永久気管孔をフィルムドレッシング材で覆ったため、呼吸困難になる事例が発生―医療機能評価機構



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 患者が「永久気管孔」の造設後であることを知らず、入浴時などに頚部の孔にフィルムドレッシング材を貼付してしまったため、患者の呼吸が阻害されてしまった―。

 このような事例が、2013年1月から16年12月までに2件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

 機構では、「頚部の孔がある場合、『永久気管孔』でないか確認する」ことなどを強く求めています。

患者の頚部の孔が「永久気管孔」かどうかの確認徹底を

 日本医療機能評価機構は、注意すべき医療事故やヒヤリハット事例の内容をまとめた「医療安全情報」を毎月公表しています(関連記事はこちらこちらこちら)。15日に公表された「No.123」では「永久気管孔へのフィルムドレッシング材の貼付」がテーマとなりました。

 ある病院では、入院時の担当看護師が、医師から「患者が永久気管孔の造設後である」ことを聞き、看護プロファイルに入力しました。入院後、初めてのシャワー浴の際、看護師A・Bは頚部の孔が永久気管孔であることを知らないまま、湯の流入を防ぐために孔をガーゼとフィルムドレッシング材で保護しました。孔は完全に塞がれていなかった(上部)ので患者は「苦しくない」旨を伝えたといいます。その後、入浴担当の看護師Cも永久気管孔造設を知らず、「フィルムドレッシング材の上部の隙間から湯が入ってしまう」と思い、さらに上部を塞ぎました。シャワー浴を開始してから1分も経たないうちに患者の全身色が不良となり、意識を消失してしまいました。

「永久気管孔」と認識せずにフィルムドレッシング材で患者頚部の孔を覆ってしまったため、呼吸が阻害される事例が発生
「永久気管孔」と認識せずにフィルムドレッシング材で患者頚部の孔を覆ってしまったため、呼吸が阻害される事例が発生

 この事例では、幸いにもフィルムドレッシング材を剥がしたところ患者が呼吸を回復し、意識も回復しましたが、一歩間違えば死亡事故にも直結してしまいます。

 事例が生じた病院では、▼電子カルテやカンファレンスを活用し「患者が永久気管孔の造設後かどうか」を情報共有する▼入浴担当者は、患者の疾患・状態を理解したうえで介助する―取り組みを徹底することにしています。

 機構の調べでは、2013年以降、類似事例が別に発生(合計2件)していることが分かりました。事故防止に向けて機構では、「頚部の孔がある場合、それが永久気管孔かどうか確認する」ことや、「永久気管孔をフィルムドレッシング材で塞ぐと呼吸できない」点の理解を改めて浸透することが必要と訴えています。今後、高齢患者がさらに増加していくため、慢性期病棟以外でも「永久気管孔を造設している患者」が増えていくと考えられます。改めて院内のルール周知・遵守徹底や複数確認などが求められます。

   

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