経口避妊剤は「手術前4週以内」は内服『禁忌』、術前に内服薬チェックの徹底を―医療機能評価機構



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 手術の際に禁忌となっている経口避妊剤を患者が服用していることを把握していなかったため、手術が延期になってしまった―。

 このような事例が、2013年1月から17年2月までに2件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトは関連記事はこちら)。機構では、術前チェックリストの中に「内服禁忌」の薬剤を明示し、確認を徹底するよう呼びかけています。

内服薬情報の共有不足、禁忌情報の知識不足なども要因に

 日本医療機能評価機構は、注意すべき医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表しています(関連記事はこちらこちらこちら)。17日に公表された「No.125」では「術前に中止する薬剤の把握不足—経口避妊剤—」がテーマとなりました。

 ある病院では、外来で初診を担当した医師Aが、患者が経口避妊剤である『アンジュ錠』を内服していることを問診票で確認していたものの、担当を交代した医師Bへ伝えていませんでした。医師Bは、『アンジュ錠』が「手術前4週以内は禁忌である」ことは知っていましたが、患者が内服していることを把握していなかったため、手術予定があったものの外来で中止の指示をしませんでした。入院後に、患者からの申し出で『アンジュ錠』内服が分かり、手術が延期となってしまいました。

 また別の病院では、患者が外科外来を受診し、約1か月後に手術の予定が決まりました。その際、患者は経口避妊剤である『トリキュラー錠』を内服していると医師に伝えましたが、医師が「手術前4週以内は禁忌である」ことに気付かず、内服中止を指示しませんでした。止の指示をしなかった。また看護師が入院6日前に入院オリエンテーションを行った際、患者の『トリキュラー錠』内服を知りましたが、「手術前に中止が必要な薬剤である」と知りませんでした。入院後に『トリキュラー錠』内服が中止されていないことに薬剤師が気付き、手術が延期となってしまいました。

 経口避妊剤は、血液凝固能が亢進され、心血管系の副作用の危険系が高くなることがあるため、添付文書で「手術前4週以内、術後2週以内、産後4週以内及び長期間安静状態の患者」などは【禁忌】となっています。内服に気づかず手術が実施されれば、重篤な医療事故に結びつく危険もありました。

経口避妊剤は「手術前4週以内」などの患者では【禁忌】となっており、ほかにもこうした薬剤があるため、院内での情報共有が必要である
経口避妊剤は「手術前4週以内」などの患者では【禁忌】となっており、ほかにもこうした薬剤があるため、院内での情報共有が必要である

 

 事例が生じた病院では、▼経口避妊剤は「手術前4週以内は内服禁忌」であることを院内に周知する▼薬剤師が、手術が決定した外来診察日に患者の内服薬の鑑別を行い、医師に情報提供する―という対策をとっています。

 機構では、経口避妊剤の他に、月経困難症治療薬(例えば『ヤーズ配合錠』)で「手術前4週以内の患者で【禁忌】」とされている医薬品があることを紹介し、「術前チェックリストの中に内服禁忌の薬剤を明示し、確認を徹底する」ことが必要と訴えています。このほか、▼アスピリンを術前1週以内に投与した例で、失血量が増加した例がある▼高脂血症用薬のエパデールでは、出血を助長する恐れがある—ため、添付文書で「慎重投与」とされており、手術が決定した患者が服用している医薬品の確認は、極めて重要です。

  

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