有効性・安全性の確立していない患者申出療養、必要最低限の患者に実施を—患者申出療養評価会議



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 疾病と闘う患者の願いに応えるために、未承認・適応外の医薬品や医療機器の使用について、保険診療との併用を認める患者申出療養だが、「有効性・安全性が確立していない」ため、必要最小限の患者を対象とすべきである—。

 13日に開催された「患者申出療養評価会議」(以下、評価会議)では、こういった点が確認されました。また第3例目として「難治性天疱瘡患者に対するリツキシマブ治療」を、第4例目として「チオテパを用いた自家抹消幹細胞移植療法」が、新たな患者申出療養として「適」と判断されました。ゴールデンウィーク前の告示が目指されます。

4月13日に開催された、「第5回 患者申出療養評価会議」
4月13日に開催された、「第5回 患者申出療養評価会議」

1例目の患者申出療養、予定症例数超過で実施計画を見直し

 昨年(2016年)9月に、初の患者申出療養として「腹膜播種陽性または腹腔細胞診陽性の胃がん患者に対する、パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」が東京大学医学部附属病院から申請されました。評価会議では、対象患者の▽年齢要件▽遠隔転移の有無—などについて修正が行われ(条件付き適と判断)、10月14日から運用が開始されています(関連記事はこちら)。

「腹膜播種陽性または腹腔細胞診陽性の胃がん患者に対する、パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」の概要
「腹膜播種陽性または腹腔細胞診陽性の胃がん患者に対する、パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」の概要
 

 この医療技術を実施するにあたり、東大病院では「予定症例数を100例とし、安全性などを確認する」旨の計画(実施計画)を作成していました。しかし、協力病院(関東労災病院や新潟県立がんセンターなど)なども含めて「この医療技術を受けたい」との希望が多く寄せられ、今般「予定症例数を121例とする」との計画見直しが行われています。

 メディ・ウォッチでもお伝えしていますが、患者申出療養は「疾病と闘う患者の希望」が起点になりますが、将来的な保険収載を目指す保険外併用療養であるため、「臨床試験」として実施されます。したがって、実施計画を作成して、専門家(本件では評価会議)の承認を受け、計画通りに実施する必要があります。

 今般の東大病院の事例では「患者が100例に達する前後に、多くの患者から希望が来たため、100例に達した時点で、仮登録や同意などを得た患者が21名出てしまった。すでに同意を得ている21名を『却下』することは酷である」ことから例外的に「実施計画の見直し」が認められたものです。東大病院では事態を重く受け止め、「症例数管理をより的確に行う」旨の反省の弁を厚労省保険局医療課に伝えています。

患者申出療養は「有効性・安全性が確立していない」医療技術

 

 ところで、対象患者が多くなれば、有効性・安全性を判断するためのデータが増えることから「かえって好ましいのではないか」とも思われます。大門貴志構成員(兵庫医科大学医学部医療統計学教授)は「本件は、当初からデータを集めて柔軟に検討しようという『やわらかめ』の実施計画であった」と、一部理解を示しました。

 しかし新谷歩構成員(大阪市立大学大学院医学研究科医療統計学教授)は、「確かにサンプル数が増えれば統計的な信頼性は高まる」とした上で、「そもそも『有効性・安全性が確立していない医療技術』であり、必要最低限を超える患者に実施してよいものだろうか。費用(保険給付費)も嵩み、倫理面でも問題がある」とし、実施計画をオーバーする症例数の確保に強く警鐘を鳴らしました。厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官も、「本件は例外である。実施計画は遵守してもらう」との考えを強調しています。

 なお本件医療技術は初の患者申出療養ということもあり、中間(最初の20例が登録され、3コースの治療が終了した時点)で進捗状況のモニタリングを行うことになっていました。13日の会合には、▼5症例で尿検査・血液検査の一部欠測があるが、安全性評価に影響を与えるものではない▼2症例で「原病悪化」による死亡、3症例で好中球減少・下痢による入院があったが、内容・発生頻度とも選考試験を上回っていない―ため「データが正確に収集されている」という中間モニタリング結果が報告されています。

予定症例数を超過した患者の要望にどう応えるか、患者の意見なども踏まえて検討

 また、多くの構成員からは、「予定症例数を超えてからなされた患者の要望にどう応えるべきか」という問題提起がなされました。上記の東大病院の事例でいえば、122番目に「この医療技術を試してみたい」と患者が要望した場合です。

 前述のとおり患者申出療養は「臨床試験」の1つであり、予定症例数は遵守しなければなりません。したがって超過分の患者要望について、当該臨床試験計画の中に組み込むことは原則して不可能です。また「まったく同じ計画」をもう一度立てて、そこに超過分の患者要望を組み込むことも、保険収載を目指す保険外併用療養という性質上、許されません(新たなエビデンスなどが見つかり、別の実施計画となれば可能なケースも出てくる)。したがって、拡大治験などが走っていなければ、「自由診療」(完全自費)で当該医療技術を受けなければいけません。

 つまり、上記で見れば「121番目であれば保険診療との併用が可能だが、122番であれば全額自己負担となる」のです。患者にこの点の理解を求めることになるため、石川広己委員(日本医師会常任理事)は「臨床現場では説明に困窮する。評価会議として、きちんとした答えを用意しておく必要がある」とコメント。福井次矢座長(聖路加国際病院院長)も、「患者の希望には応えたいが、どこかで当該技術の安全性・有効性に関する判断をしなければならない」と非常に難しい問題であるとしています。

 保険収載を目指し、臨床計画を立て、その中で実施する仕組みであるため、理論的には、どの医療技術であっても同様のケースが発生する可能性があります(予定症例数を定めない臨床計画は現時点で有り得ないため)。これは、2月6日の前回会合でも議論となった、「困難な病気と闘う患者の思いに応える」という要請と、「保険収載を目指すため、臨床研究としての妥当性を確保する(一定数の症例集積が求められる)」という要請とのバランスをどうとるか、という問題にもつながります。

 眞鍋企画官は、「事例を積み重ね、実際に患者申出療養を受けた方の意見も踏まえて制度設計に活かしていきたい」との考えを示しています。すぐに結論の出るテーマではなく、評価会議を中心に十分な議論を行う必要があるでしょう。

新たに2つの医療技術を、患者申出療養の3例目・4例目として「適」と判断

 なお13日の会合では、次の2つの医療技術が新たな患者申出療養として「適」と判断されました。いずれも3月21日に申請がなされており、厚労省保険局医療課の担当者は「6週間以内に告示する必要があり、ゴールデンウィーク前には告示を行いたい」とコメントしています。

(1)難治性天疱瘡患者に対するリツキシマブ治療:保険収載された薬剤・治療法が極めて少ない「難治性の天疱瘡患者」に対し、ステロイド剤や他の併用療法を継続した状態で、海外で追加的治療の第1選択約となっているリツキシマブを投与し、安全性や有効性を観察する。

▼費用:患者申出療養に係る費用(保険から給付されない)が145万6000円(うち補助金負担が23万2000円、企業負担が82万円で、患者負担は40万5000円となる)、保険者の負担(保険給付)が9万3000円、患者負担(保険給付)が4万円

▼実施医療機関:慶應義塾大学病院

▼予定症例数など:10例(実施許可-2021年8月まで患者を受付け、試験期間は2023年3月まで)

▼協力医療機関の施設要件:500床以上・7対1看護配置、皮膚科専門医が実施責任者となる必要があるが、当該治療の経験症例などは不要

難治性天疱瘡患者に対するリツキシマブ治療の概要
難治性天疱瘡患者に対するリツキシマブ治療の概要
 

(2)チオテパを用いた自家抹消幹細胞移植療法:標準治療法のない「再発または難治性の髄芽腫瘍(原子神経外肺葉性腫瘍)・AT/RT(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)患者」に対し、抗がん剤であるチオテパ(現在、我が国では承認薬なし)を用いた自家末梢血幹細胞移植後の効果(無増悪生存期間など)と安全性(有害事象の発生件数や治療関連死など)を検討する。

▼費用:患者申出療養に係る費用(保険から給付されない)が73万1000円(薬剤費用は企業が負担する)、保険者の負担(保険給付)が793万3000円、患者負担(保険給付)が197万6000円

▼実施医療機関:名古屋大学医学部附属病院

▼予定症例数など:5例(実施許可-2017年8月まで患者を受付け)

▼協力医療機関の施設要件:300床以上・7対1看護配置、造血細胞移植学会の認定医が実施責任者となる必要がある、臨床研究中核病院または造血幹細胞移植推進拠点病院であることなどが必要

チオテパを用いた自家抹消幹細胞移植療法の概要
チオテパを用いた自家抹消幹細胞移植療法の概要
 

 なお(1)の技術について、慶大病院には「患者申出会議などに第三者を参加させたモニタリングの実施」などが求められます。

  

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