AI(人工知能)活用した診断・治療、最終責任は医師が負うべき―厚労省・AI活用推進懇談会



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 AI(人工知能)を活用した診断・治療を進めていく必要があるが、現段階ではAIが単独で診断確定や治療方針決定を行うことはできないため、最終的な意思決定は医師が行い、意思決定の責任も医師が負うべきではないか―。

 厚生労働省が7日に開催された「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」では、この方針に異論が出ませんでした。もっとも、AIの推測結果に誤りがあった場合に、「AI(開発者など)と医師との責任分担」などの議論も今後行われる可能性があります。

治療方針決定への寄与度や不具合によるリスクの高いAI、医療機器として取り扱う

 大量の知識データに対し高度な推論を的確に行うことを目指す人工知能(AI:artificial intelligence)の技術が進み、保健医療分野での活用が始まっています。例えばIBM社の開発した「Watson」の活用により、白血病患者の遺伝子を診断し、最適な治療方法の選択などに役立っています(関連記事はこちらこちら)。また難病などの希少疾患において、確定診断にあたりAIを活用してくことが期待されています(関連記事はこちらこちら)。さらに中央社会保険医療協議会でもAIによる診療支援を、診療報酬でどう評価すべきかという論点も浮上してきています(関連記事はこちら)。

医薬基盤・健康・栄養研究所が進めている難病AIプラットフォームの概要
医薬基盤・健康・栄養研究所が進めている難病AIプラットフォームの概要

 そうした中、厚労省は▼AIの特性を踏まえ、その活用が患者・国民にもたらす効果を明らかにする▼保健医療などにおいてAI導入が見込まれる領域を見据えながら、開発推進のために必要な対応を検討する▼AIを用いたサービス等の質・安全性確保のために必要な対応を検討する―ことを目的に、「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」を設置しました。

 7日に開かれた会合では、「AIによる診療支援」と「医師の判断」の関係性について議論。厚労省は、「AIが単独で診断確定や治療方針の決定を行うことはできない」「AIの推測結果に誤りがありうる」といった現状を考慮し、次のような方向性を提示しています。

(1)最終的な意思決定(診断名の確定や治療方針の決定など)は医師が行う

(2)AIを活用し、最終的な意思決定を行う医師が責任を負う。ただし、前提としてAIについての適切な教育を医師に対して行い、安全性を確保していくことが必要

(3)「保険医療分野におけるAI開発」には医師の関与が必要

 こうした方針について懇談会構成員から特段の異論が出ていないことが、厚労省大臣官房厚生科学課の佐原康之課長から報告されました。

 ただし、最終的な判断を医師が行うにしても、AIの推測結果は重要な意味を持ちます。そのため厚労省は▼治療方針などの決定への寄与が大きい▼不具合が生じた場合のリスクが高い―AIプログラムについては、「医療機器プログラム」と位置づけ、医薬品医療機器等法(従前の薬事法を大改正し「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」とされた)に基づいて安全性・有効性を確保する必要があるとの考えを明示。今後、「AI技術を活用する『画像を用いた診断機器』の評価指標」や「医療機器の市販前・市販後の評価に係る体制整備」(PMDAの体制など)を検討していくことになります。

 どのようなAIプログラムが「医療機器プログラム」に該当するのか(治療方針への寄与度やリスクの基準)は、今後の検討を待たなければいけませんが、厚労省は▼放射線治療のシミュレーションなどを行い、治療計画を提案するプログラム▼凝固因子製剤など投与に注意を要する薬剤の動態解析を行い、投与方針決定を支援するプログラム―などを例示しています。

治療方針決定などへの寄与度・不具合がある場合のリスクの双方が高いAIプログラムは「医療機器プログラム」に位置付け、医薬品医療機器等法に基づいて安全性・有効性を確保する
治療方針決定などへの寄与度・不具合がある場合のリスクの双方が高いAIプログラムは「医療機器プログラム」に位置付け、医薬品医療機器等法に基づいて安全性・有効性を確保する

 こうした方針を考慮すると、上記(2)の責任について、「AI(開発者など)と医師との責任分担」といった議論が今後なされる可能性もありそうです。

   

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