高コレステロール血症治療薬のレパーサなど、スタチン投与で効果が不十分な場合にのみ投与を―中医協総会(2)



 高コレステロール血症治療薬のレパーサ(エボロクマブ 遺伝子組み換え)とプラルエント(アリロクマブ 遺伝子組み換え)は、脂質異常症などの診療能力を有する医師、動脈硬化性疾患のハイリスクを抽出し適切な治療を行う能力を有する医師などがいる施設で投与を開始する。また主として、一定の基準を満たす家族性の高コレステロール患者に対し、スタチンと併用することなどが必要である―。

 15日に開催された中央社会保険医療協議会の総会に、厚生労働省はこのような最適使用推進ガイドライン案を提示しました。厚労省は、このガイドラインを踏まえ、保険診療上の留意事項に関する通知を4月1日付けで発出する考えです。

3月15日に開催された、「第347回 中央社会保険医療協議会 総会」
3月15日に開催された、「第347回 中央社会保険医療協議会 総会」

レパーサ、プラルエントについて最適使用推進GLを策定

 画期的ではあるが高額な医薬品の開発が進んでおり、これが医療保険財政を圧迫していると指摘されます。中医協では、これらに対応するため薬価制度の抜本改革に向けた検討を進めており、あわせて「どのような施設」で「どのような患者」に投与することが適切かを規定する「最適使用推進ガイドライン」(ガイドライン)を設けることとしています(関連記事はこちらこちら)。

 15日の中医協総会には、高コレステロール血症治療薬のレパーサ(エボロクマブ 遺伝子組み換え)とプラルエント(アリロクマブ 遺伝子組み換え)の両製剤についてガイドライン案が提示されました。

 まず「どのような施設」で投与されるのかを見ると、▼投与開始施設▼投与継続施設―に分けて、例えば次のような要件(施設要件)が設定されています。

【投与開始施設】

▼本剤の使用にあたっての十分な知識を有し、動脈硬化性疾患の包括的リスク評価を行うとともに、リスク因子としての脂質異常症、糖尿病、高血圧症、慢性腎臓病などの病態を十分に理解し、動脈硬化性疾患の発症予防・治療のための診療を担当している、一定の能力(3年以上循環器診療科などの臨床研修暦など)を有する医師が所属する

▼動脈硬化性疾患の包括的リスク評価の一つの基準としてJASガイドライン2012の内容を熟知し、動脈硬化性疾患のハイリスクを抽出し、適切な治療を行うことができる医師が所属する

▼FH(Familial Hypercholesterolemia:家族性高コレステロール血症)への適応については、当該疾患の患者の診療経験を十分に有する医師が所属する

▼医薬品リスク管理計画(RMP)の安全性検討事項に記載された副作用に対して、当該施設(または近隣医療機関)の専門医師と連携し、副作用の診断や対応に関して指導・支援を受け、直ちに適切な処置ができる体制が整っている

【投与継続施設】

▼投与開始施設の要件を満たす、あるいはその施設と連携でき、次の要件を満たす

▽高コレステロール血症患者の診療経験が十分にある医師が所属する

▽本剤の効果判定を定期的に行った上で、投与継続の是非についての判断を適切に行える医師が所属する

 両製剤は長期間の投与が必要となるため、【投与開始施設】で患者適正などを十分に判断した上で、アクセスのよい【投与継続施設】に紹介することなどが考えられます。

レパーサ、プラルエントを投与できる施設の要件(最適使用推進GL案から)
レパーサ、プラルエントを投与できる施設の要件(最適使用推進GL案から)

スタチン投与で効果が不十分なことなどを事前に確認することが必要

 次に投与対象患者の要件を見てみましょう。ガイドラインでは「心血管イベントの発現リスクが高く、スタチン(メバロチンなど)を最大耐用量で一定期間服用しているにもかかわらず、JASガイドライン2012 の脂質管理目標値に到達していない高コレステロール血症患者」とされ、具体的には▼脂質管理目標値に達していないFH患者▼冠動脈疾患の既往のある患者―が主に想定されます。非FH患者に対する使用では、動脈硬化性疾患に関する他のリスクファクターなどを慎重に評価することが必要です。また、▼本剤成分に過敏症の既往歴がある患者では禁忌▼重度の肝機能障害患者では慎重投与―とされている点、さらに一部のホモFH患者では有効性が期待できないことから、本剤投与による効果が認められない場合には中止も検討すべき点に留意が必要です。

レパーサ、プラルエントの対象患者要件(最適使用推進GL案から)
レパーサ、プラルエントの対象患者要件(最適使用推進GL案から)

 また両製剤の投与にあたっては、▼非FH患者では、心血管イベントの発現リスクが高いこと(冠動脈疾患の既往歴、糖尿病、慢性腎臓病など)▼最大耐用量のスタチンを、FH 患者などでは医師が必要と判断する期間、そうでない患者では原則3か月以上投与しても、脂質管理目標値に到達していないこと▼食事療法、運動療法、禁煙および他の動脈硬化性疾患のリスクファクター軽減を含めた内科的治療が十分に行われていること―を確認することが必要です。さらに、両製剤は単独使用するのではなく、「スタチンと併用」

 なお、レパーサの投与方法について、▼ヘテロFHおよび非FH 患者では「140 mgを2週間に1回」投与を推奨する▼重症のヘテロFH患者では、利便性の向上を目的に「420mgを4週間に 1回」投与を考慮してもよい―こととされました。

レパーサ、プラルエントを投与する際の留意事項、レパーサでは重度のヘテロFH患者についての投与量に関する付記がある(最適使用推進GL案から)
レパーサ、プラルエントを投与する際の留意事項、レパーサでは重度のヘテロFH患者についての投与量に関する付記がある(最適使用推進GL案から)

レパーサ使用の施設要件を満たすことなどをレセプトに記載

 厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、このガイドラインをベースに保険診療上の留意事項に関する通知を4月1日付けで発出することも明らかにしました。

 留意事項通知では「ガイドラインに従って使用する」ことを明示するとともに、▼一定の能力を有する医師が所属する施設に該当すること▼スタチンをどれだけ投与したか―について、レセプトの適用欄への記載が必要な旨が示されます。ただし、留意事項通知が発出される前からレパーサなどを投与している患者・施設に配慮し、中山薬剤管理官は「適切な経過措置」を設ける考えも示しています。

 留意事項通知の内容について支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「現場医師の判断で、スタチン投与3か月以内にレパーサなどに切り替えるケースがあると思う。その場合には、理由のレセプトへの記載を求めてはどうか」と提案。同じく支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「適切に効果を見極め、効果が出ない場合には速やかに中止すべき旨を改めて明示すべきではないか。オプジーボなどでも同様である」と提案しています。

患者申出療養、「保険収載」と「患者の思い」とのバランスを考慮

 また15日の中医協総会には、新たな患者申出療養(2例目)として「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」が報告されました(3月3日に告示)。2月6日の患者申出療養評価会議で、「適」と判断されていました(関連記事はこちら)。

心臓移植(つなぎ期間のBTTも)やDT療法(永久に植込み型人工心臓を用いる)治験の対象とならなら重症心不全患者について、一部DT療法を患者申出療養として認め、保険収載を目指す
心臓移植(つなぎ期間のBTTも)やDT療法(永久に植込み型人工心臓を用いる)治験の対象とならなら重症心不全患者について、一部DT療法を患者申出療養として認め、保険収載を目指す

 患者申出療養は、昨年(2016年)4月1日からスタートした新たな保険外併用療養制度(保険診療と、未承認の抗がん剤などの保険外診療との併用を認める仕組み)です。「海外で開発された未承認(保険外)の医薬品や医療機器を使用したい」などといった患者からの申し出を起点として、安全性・有効性を患者申出療養評価会議で確認した上で、保険診療との併用を認めるものです。

 先進医療と同じく、将来「保険収載」を目指すもので、実施計画を臨床研究中核病院で作成し、そこには「どのような患者が対象になるのか」「予定症例数はどの程度か」などを記載する必要があります。この点について主に診療側委員から「患者1人1人に寄り添う仕組みであるはずなのに、症例数を事前に定めるのはいかがなものか」といった疑問が以前から出されています。

 厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官は、この指摘を踏まえ、「保険収載を目指す」という点と、「患者1人1人の思いに応える」という点のバランスをとるため、次のような対応を図ることを説明しました。

▼申し出た患者の状態に応じた適格基準を可能な限り設定し、患者申出療養評価会議で審議する。

▼患者申出療養評価会議で承認された適格基準内の患者については実施施設の判断で当該臨床研究に組み入れ可能とする

▼臨床研究として実施する以上、何らかの予定症例数の設定が必要だが、今後予想される適格基準該当患者数を勘案したうえで、目安としての位置づけとする

 また、上記のバランスや、「予定実施期間のみ設定し、症例数を設定しない方法」(患者申出療養では有効性の評価が困難で、安全性評価が中心となるため)なども患者申出療養評価会議で引き続き検討されます。

 

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