看護師の行う特定行為「気管挿管」「抜管」を除く38行為に―15年10月から研修開始、医道審部会



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 一定の研修を受けた看護師が、医師・歯科医師の包括的指示の下に行える特定行為を38種類とすることが、17日に開かれた「医道審議会保健師助産師看護師分科会看護師特定行為・研修部会」で決定しました。同部会では、特定行為の内容や特定行為実施の前提となる研修について意見を概ね取りまとめていて、厚生労働省では、2015年10月の特定行為研修実施に向けて、関係省令を年度内に公布する考えです。

看護師特定行為・研修部会2014.12.17

「気管挿管」「抜去」は引き続き検討

 14年6月に成立した医療介護総合確保推進法には、看護師が医師の包括的指示を受けた上で、手順書(プロトコル)に基づいて一定の診療の補助(特定行為)を実施するための「研修」制度(特定行為研修)の創設が盛込まれました。この研修制度は15年10月からスタートするため、厚生労働省は同分科会に「看護師特定行為・研修部会」を設置し、(1)特定行為の内容(2)特定行為研修の基準(3)指定研修機関の指定・取消し―について検討してきました。

 特定行為の実施については、これまで厚労省の「チーム医療推進会議」やその下部組織で検討が進められ、次のような枠組みが既に固まっています。

●まず、医師・歯科医師が患者を特定した上で、手順書(プロトコル)により特定行為を実施するよう看護師に指示する

●看護師は、指示に基づいて患者の病状から「現在の看護師の能力」で特定行為の実施が可能かどうかを確認し、病状が能力の範囲外なら医師・歯科医師にあらためて判断を仰ぐ

●病状が能力の範囲内であると確認できた場合には、手順書に定められた「診療の補助(特定行為)」を実施し、看護師は医師・歯科医師に結果を報告する

看護師特定行為、特定行為研修の概要
看護師特定行為、特定行為研修の概要

特定行為の種類については、これまでに「経口・経鼻気管挿管の実施」「人工呼吸器モードの設定条件変更」「病態に応じたインスリン投与量の調整」など41行為とする方向が示されていました。しかし、部会では「41行為の中には特定行為とする、つまり医師の具体的指示を経ないで看護師が行うにはリスクが高すぎるものもある」といった指摘があり、精査が行われてきました。

17日に開かれた部会では、41行為のうち「経口・経鼻気管挿管の実施」「経口・経鼻気管挿管チューブの抜管」の2行為を除外し、「褥瘡の血流のない壊死組織のシャープデブリードマン」と「褥瘡・慢性創傷における腐骨除去」を統合した次の38行為を特定行為とすることが了承されました。

2014.12.17医療行政をウォッチ 特定行為 図表

 「気管挿入」「挿管チューブの抜管」は、日本麻酔科学会からの「両行為とも医師不在の場面で行うことは患者の生命に関わる」という強い指摘を受けて、特定行為への導入が見送られました。しかし、真田弘美委員(日本看護協会副会長)や有賀徹委員(昭和大学病院院長)ら多くの委員は「医療現場では多くの場面で看護師に挿管チューブの抜管を依頼することがある。チーム医療を推進するために盛り込むべきだ」と求めています。

 こうした意見を重視し、厚生労働省医政局の二川一男局長は「委員の意見を重く受け止めている。気管挿管と抜去について、限定的に特定行為に盛り込むことができないかどうかを早期に検討していただく」との見解を表明しました。気管挿管・抜去は特定行為に含まれないものの、厚労省では「医師の具体的指示下で診療の補助としてこれまで通り実施できる」ことや、「2行為の実施にあたっては適切な研修の受講が望まれる」ことにも付言しています。

実施者は共通科目と関連科目の研修を受講

 部会による意見の取りまとめでは、これらの特定行為の実施の前提となる研修(特定行為研修)についても具体的な提言を行っています。

 研修では、まず特定行為に共通する科目(共通科目)として「臨床病態生理学」「臨床推論」「フィジカルアセスメント」「臨床薬理学」「疾病・臨床病態概論」「医療安全学」「特定行為実践」を合計315時間学びます。

 共通科目の研修時間は当初、計414時間とされていましたが、「医療現場で働く看護師が長時間の研修を受けることは難しい。可能な限り研修時間を圧縮すべき」との意見を踏まえ、約100時間短縮されました。

 さらに、特定行為ごとに関連の深い科目(区分別科目)として、「気道確保に係る呼吸器関連(22時間)」「人工呼吸療法に係る呼吸器関連(63時間)」「循環器関連(45時間)」「術後疼痛管理関連(21時間)」「感染に係る薬剤投与関連(63時間)」など21区分から、必要な科目を受講します。

 医療現場で既に特定行為を実施しているなど、必要な知識・技能を身に付けていると認められた看護師については、これら区分別科目の履修が一部免除されます。この免除制度を時限的なものとするか、恒久的なものとするかについては意見が分かれました。中山洋子部会長代理(高知県立大学特任教授)は「多くの看護師が特定行為を実施できるよう、能力に応じたさまざまなルートを確保しておく必要がある。評価を適切に行えば十分ではないか」との考えを述べています。

 特定行為研修の受講者は、「概ね3-5年以上の実務経験を有する看護師」と想定されています。部会では、こうした看護師には「日常的に行う看護実践を、根拠に基づく知識と実践的経験を応用し、自律的に行うことができ、チーム医療のキーパーソンとして機能することができる」と期待しています。

 また、研修修了後には、科目ごとに「筆記試験」「実技試験(OSCE:Objective Structured Clinical Examination)」「実習の観察評価」を行い、教育内容を修得できているかどうか評価されます。実技試験の対象となるのは、「気管カニューレの交換」「直接動脈穿刺による採血」「橈骨動脈ラインの確保」「褥瘡・慢性創傷における血流のない壊死組織の除去」「PICC(末梢静脈挿入式静脈カテーテル)挿入」「胃ろう・腸ろうチューブ、胃ろうボタンの交換」「膀胱ろうカテーテルの交換」の各行為です。

研修機関は厚労相が指定

 特定行為研修を実施できるのは、次の要件を満たす学校や病院のうち、厚労相が指定した施設に限定されます(指定研修機関)。

●研修の内容が省令の基準に適合している

●特定行為研修の専任の責任者を配置している

●医師、歯科医師、薬剤師、知識・経験のある看護師といった適当な指導者による研修を行う

●講義・演習を行うのに適当な施設・設備を利用できる

●実習を行うのに適当な施設を実習施設として利用できる

●実習を実施する際には、利用者・患者への説明が適切になされる

●特定行為研修管理委員会を設置している

 15年10月から特定研修をスタートするためには、それに先立って指定研修機関を指定したり、研修生を募集したり環境を整える必要があります。厚労省は年度内に省令を公布し、可能な限り早期に指定研修機関の指定を行う考えです。

 また、特定行為実施のもう一つの前提となる手順書(プロトコル)には、「対象となる患者の状態」「特定行為を実施するに際しての確認事項」「医療の安全を確保するために必要な医師・歯科医師との連絡体制」「行為実施後の医師・歯科医師への報告方法」を記載しなければなりません。

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