理料」が新設され、要介護者である患者1人1人の特性に応じた「リハビリの目標」設定と方向付けを行うことなどを評価しています(関連記事はこちら)。

 このように、(3)の「維持期リハビリ」では『目標』を設定し、その実現に向けた支援を行っていくという枠組みが整備されましたが、(1)急性期と(2)回復期でもこの枠組みそのものは同じと考えられます。そこで厚労省は「急性期・回復リハビリにおいて、目標設定支援の視点に基づくリハビリの推進」を論点として掲げています。

 この点について診療側の鈴木委員は「方向は正しい」とした上で、「急性期では目標があいまいにならないか」「急性期のリハビリ専門職がどれだけ維持期・生活期リハビリを経験しているかで目標が変わってしまう(視野の狭いPTでは、身体機能回復のみを目標に据えてしまう可能性も)」ことを指摘し、リハビリ専門職の質向上を目指した研修が必要と提案しています。齋藤訓子委員(介護給付費分科会委員、日本看護協会常任理事)も「急性期で自宅に帰ったあとのことまで考えたリハビリ目標を立てるのはなかなか難しいであろう。多職種カンファレンスがさらに大事になる」と指摘しています。維持期・生活期とは異なる「急性期・回復期リハビリの特性に応じた目標の設定と、それに対する支援の評価」を検討する必要がありそうです。

急性期こそ短期集中的なリハビリ実施が必要

 急性期リハビリに関連して武久洋三委員(介護給付費分科会委員、日本慢性期医療協会会長)は、「急性期において、できるだけ早期に集中的なリハビリを実施しなければ、十分な効果が望めない。しかし、急性期病院の中にはリハビリ能力が低いところもあるので、この充実が必要となる。また現在の診療報酬では、加算は別にして、平坦な点数設定(1日6または9単位まで)となっているが、初期に集中的なリハビリを実施できるような報酬体系とする必要がある」と提案。後者はリハビリへの「包括報酬」導入などが考えられます(関連記事はこちらこちらこちら)。

 さらに武久委員は「リハビリスタッフがおらず(あるいは少なく)、十分なリハビリを提供できない急性期病棟では、患者の急性期治療が終われば、リハビリが十分に提供できる回復期・慢性期病棟にできだけ早期に移す必要がある」とも要望しています。

 

 また東憲太郎委員(介護給付費分科会委員、全国老人保健施設協会会長)は「医療機関から、介護施設に患者が紹介されるが、紹介状にはFIMデータ(機能的な自立度を指標化したもの)などは記載されるが、活動や社会参加などに関する記述はない。この点を情報共有項目として設定する必要があるのではないか」と提案しました。現場では「連携を阻害してしまうのではないか」と考え、提案しにくい事項(例えばA病院からB介護施設が患者を受け入れるに当たり、『詳しい情報提供を』と直接求めることを躊躇することもある)であっても、審議会という公の場で議論することができます。「慢性期や介護施設から急性期への要望」という、同時改定ならでは一幕と言えそうです。

  

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