複数医療機関による訪問診療を認めるべきか、患者の状態に応じた在宅医療の報酬をどう考えるか—中医協(1)



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 複数の診療科の医師が協働して訪問診療を行う仕組みを構築すべきか、在宅療養支援診療所「以外」を含めたかかりつけ医による在宅医療をどう評価すべきか、患者の状態などに応じた効率的・効果的な在宅医療提供のための報酬をどう考えるか—。

 12日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会では、2018年度診療報酬改定に向けて「在宅医療その2」を議題とし、こういったテーマについて検討を行いました。

4月12日に開催された、「第349回 中央社会保険医療協議会 総会」
4月12日に開催された、「第349回 中央社会保険医療協議会 総会」

在支診以外の診療所による在宅医療、どう評価していくべきか

 在宅医療については1月11日に「その1」として総論的な議論をすでに行っており、今回は、主に「在宅医療提供体制の確保」などが検討テーマとなりました。

 在宅医療に力を入れている医療機関として在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)がありますが、厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は▼在支診でも、訪問診療・往診・在宅看取りなどすべてを担っているわけではない▼在支診以外の診療所が、訪問診療の13.8%、往診の39.6%、在宅看取りの21.5%を担っている—状況を説明。「在支診以外を含めた、かかりつけ医」が、在宅医療において欠かせない存在となっていることが分かります。診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、こうした状況から「『在支診以外』の在宅医療の評価を今以上にすることが求められていると言える。前向きに検討すべきである」と提案しました。

在支診だからといって、すべての在宅医療提供を行っているわけではないようだ
在支診だからといって、すべての在宅医療提供を行っているわけではないようだ
在支診以外の診療所も相当程度、在宅医療を提供している
在支診以外の診療所も相当程度、在宅医療を提供している
 

 しかし、「在支診」と「在支診以外」とを比較すると、▼「在支診以外」では重症患者への在宅医療提供が少ない▼「在支診以外」では自院の外来患者への在宅医療提供が多く、他院からの紹介患者は少ない—ことも分かりました。こう考えると、「在支診以外」の診療所による訪問診療などの点数が低く設定されている現在の診療報酬には一定の合理性がありそうです。診療側委員はかねてより「『在支診以外』の診療所における在宅医療の評価充実」を求めていますが、これを実施した場合「在支診の評価」をさらに充実させなければバランスがとれず、どこまで改定財源を確保できるかという点も含めた総合的な検討が必要となりそうです。

在支診に比べて、そうでない診療所は、重症患者への訪問などが少ない
在支診に比べて、そうでない診療所は、重症患者への訪問などが少ない
在支診に比べて、そうでない診療所では「自院の外来患者」に対する在宅医療提供が多い
在支診に比べて、そうでない診療所では「自院の外来患者」に対する在宅医療提供が多い
在宅医療の報酬では、機能強化型在支診など>通常の在支診療など>一般の診療所など、という具合に点数に傾斜がつけられている
在宅医療の報酬では、機能強化型在支診など>通常の在支診療など>一般の診療所など、という具合に点数に傾斜がつけられている
 

24時間対応のためなどに複数医療機関が連携した場合を、どう評価すべきか

 在宅医療提供(かかりつけ医機能の中でも在宅医療提供は重要かつ大きな要素)に向けたハードルとして、もっとも高いものは「24時間対応」と考えられます。厚労省や日本医師会の調査でも、これを支えるデータが出ています。たしかに、1人医師診療所に24時間・365日の対応を求めることは不可能でしょう。そこで診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)らは、「複数の医療機関が連携・共同して訪問診療などを行う」ことを保険診療上認めるべきとかねてから要望しています。

かかりつけ医機能・主治医機能の中で、負担の大きい項目の最大のものは「在宅患者への24時間対応」となっている
かかりつけ医機能・主治医機能の中で、負担の大きい項目の最大のものは「在宅患者への24時間対応」となっている
 

 現在の診療報酬では「1人の患者に対して訪問診療料を算定できるのは1医療機関のみ」の旨があり、松原委員らは「24時間対応を行うためには、複数の診療所の連携が不可欠である。また、専門外の診療科による訪問診療が必要なケースもある」とし、複数医療機関による訪問診療を強く要望しているのです。同じく診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)や猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)も、「後方病院も含めて、複数医療機関・医師がチームを組んで在宅医療を提供することが必要である」と同旨の要望を行っています。

 この点、支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)も24時間対応への医師の負担を考慮し、「現在の訪問診療料は1医療機関のみが算定可能だが、複数疾患ある患者などでは複数の医療機関が連携した総合的管理が必要となろう。点数を含めて、診療内容に応じた評価は検討する必要がある」と一定の理解を示しましたが、花井十伍委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)や平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は、「訪問診療は患者の疾病などを継続的に管理していくもので、かかりつけ医機能と重なる部分がある。複数の医療機関による訪問診療では、個々の医師がバラバラに患者を管理する状況も生じるのではないか。連携の在り方・ルールなどをしっかり見なければいけない」と指摘し、慎重な検討を求める構えです。また同じ支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も「医師の連携・協働を評価するまえに、かかりつけ医と訪問看護ステーション、薬局、介護支援専門員などの連携・協働を優先的に進めるべき」との見解を示しています。

 これに対し松原委員は「在宅時医学総合管理料を算定している医療機関が中心になって連携する。バラバラな管理はあり得ない」と理解を求めています。ところで訪問看護ステーションにおいても24時間対応が重要な課題問看護、2018年度同時改定でも事業規模拡大などが論点に―中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)となっており、かねてから「大規模化による機能強化」が進められています。診療所においても、同じように「統合などによる大規模化」を進めることで、この問題を解決するもう一つの答えが得られるかもしれません。

 なお迫井医療課長は、この点に関連して「かかりつけ医の夜間・時間外の負担軽減に資する、地域医療機関の連携による救急応需体制」の評価も論点に掲げました。

 

 また実際に24時間対応した実績を深夜加算・夜間加算の算定状況から見ると、「往診全体の8%」となっていますが、万代委員は「万一に備えた体制を整えている。実際の対応が少ないので大したことはないと考えないでほしい」とコメントしています。

循環器疾患等のみの患者に比べ、複数疾患を抱える患者では複雑な在宅医療が必要

 2016年度の前回診療報酬改定では、在宅医療の報酬体系が大きく見直され、例えば▼重症患者(末期がんや人工呼吸器使用など)への訪問を手厚く評価する▼在宅時医学総合管理料などを月1回の訪問でも算定可能とする(ただし点数設定は低く)▼集合住宅に対する在宅医療の評価軸を「1日に複数人訪問したか」から「1か月に何人訪問したか」に変更する—などです(関連記事はこちらこちらこちら)。

 迫井医療課長は、さらに「訪問診療時に医師が行った診療内容」を分析。例えば、「循環器疾患・脳血管疾患・認知症・糖尿病・骨折・筋骨格系疾患のみの患者」と「その他の患者」とでは、後者では▼抗がん剤の点滴▼皮下輸液▼中心静脈栄養・ポート管理▼腹水・胸水穿刺―などを行うケースが多いこと、また重症患者(上記)では▼患者・家族などへの病状説明▼訪問看護ステーションへの指示—などの業務が増えていることなどが分かりました。つまり、患者の状態によって訪問診療時の診療内容が変わってくるのです。

循環器疾患等のみの患者に対する訪問診療では、その他の患者に比べて、注射や点滴などの診療行為が少ない
循環器疾患等のみの患者に対する訪問診療では、その他の患者に比べて、注射や点滴などの診療行為が少ない
重症患者と、そうでない患者で、訪問診療における診療行為を比較すると、重症患者では病状説明や訪問看護ステーションへの指示などが多くなる
重症患者と、そうでない患者で、訪問診療における診療行為を比較すると、重症患者では病状説明や訪問看護ステーションへの指示などが多くなる
 

 現在は、重症患者では報酬が高く設定されていますが、「重症以外の患者」では診療内容の違いが報酬に反映されません。このため支払側の幸野委員は「重症以外の患者を、もう少しきめ細かく分類した報酬体系にすべき」と提案しましたが、診療側の中川委員は「診療報酬の簡素化が求められており反対である。『重症患者』と『それ以外』という報酬体系は臨床現場の感覚として分かりやすい」と反論しています。

 なお、サービス付き高齢者向け住宅などの「高齢者向け集合住宅」と「戸建て、マンション、アパートなど」とで、同一日に訪問診療を行う人数を比べると、前者(高齢者向け集合住宅)では圧倒的に複数名診療が多く、また、前者の患者に対する診療時間は、後者よりも若干短いことが分かりました。診療報酬上は、前者を施設入居時等医学総合管理料として、後者の在宅時医学総合管理料よりも低い点数が設定されており、合理的な報酬体系になっていると言えそうです。

戸建てやマンション・アパートなどに比べ、高齢者向けの集合住宅に対する訪問診療では、複数名診療となるケースが圧倒的に多い
戸建てやマンション・アパートなどに比べ、高齢者向けの集合住宅に対する訪問診療では、複数名診療となるケースが圧倒的に多い
在総管の算定患者に比べ、施設総管の算定患者では、若干、診療時間が短い
在総管の算定患者に比べ、施設総管の算定患者では、若干、診療時間が短い
 

 迫井医療課長は、「▽患者の状態▽診療内容▽居住形態—に応じた効果的・効率的なサービス提供」を推進するための評価の在り方も論点に掲げており、2018年度改定でも「重症患者への訪問はより手厚く、一方、軽症患者への訪問はそれに見合った報酬」という方向が見えてきそうです。

  

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