地域医療構想調整会議、春にはデータ用いた地域分析、夏には不足する機能補填の具体論を―医療計画見直し検討会(1)



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 地域医療構想の実現に向けた「地域医療構想調整会議」では、まず、春の会合では▼データを用いた地域分析による現状の把握・共有▼データを用いた区域内医療機関の現状の役割把握―を行い、夏の会合では医療機能・事業などごとの不足を補填するための具体的の議論を行ってはどうか―。

 8日に開かれた「医療計画の見直し等に関する検討会」では、厚生労働省からこういった例示が行われました。今後、秋・冬の会合でどのような議論を行うべきかについても提示される見込みです。

3月8日に開催された、「第10回 医療計画の見直し等に関する検討会」
3月8日に開催された、「第10回 医療計画の見直し等に関する検討会」

地域医療構想調整会議、データや地域の現状を関係者全員で共有することが最重要

 本年度(2016年度)中に全都道府県で地域医療構想の策定が完了する見込みで、焦点は今後の構想実現に向けた「地域医療構想調整会議」での議論に移ります。厚労省は2月17日開催の前回会合に、調整会議の具体的な進め方の1例として次のようなスケジュール案を提示しました。これを1ルーティンとして、毎年度繰り返すことで、意見の調整を図っていくことが求められます。

【1回目】4-6月:病床機能報告の結果や医療計画データブック(ナショナルデータベースをもとに厚労省が作成)などを踏まえ、▼各医療機関の役割の明確化▼不足する医療機能の確認―などを行う

【2回目】7-9月:機能・事業ごとの不足を補うため、「地域で整備が必要な医療機能」を具体的に示し、次回の病床機能報告(10月)に向けて「各医療機関の方向性」を確認する

【3回目】10-12月:機能ごとに「具体的な医療機関名」をあげた上で、機能分化・連携・転換について具体的に決定していく

【4回目】1-3月:次年度の調整会議に向けて、具体的な医療機関名や進捗評価(指標も含めて)、地域医療介護総合確保基金の活用などを含めた「取りまとめ」を行う

地域医療構想調整会議の進め方(案)、これを2017年度以降、毎年度繰り返し、構想実現を目指すことになる
地域医療構想調整会議の進め方(案)、これを2017年度以降、毎年度繰り返し、構想実現を目指すことになる

 

 8日の会合では、春に開催する【1回目】と夏に開催する【2回目】の会合をどのように進めるべきか、より具体的な例示を行っています。

 まず春開催の【1回目】は、病床機能報告や医療計画データブックなどを踏まえ「役割分担の確認」を行うことが主眼となります。例えば、データを用いて地域分析を行い、「地域の現状」を関係者間で共有・理解することが考えられます。厚労省は▼さまざまな会議の活用(都道府県医師会や病院団体などによる勉強会、既存の地域連携の会など)▼データの分析・評価(県の担当者のみならず、地元医師会・病院団体などの関係者、大学の有識者などの共同)▼地域の関係者・住民との情報共有―などを行ってはどうかと提案しています。

 このうちデータ分析・評価について、福岡県では行政(県)・アカデミア(産業医科大学)・関係団体(県医師会)が協働して、2次医療圏ごとの自己完結率(当該地域の医療機関で、当該地域の患者をどれだけカバーできているか)や医療提供体制の整備状況(高度急性期・急性期・回復期・慢性期の各機能がどれだけ充足し、逆に不足しているか)のデータを、地域の医師会会員や病院関係者、自治体関係者、地域医療構想調整会議の委員などに詳しく説明し、例えば「京筑地域(行橋市や豊前市など)では回復期が不足しており、これを充実するために13対1・15対1の一般病床において地域包括ケア病床への転換を促す」などといった具体策の構築につなげていると言います。また神奈川県では、医師会サイドが積極的にデータ提供とその解説を行い、調整会議の議論を有益なものとしています。

 市川朝洋構成員(日本医師会常任理事)や今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は「データ分析・読み込みの難しさ」を訴えますが、福岡県や神奈川県のようにデータ分析を行政の担当者のみに押し付けず、関係者が広く参画することで、データへの理解も加速度的に進むことが期待されます。「関係者間でのデータ・現状の共有」が最重要キーワードと言えそうです。

 さらに【1回目】の調整会議では、区域内の医療機関が現在担っている役割をデータを用いて確認することも重要です。厚労省は、▼救急医療(救命救急入院料や救急医療管理加算の算定状況など)▼災害医療(災害拠点病院と他の医療機関との役割分担など)▼周産期医療(総合周産期特定集中治療室管理料・ハイリスク分娩管理加算の算定状況など)―のデータから、「医療計画で求められている機能を果たしているか」の確認などを行ってはどうかと提案しています。

夏の調整会議では、不足する機能の補填方法などを具体的に議論

 一方、夏開催の【2回目】の調整会議では、「機能・事業などごとの不足を補うための具体策」についての議論がメインテーマとなります。

 多くの地域では「回復期」機能が不足すると考えられますが、その場合、現状と将来を比較し、例えば(1)人員配置の比較的薄い病院が回復期を担ったとして、地域の回復期ニーズを満足できるか(2)(1)でも回復期機能が不足する場合、どの病院の急性期病棟の一部を回復期に転換すべきか―などを議論することになります。

 逆に「高度急性期」機能が過剰な地域では、現状と将来を比較し、例えば、高度急性期と報告している病院からヒアリングを行い、▼現にどのような医療を担っているのか▼今後、どのような高度急性期機能を担えるのか―などを把握してはどうかと厚労省は提案しています。

 秋(3回目)・冬(4回目)の具体的な進め方についても、今後、厚労省から例示が行われる見込みです(例示は、下部組織の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で行われるかもしれません)。なお、前述のとおり秋・冬開催の会合では「具体的な医療機関名」を明示した議論が想定されますが、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、「機能転換がすでに固まっている医療機関が、転換のために地域医療介護総合確保基金を活用する場合には、医療機関の明示が必要となる。全医療機関を明示して、各機能について来年度(2017年度)からの議論を求めているわけではない」旨を説明しています。

病棟ごとの診療情報(レセプト)もとに、2018年度から病床機能報告の内容見直し

 ところで、2016年度から電子レセプトに「病棟コード」が付記され、毎年6月診療分のレセプトをもとに「病棟ごとの診療内容」が把握できるようになっています。8日の分科会では、この病棟データをベースに2018年度分からの病床機能報告制度を見直す方針が固められました。

 例えば、▼4機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)それぞれの病棟で提供している医療内容と診療科の関係(循環器内科病棟でのPCI実施件数、外科病棟での部位別全身麻酔手術実施件数、脳神経外科病棟での脳卒中治療実施件数など)▼病棟別の職員数(看護師やリハビリ専門職など)と医療内容の関係▼回復期機能病棟の疾患別リハビリの実施状況と退院先の関係▼高度医療機器の保有状況―などを分析し、報告項目の見直しなどを検討します。

 ただし病棟別に1か月当たりのKコード別手術件数などは、多くの場合「1桁」となることでしょう。この生データを開示すれば患者の特定などが可能となり、個人情報保護法に抵触してしまいます。そこで厚労省は「地域医療構想調整会議で必要性が認められる場合に限り、詳細データを開示する」考えを示しています。もっとも、「調整会議以外の場(例えば地域の全医療機関が集まり、地域医療構想実現に向けた議論の場など)でも、詳細データを示すべき」(西澤寛俊構成員:全日本病院協会会長)との指摘もあり、運用について今後検討されることになりそうです。

 なお、病棟データについて相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)は、「6月単月のデータでは季節変動が見えない。あくまで参考データにとどめるべき」と強調しています。具体的な分析方法などは、検討会の下部組織である「地域医療構想に関するワーキンググループ」で議論されますが、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、「2018年度の病床機能報告で項目を見直すので、その際に提出されることになる2018年6月(診療分)には見直し内容が固まっていなければならない。周知期間も考慮し、早めに見直し内容を固める必要がある」と説明しています。

 ところで、病床機能報告制度においては「各機能の定量的な基準を策定すべき」との指摘があります。しかし、例えば医療資源投入量をベースとした基準には「診療科ごとのアンバランス」(例えば高額な新薬の抗がん剤を使う診療科で高度急性期になりやすいが、これが妥当か)という問題があり、厚労省は「特定入院料の施設基準と各機能の紐づけ」を行っています。この紐づけによって「定量基準は相当程度、既に定められている」と考えられ、今後は「一般病棟入院基本料の算定病棟と診療内容との関係」について分析を進めることになるでしょう。「急性期」の定義や基準などを一定程度明確にすることが期待されます。

病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ
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